流木

ひと(ニートときどき季節労働者)。生きているだけ。

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    みんなで作るニートなマガジン。ニートの日記、エッセイ、活動記録、ノウハウ、メンタル問題、低コストな娯楽、節約方法、貧乏旅、思想や哲学、作品評など。

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無職になった

 ※タイトルの通りである  すでに社会の崖っぷちになけなしの握力でしがみついていたようなものなので、手を離すことができてどこかホッとしている。どこまで落ちるのかは分からない。  「お前に社会人は無理だろうな」と学生の頃に親や友人からよく言われていたことを思い出す。人からいちいち言われなくても自身の社会不適合者っぷりには自覚があった。とにかく競争社会に適応できない。人の道を邪魔してまでお金やら幸せやらが欲しいとも思わない。仕事をこなしていくうえで上手く立ち回ったり、都合のい

    • 俯いて爪先

      散歩:23436歩。 昨日の話をする。 先週末くらいからずっと街を濡らしていた雨がようやく止み、快晴とまではいかずとも雲の少ない、気持ちの良い天気だった。 雨で農作業が中止になったりなんとなく気分が乗らなくてサボったりしていたら休日がくっついて結果的に五連休になっていた。 とはいえその間は雨が降っていたわけで、必要な食料を買い出しに行く以外の理由で外に出ることもなく、なんとなく脚がむずむずするというか、日課をこなせていないが故のささやかな苛立ちのようなものを感じていたの

      • 3月の海辺から

        散歩:12610歩。 波が引いていく。 砂浜と、長靴が少しだけ濡れた。 波打ち際から離れて、春の空から降る陽光に温められた流木に座る。 割引パンのストックを切らしてしまっていたので、直売所の総菜をいくつか買って食べていた。 光を反射する水面が眩しい。 遠くには漁船か旅客船か、とにかく大きい船が水平線をなぞるようにゆっくりと進んでいく。 この海辺には、相変わらず誰もいない。 鳥の声、波の音、風、そして薄暗い沖からは海鳴。 人工物よりも自然のものが多い空間。 本の余白が日光

        • 社長と半ニートは同じベンチに座る

          散歩:15561歩。 私がまだそれなりにちゃんとした会社で真面目に(?)週5日8時間働いていた頃、会社には社長と呼ばれている人がいた。 この社長なる人物に会ったのは最終面接と内定式くらいのもので、あとはどこで何をしているのか分からんがとにかく偉い人、という程度の認識だった。あとは似た顔をした役員やら幹部やらが頼りないボディーガードみたいに緩慢な動作でくっついていた。 今働いている農場にも社長と呼ばれる人がいる。 高価なスーツの代わりに泥だらけの作業着に身を包んで、1日中市

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          春よ、来るな/文章とか文才について

          散歩:13371歩。 春よ、来るな 花粉症である。 長く続いていた雨がようやく落ち着いてきたと思ったら、次は危険極まりない怪しげな粉が飛んでくるようになった。 バイト中でも散歩中でも容赦なく顔に張り付いてきては許可もなく人様の柔らかな粘膜に侵入し暴虐の限りを尽くしていく。 後に残されるのは大量の涙と鼻水である。 花の粉、などとふんわりした可愛いらしい言葉で飾ってはいるが、その花弁の奥に居るのは間違いなく悪魔であろう。 アレルギー性春ぶち壊し症候群とかに名称を変更すべ

          春よ、来るな/文章とか文才について

          終わる縁に確かな灯を!

          散歩:雨天欠航。 昨日、仲の良かった同僚のSさんが退職した。 2月中に辞めるとは聞いていたのだけれど、シフトの都合でなかなか顔を合わせる機会がなく、久しぶりに会った「僕、今日で終わりなんです」と報告を受けた。 事前に退職の意向を伝えられていたとはいえ、それが具体的にいつなのかは知らなかったものだから気の利いたものは何も用意することができず、ただ驚くばかりで「えー」とか「うわー」とか「そんなぁ」とか、あまり意味を成さない言葉を繰り返すしかなかった。 そもそも、そのうち居な

          終わる縁に確かな灯を!

          退屈で刺激的で不完全でパーフェクトな日々

          散歩:16832歩。 AM5:50、起床。 次の瞬間にバイトが休みであることを思い出し、喜びを噛みしめた後に即二度寝。 素晴らしい一日の第一条件は強制された労働が無いこと、これに尽きる。 そして第二条件は、何も予定が無いことだ。 それでも長く眠ることは出来ず、結局7:30くらいには起きてしまった。顔を洗って歯を磨き、コーヒーのためのお湯を準備した。 朝食は納豆ご飯。 体力を使う作業が増えてからはなるべく朝食を摂るようになった(時間がある時は)。 特にやることも無いの

          退屈で刺激的で不完全でパーフェクトな日々

          汝、逃走の構えを解くなかれ

          散歩:13684歩。 実家で一緒に暮らしていた猫のことを考えていた。 今みたいな寒い季節、膝の上に毛布を掛けて本を読んだりしていると、どこからか猫が現れて太ももの間の窪みに挟まるように潜り込んでくるのだ。 冷たくて静かな部屋で私は眠る猫を撫で、毛布越しに互いの体温を分け合っていた。 おおよそ褒めるべきところのない冬の中で、その瞬間だけは好ましいものだったように思う。 半ば逃げるように実家を出た。 今後あの場所に戻ることがあるのか、戻る気になるのかどうかは微妙なところではあ

          汝、逃走の構えを解くなかれ

          檸檬と蹴球/余暇と効率

          散歩:11034歩。 檸檬と蹴球 湖をぐるりと一周する散歩コースから少し離れて北に進むと、いかにもといった風情の閑静な住宅街がある。窓の多い大きな家に奇妙なエンブレムが取り付けられたやけに平べったい車、広い芝生の庭に血統書付きの犬。どれかひとつでも傷つけようものなら私の全財産が消し飛びそうだ。たとえそれが犬小屋であっても。 寒さで外出を控えているというのもあるのかもしれないけれど、いつ通ってもここはひどく静かだ。まるで音を生み出すことが禁止されている世界に迷い込んでしま

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          ささやかハード・ワーク・デイズ

          休日である。 遅くまで寝ていたかったのだけれど6時くらいには目が覚めてしまって、仕方なく本を読んだり窓の外の濃いオレンジが家々を満たしていくのを眺めていた。 昔はいくらでも眠ることが出来た。 今ではどんなに疲れていても6~7時間くらいで目が覚める。最後に「よく眠れたな」と思えたのはいつのことだったか、もう思い出すこともできないでいる。 この日記は、読書の休憩として書かれている。 この街に来て半年、農場でのバイトを始めて4ヶ月くらいが経った。バイトを始めた頃はまだ残暑の厳

          ささやかハード・ワーク・デイズ

          小寒、式日を背に

          散歩:19187歩。 目が覚めてから5分くらいの間の、あの名付けようのないぼんやりとした時間がとても好きだ。外を走る車の音を聞きながら、しばらくは天井とか枕の周りにある読書灯やスマホを眺めるともなく眺めて、今日の予定(あってないようなものだけれど)がゆっくりゆっくり意識の表面に浮かび上がってくるのを待つ、あの時間だ。 今日はバイトも休み。というか、勝手に週休3日制を導入したので水、木、日曜は休みになっている。その代わり勤務時間を4時間から6時間に変更した。これで収入として

          小寒、式日を背に

          2023→2024

          大晦日も正月もするりと入ってきてするりと通り過ぎていった。 私はというと腰痛も随分治まってきたので散歩に出かけたり本を読んだり、年末年始でスーパーが閉店していることに気づかずちょっとした食糧難に陥ったりしていた。食事を抜いたり千切りキャベツに魔改造を施してなんとか凌いだ。 別にコンビニに行けば食料は手に入るのだけれど、そこまでする必要にも迫られなかったのでささやかな空腹と共に年を越した。 去年の始めにも一年の総括らしきものをやっていたので、今年も倣うことにする。一応、去年の

          2023→2024

          メメント・死生活

          散歩:腰痛のため中止。 こちらに引っ越してからまだ5ヶ月くらいしか経っていないのだけれど、すでに3回(私の知る限りでは)、このマンションでは人が死んでいる。 といっても物騒な事件の結果として人死が起きた訳ではない。私の住むマンションでは、住人が亡くなった時にエントランスの掲示板に訃報が張り出されるのだ。 亡くなった方はいずれも70代以上の高齢者で、私はその誰ともすれ違ったことさえない。活動時間がたまたま被らなかっただけかも知れないし、病気か何かで部屋から動けなかったのかも知

          メメント・死生活

          無職日記#47 B級品たちのゆくえ

          散歩:腰痛のため中止。 寒さで目が覚める朝がだんだん多くなってきた。 静まりかえった六畳間で吐き出す息は白く、手足の指先は軽く痺れ、慢性化してしまった腰痛がじわじわ痛み出すのを感じる。 布団を出て一番最初にやるのは、水を沸かしてコーヒーを淹れることだ。最近は朝食を用意するのも面倒で、つい飲み物だけで済ませてしまう。 これから始まる肉体労働のことを思えば腹に何も入れないのは得策ではないのだけれど、頭の回らない朝に私の主導権を握るのはいつだってものぐささなのだ。 数日前から

          無職日記#47 B級品たちのゆくえ

          地獄に鏡

          ”地獄とは他人である”と、ある哲学者は言った。 ”すべての人間は他人の中に自己を写す鏡を持っている”と、別の哲学者は言った。 どちらも他人という存在について言及した箴言であり、この2つを合わせて考えると、他人に囲まれて暮らす我々はつまり地獄で鏡を覗き込みながら生きている、ということになる。 表現としてやや突飛かもしれないけれど、そういう視点で現実を捉えることは、世界と自分の間にある確かな線を見失わないためにもとても重要なことだと思う。 少なくとも生きている間は、この他人か

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          雨とリンガフランカ

          散歩:10277歩。 昨日から雨が降っている。 湿気で謎の匂いを放ち始めた和室でコーヒーを飲みながら、降りこんでくる雨がベランダの色を濃くしていくのを眺めていた。 時折、濡れた道路を走る車の音がした。 観たかった映画を観て、借りていた本もあらかた読み終えた。 何も予定が無いのは良いことだ。 やるべきことや約束事が先に控えていると、どうしてもそのことばかり考えてしまって現在がおろそかにしてしまう。 そんなわけで先の予定はなるべく立てないようにしている(少なくとも自発的には

          雨とリンガフランカ