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何を言われたのか、よくわからなかった。

みんなで連載小説 PART2 Advent Calendar 2018」3日目の記事です。
いけはるさん https://note.mu/haluto10/n/n010dd07fe027 からバトンを受け取りました。
まだまだまだまだ一緒に物語を書いてくださる方募集中ですよー!泣

何を言われたのか、よくわからなかった。

もう、私たちは終わったはずなのに?

あの時「もう、僕らの続きが見えないんだ」そう言ったのは豊さんの方だった。「続き」を夢見ていたのは私だけだった。置いていかれた私は、もう誰にも必要とされていなかった。何度も手首に刃物を当てた。

4年の時が経ち、不器用ながらも新しい恋をして、あの時ついぞ感じられなかった「愛」をいくつも知った。相手を拘束し合って傷つけ合って、それが愛だと信じていた時代は終わったのだ。つまり…豊さんと過ごした3年は完全に思い出になっていた。
バンド仲間と練習後、部室で夜遅くまで東京事変の新譜について語り合ったこと。二人で初めて行ったディズニーランドではしゃぎながら「僕たち、恋人同士みたいだね」とおどけてキスをしたこと。楽しい甘美な思い出だけが私の心の中には陳列されていた。
だからこそ、気安く誘いを受けてしまった。今になって、突然お茶に誘われた理由を噛みしめる。「昨日東京に帰ってきたんだけど今日の予定がキャンセルになってさ。お茶でもどう?」

混乱の中、私は夕食の誘いまで受けてしまった。

今日は祐樹と映画に行く予定だった。
「ごめん、仕事が終わらなくて…」とLINEを送る。嘘をつくのは初めてのことだった。
祐樹とは2年間同棲している。それでも時々は、今日のように「デート」をする。祐樹と私はそれをとても大事にしていた。
すぐにウサギのキャラクターが号泣するスタンプが送られてきた。

何が始まろうとしているのだろう?

夜の街はイルミネーションや看板の灯りが溢れ、行き交う人々はいつもより心なしか浮き足立ってるように見えた。夜になってぐっと冷え込み、薄手のコートを羽織ってきたことを少し後悔した。

豊さんの指が手の甲に触れたけれど、私はすっと豊さんの手を避けた。

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