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【大喜利のお題を選んで小話を書きなぐる12】鏡よ鏡よ鏡さん、の鏡さんでも答えられない質問とは?

『鏡よ鏡、この世で1番美しいのは誰だい?』

人格を持つ鏡といえば、おとぎ話の名脇役ですね。性格や意地が悪いお城のお妃さまに仕え、あることないこと、面と向かって言いづらいことやあえて言わなくても良いことなどを要所要所で吹き込み、唆し、悪役にふさわしい邪悪な道に引きずり込む確信犯。こいつはかなりの策士です。主人公にとっては諸悪の根源と言っても過言ではないのです・・・。

鏡さんが実際に答えていたこととは?

お題から察するに、鏡さんはどんな質問にでも答えてくれるという想定があるようですが、果たして本当にそうなのでしょうか。

Q.「鏡よ鏡よ鏡さん 世界で一番美しいのは誰?」
A.「それは女王様です」or 「それはお城の白雪姫です。」

正直、この質問以外を女王様がしているシーンを知らないのですよね・・・。「白雪姫」にはおそらく原作から様々なアレンジが加えられたパターンが多数存在しているにも関わらず、女王様は怒って鏡を割ってしまったことはあれど、自身の美貌を確認する以外でこの鏡を使ったことがないのです。

中には、「鏡というものは真実を映すもの」=「この鏡は女王様の心を代弁していたにすぎない」といった落語の大喜利的な解釈をされているものもありました。その想定だと、鏡さんが答えられるのは持ち主が想像できる範囲のことのみになります。つまり、「持ち主の興味関心がまったくなく、想像や推測が一切きかないジャンルの質問」であれば鏡さんも困惑し、データにない質問されたアレクサのごとく「すみません、分かりません」と答えるしかなくなってしまうのではないでしょうか。

鏡さんとは、近世における優秀なAIスピーカーだった?

アレクサを例えに挙げてみましたが、「白雪姫」の中で女王様が魔法の鏡に問いかけた質問をAIスピーカーに訪ねてみた、という内容の記事を発見しました。

「世界で一番美しいのは誰?」。グリム童話「白雪姫」の中で王妃が魔法の鏡に問いかける。
▲同じ質問を米アップル社のスマートフォンに音声で投げかけてみた。返ってきたのは、「友よ、それはあなたです。あなたは世界で一番美しい存在です」。
そんたくなしに「白雪姫」と答えてみせた鏡は、信頼できる情報源と呼べるかもしれない

出典:毎日新聞 余録「世界で一番美しいのは誰?…

AIスピーカーらしいさわやかな回答!

しかし、身分社会まっただ中な近世において、王国の中でも特に偉くて性格がヤバそうな女王様に向かって堂々と「美しいのは白雪姫」と忖度いっさいなしで答えられるのは、コンピュータシステムくらいだったのかも・・・鏡さんはAIスピーカーだった?であれば、この鏡は決して嘘をつかない、真実を答えてくれるはずだという女王様の信頼もうなずけますね。

ちなみに、先ほどの記事内では、AIスピーカーの性能について以下のような記述がありました。

▲「富士山の高さ」のような答えが明快な場合は単純だ。ところが、原因や評価を問う検索となると微妙になる。個人のブログを出所とする不正確な情報が奨励回答として登場することもあれば、企業の宣伝や個人の主張を採用してもらう方法を指南するサービスもある

「知っている知識を提供する」ということにおいては、AIスピーカーもお手のもの。しかし、ある物事の原因や課題、成果や第三者から見た評価をコンピュータシステムが行うのはとても難しいことのようです。誰の意見を、何を基準に評価すればよいのか?ある物事について瞬時に正確な判断を下すには膨大な量のデータ収集・分析が必要になります。AIとは「人工知能」の事を指しますが、現代においてはまだまだ発展途上の領域にあるようです。

ということは、「世界で一番美しいのは誰?」という、第三者の主観による総合評価について、「女王様」から「白雪姫」の回答に移行するまで毎日正確に答えていた「鏡さん」は近世初期という時代において、現代のAIスピーカーよりも遙かに優れた性能を発揮していたことになります。やはり、「魔法の鏡」。科学の産物ではなさそうですね。

とはいえ、魔法には科学ほど万能ではない側面もあります。

魔法使いという言葉があるように、魔法とは特別な人だけが使える技だ。ほうきで空を飛び回り、火や水や電気を自由に操れたらさぞ便利だろうが、我々が使いたいと願ったところで、魔力を得ることは不可能だ。
科学技術の最大の特徴は、原則的に誰でも手順さえ守れば同じものを作ったり使えたりすることにある。もちろん、飛行機を作ったり操縦したりするには、膨大な勉強と訓練、ときには身体的な適性が求められるものの、多くの人がそれを達成できる可能性を秘めているだろう。魔法使いのように特別な血筋である必要は決してないのだ。

出典:魔法と科学技術の違い 京都大学理学研究科・理学部

魔法には、特殊な能力を持たない者の再現性がないのです。つまり、

「君の魔法を科学で再現する方法を教えて」

これには答えられないはずです。

魔法の鏡さん、自分が答えられない問いを投げかけられたらどう対応するんでしょうね。アレクサのごとく「すみません、分かりません」と言ってくれるのでしょうか。対応力ありそうだから、延々とはぐらかされそうな気もしますが・・・。


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