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いきなりステーキの鉄板をいきなり鎮火させた話



これは昨年の出来事
菜月は興奮していた。


私はちゃんとしたステーキを食べたことがなかったのだ。
外はこんがり、中は赤身が見える。

ぐるナイのゴチで何度も予習を重ねた。

そして満を持して私は友人とステーキ屋さんに向かった。


たどり着いた場所はいきなりステーキ
いきなりステーキが出てくるらしい
時間もちょうどお昼時で、人も混雑しており、入店するまで30分ほどを要した。

待っているとき、ディズニーランドのファストパスのように我々を置き去りにして先に入店する者が現れた。

どうやら沢山肉を食べた者に与えられるVIP待遇らしい。
私はこれをファットパスと名付けた。

注文の際、店員さんが焼いてくれる物とセルフで焼くものがあり、迷った末私はセルフで焼く方を選択した。

運命の歯車は徐々に狂い始めていた。


注文を嬉々として終える。心の中では内なるゴチストップさえ出現した。



注文を待つまさにこの時間、事は起きた。


「「「ジュゥ〜〜〜ッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」」」

店内に幸せの音色が鳴り響いた。
隣り席の客がステーキソースをお肉にかけたのだ。

私の興奮は最高潮に達していた。



運命の時来たる。

眼前に広がる桃源郷を目の当たりにするも菜月は焦らない。


ランプの魔人と契約を結ぶのだ。
これが桃源郷へと至る道。

私はステーキに魔法をかけた。



あれ?そんなに音が鳴らない

思えばここで気付くべきだった、幻想に思考を完全に支配されていた私は思った


俺のステーキの力はこんなもんじゃねぇ!!!!!!


ランプの魔人の魔力を全て大地に降り注いだ



シュッ…

それがお肉の残した最期の言葉だった。
大地だったそこは塩分濃度最大の海に沈んだ。コーンはプカプカと浮かび助けを求めていた。

そう、ステーキソースによっていきなりステーキの熱々の鉄板はいきなり鎮火した


事前に両親から学んでいたテーブルマナーを披露することもなく、私のいきなりステーキデビューはいきなり終わったのである。

-fin-

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