見出し画像

免疫チェックポイント阻害薬に関連する脳炎について

 殆ど知らなくてよいレベルのマニアな知見ですが、免疫チェックポイント阻害薬(Immune Checkpoint Inhibitors(ICI))の使用が増えてくる時代に知っておくといいかもしれません。

 抗PD-1モノクローナル抗体(ニボルマブ、商品名オプジーボ)をはじめとする免疫チェックポイント阻害薬は、稀ながら重篤な有害事象として脳炎・髄膜炎があります。すぐに見つかるデータでは0.3%前後の発症率のようです。末梢神経障害を含めるとICIによる神経系の有害事象は2-6%と言われます。

 本論文はICIによる脳炎についてまとめた数少ない論文で、発表済の文献をもとに2000年~2020年までのICI-iEをまとめたsystematic reviewです。

Encephalitis Induced by Immune Checkpoint Inhibitors
A Systematic Review

JAMA Neurol. Published online March 15, 2021.

 今回は、論文に記載しているICIによる脳炎の概要を抜粋しました。集められた82例を解析しています。

【患者背景、発症様式、治療について】

平均年齢61歳
原疾患は肺癌45%、悪性黒色腫29%、その他26%
脳転移は17%に認めた。
免疫チェックポイント阻害薬の標的はPD-1 40%、PD-L1 32%、Anti-CTLA4 9%。
脳炎の初回開始時から発症まで平均8週
神経巣症状 48%、脳炎髄膜炎 44%、分類困難9%
治療は98%にステロイドを投与され、その他追加された治療内容は血漿交換、IVIG、リツキシマブなどです。

Table 1は患者背景・脳炎のタイプ、治療についてまとめたものです。

画像3


【症状、検査所見】

 下記Figure1が限局型と髄膜脳炎型を分けた各所見の出現率です。
 意識変容がどちらのタイプでも80%以上ですが、その他はパッとしません。限局型はMRI所見や抗神経抗体が出やすく、髄膜脳炎型では髄液細胞数・蛋白が上昇しやすいですが、その所見が60-80%しか出ないとなると診断が難しい病態のように見えます。

画像1

【自己抗体】

24人で自己抗体陽性(巣症状の23人、分類困難の1人)
内訳
Onconeuranal intracellular antigen (anti-Hu, anti-Ma, anti SOX-1, anti-Ri) 17例
Nononconeurona intracellular antigen (anti-GAD) 3例
Neuronal cell surface antigen (anti CASPAR-2, anti-NMDAR) 3例

画像2

Table3 は病型と自己抗体、予後を示した表です。限局型や特定の自己抗体(anti-Ri, anti-Ma, anti-Hu)陽性で予後不良になりやすい印象です。


【予後について】
 予後が良い可能性がある因子は、発熱・髄液細胞数上昇・髄液蛋白上昇でした。
 反対に抗神経抗体が妖精の場合、MRIで異常を認める場合、神経巣症状がある場合に予後が悪いことと関係がありました。

【個人的感想】
 検出される交代で予後がはっきり異なっていることから、免疫チェックポイント阻害薬に関連する脳症には、いくつかの違う疾患・病態が混在してのでしょう。分かりやすい切り口に、神経所見・MRI・自己抗体があるため、一定の評価計画は立てやすいかもしれません。
 問題点は、自己抗体のほとんどが保険収載されていないことです。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?