認定放送持株会社と認定基幹放送事業者:フジHDと東北新社の事案の違い

武田氏は「違反の事実をもって直ちに免許(認定)が無効になるものでなく、取り消し処分を行う時点で取り消し事由が存在することが必要だ」と指摘。1981年の内閣法制局が示した放送法の解釈に基づくもので、「当時の総務省の判断は今でも妥当だ」と強調した。

フジHDと東北新社メディアサービスの事案の違いは、「認定時に違反事実(外資規制違反)があったかどうか」であると言えます。

同時に、法律的に見れば【認定放送持株会社】と【認定基幹放送事業者】の違いが影響していると言えるでしょう。

東北新社の100%子会社である東北新社メディアサービスや、フジHDの子会社である株式会社フジテレビジョンがこれに当たる認定基幹放送事業者については、更新の規定があります。

放送法
(認定の更新)
第九十六条 第九十三条第一項の認定は、五年ごと(地上基幹放送の業務の認定にあつては、電波法の規定による当該地上基幹放送の業務に用いられる基幹放送局の免許の有効期間と同一の期間ごと)にその更新を受けなければ、その効力を失う。

これに対して、認定放送持株会社に関しては「更新」の規定はなく、子会社の更新に影響を与える(or子会社の更新によって影響を受ける)ような規定は見当たりません。

そのためか、フジHDが違法状態だった2012年から2014年9月の間に株式会社フジテレビジョンは更新をしていますが、その事情は勘案されないようです。

認定の取消しの根拠規定の文言も異なります

放送法
(認定の取消し等)
第百三条 総務大臣は、認定基幹放送事業者が第九十三条第一項第七号(トを除く。)に掲げる要件に該当しないこととなつたとき、又は認定基幹放送事業者が行う地上基幹放送の業務に用いられる基幹放送局の免許がその効力を失つたときは、その認定を取り消さなければならない。
2 前項の規定にかかわらず、総務大臣は、認定基幹放送事業者が第九十三条第一項第七号ホに該当することとなつた場合において、同号ホに該当することとなつた状況その他の事情を勘案して必要があると認めるときは、当該認定基幹放送事業者の認定の有効期間の残存期間内に限り、期間を定めてその認定を取り消さないことができる。

※参考:電波法
(無線局の免許の取消し等)
第七十五条 総務大臣は、免許人が第五条第一項、第二項及び第四項の規定により免許を受けることができない者となつたとき、又は地上基幹放送の業務を行う認定基幹放送事業者の認定がその効力を失つたときは、当該免許を受けることができない者となつた免許人の免許又は当該地上基幹放送の業務に用いられる無線局の免許を取り消さなければならない。
2 前項の規定にかかわらず、総務大臣は、免許人が第五条第四項(第三号に該当する場合に限る。)の規定により免許を受けることができない者となつた場合において、同項第三号に該当することとなつた状況その他の事情を勘案して必要があると認めるときは、当該免許人の免許の有効期間の残存期間内に限り、期間を定めてその免許を取り消さないことができる。
(認定の取消し)
第百六十六条 総務大臣は、認定放送持株会社が次の各号のいずれかに該当するときは、その認定を取り消さなければならない。
一 第百五十九条第二項第五号イからヌまで(ヘを除く。)のいずれかに該当するに至つたとき。

武田大臣が認定放送持株会社につき「取り消し処分を行う時点で取り消し事由が存在することが必要」と言ったのはこうした文言などが影響したでしょう。

こうした規定で良いのか、そもそも名義書き換えで外資規制の実質骨抜き化とでも言えるような規定ぶりでよいのか、という話はできそうですが、能力の限界を超えるのでここまでとします。

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