おとうさんの桃

毎年この時期になると、父が和歌山から桃を送ってくれる。いつ届くのか予告もなくある日ふっと届くのだけど、雨の日が多くなってくると自然と口が桃を欲してくる。

小さい頃から桃が好きで、母はそれを良く知ってたけど父が知ったのはここ数年の話だろう。一度送って私が喜んだことを覚えていて毎年送ってくれるようになった。

父は会社勤めの営業マンで大阪から奈良まで毎日片道2時間を通勤していた。帰ってくるのは決まって真夜中で、小さい頃は平日顔を見ることはほとんどなかった。自営業を始めた時もありがたいことに多忙で、大学を卒業するまでの一緒に過ごした記憶は母ほどは多くない。

おとうさんと過ごす時間は、短い。

小さい頃、休みの日に父が連れて行ってくれた小さな甘味処は、ご主人が高齢になったために昨年お店をたたんだ。

私にとって桃は父の味になった。
桃ならずっとなくならないはずだ。

#日記
#家族

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?