彭偉(ポン・ウェイ)監督インタビュー(official)
―― 本作を製作しようと思ったきっかけは?
大学を卒業して以来ずっと映画を撮るのが夢でしたが、卒業して16年目にしてようやく夢が叶いました。
テーマに「家族愛」を選んだのは、3年前に母が亡くなり、家族愛を描く映画を作りたいと思ったからです。
最初は主人公が回想するシーンの「養父と娘の話」だけでしたが、それだけでは肉付けが足りないと感じ、
実際に報道された3件のニュースを組み合わせて今のようなプロットを書き、構成した結果、『夏が来て、冬が往く』が出来上がったのです。
―― 初めての中国と日本での共同制作についてはいかがでしたか?
脚本、撮影は中国で行い、仕上げは日本で実施したのですが、中国と日本の創作チームそれぞれの異なる考えを合わせることは、私にとって貴重な体験でした。中国と日本の制作チームの物語に対する捉え方が、この映画のなかに溶け込んでいます。
また、中国内でこの題材が描かれることは比較的少なく、主人公のような女性をもとに中国の家庭と家族の情を描いた映画の存在は、特別な意義があると考えています。
―― 物語の構成・コンセプトについてお聞かせください。
幼い頃に養子に出された主人公は一度も会ったことのなかった姉たちと出会います。この三姉妹が葬儀の3日間で互いに癒し合い、男尊女卑の母、甘やかされた弟、そして家族愛の過去と現在の人生の悲喜劇を構成したストーリーになっていて、物語の時間を3日間に濃縮した設定のなかで三姉妹は互いに鏡像となり、心を治癒していきます。
また幼い頃、少女時代、ジャーニーと養父の関係、ジャーニーとボーイフレンドの関係について、思い出の形で織り込まれたり、セリフで表現されていて、映画全体のスタイルの統一を図りました。
物語は酷ですが、内容の核になる部分は温かい。各人物と細部を再描画し、細部にわたってストーリーを推進し、ストーリーラインを温情の背後に隠す。 中国人の伝統的な家族観、特に人里離れた山村の家族観が反映された本格的な映画です。
―― タイトルにはどのようなことが込められているのでしょうか?
映画の中のシャオリーのセリフに「お祖父さんが父さんを育て、父さんが息子を、息子が孫をと世代が移っていくのね。四季みたい」とあります。人生の経験は四季の輪廻のように、一代また一代と受け継がれる。春夏秋冬の季節が過ぎ去り紡がれていくように、人も繁殖と進化の歴史を紡いできました。
ジャーニーは家族と過ごした経験により釈然とし、今まで拘っていたことを捨てて、愛する人と一緒に新しい人生を踏み出すことにしました。過去を知り、それを受け入れたうえで、私たちはより良い未来を展望し、より良い生活に踏み出すことができるのだと思います。
―― 撮影時のエピソードについてお聞かせください。
今までの短編映画製作では少人数のクルーでしたが、何百人ものクルーと一緒に仕事をするということが自身にとっての最大の挑戦でした。 プロデューサーの曹偉(ツァオ・ウェイ)氏には、新人監督として仕事に集中できるよう専門的なサポートをしていただき、とても感謝しています。新型コロナウイルスが流行した当時、チームが感染してクルーが活動停止に陥ることを最も心配していました。 しかし、私たちは順調に制作を進行し、予定より2日早く映画を完成させることができました。
美しいビーチで撮影していたのですが、朝のシーンで海から昇る朝日がとても美しく、壮観でした。 その映像は、特に仕事をしているときに私の脳裏に焼きつき、普段旅行で見るのとはまったく違っていました。
―― 中国で公開した際、映画を観たお客様からはどのような感想がありましたか?
中国の観客、特に若い観客の方たちは娘を養子を出すことについて興味を持ち、映画の中の家族愛について共感してくれました。中国では家族を重視しており、特に女性の観客の方は自分の経験に反映されることに高揚しました。
―― 日本で上映したいと思ったのは?
まず、日本の観客の方々はこのような温かみがあり繊細で時間の流れがゆったりとした作品に共感できるのではないかと思いました。 今の人たちは(TikTocのような)短い映像を次々と速いペースで見ていますが、それはメリットもデメリットもあると思います。 日本での公開で良い結果とフィードバックが得られることを楽しみにしています。
もうひとつの理由としては、日本で3年間勉強した経験により、多くの恩師や友人に助けられたことによります。
―― 最後にメッセージをお願いします。
この映画は、私の最初の長編作品です。養子に出された娘が大人になって実の家庭に戻ってくる物語のなかに、中国の山村に住む人たちの伝統的な家庭観念と状況を反映しました。ご興味もっていただけたら嬉しいです。