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『ぷよぷよ』のライセンスプロが語る、その実態とシーンの変化 【プロゲーマー liveインタビュー】

JeSUが2018年2月に設立され、プレイヤーをプロゲーマーと認定するプロライセンス制度が始まった。ライセンス認定タイトルは12月時点で11本、各タイトルで差はあるが、何人ものライセンスプロが誕生している。

さて、皆さんはライセンス保持者(ライセンスプロ)がどんな活動をしていて、どういったサポートを受けているか知っているだろうか。実はこのあたりの情報が意外と少なく、そのせいでいまなおプロライセンス制度やライセンスプロを訝しむ人もいるかもしれない。

実際、僕もライセンスプロの実態はいまいちよく分からない。JeSUとの関係、あるいはIPホルダーとの関係はどうなっているのか。大会の賞金・賞品は外からでも目に見えるが、それ以外の収入がJeSUやIPホルダーからサポートされているのか、あるいはJeSUと意見交換の場が設けられているのか。

なにより、さまざまな議論を呼びながら展開されてきたライセンスをトッププレイヤーがどんな目的で取得したのかということと、JeSUやIPホルダーに何を求めているのかということを知りたい。

こうした疑問を、僕は『ぷよぷよ』のプロライセンスを持つlive(りべ)さんにぶつけてみることにした。清濁のるつぼというブログで積極的にシーンの情報を伝えてくれているliveさんになら、面白い話が聞けそうだ。

※インタビューは2018年12月9日(土)に行なった。

プロになればチャンスが広がる

――『ぷよぷよ』がJeSUのライセンス認定タイトルになるにあたり、それまで実績を積んできたプレイヤーにはセガゲームスからライセンス認定の推薦があったそうですね。liveさんはセガフェス2016での大会で優勝したことが注目されて打診があったと。最初どう感じましたか?

live:
喜びと驚きがありつつ、正直戸惑いましたね。セガから連絡があったことにではなく、自分がプロになっていいのかどうかと考えてたからです。それと、当時はライセンスプロと企業などにスポンサードされたプロゲーマーとは少し違う存在だと言われてましたし、『ぷよぷよ』界隈では『Magical Stone』の件もあったので、プロゲーマーに対してよくない印象を持っている人が少なくありませんでした。

※『Magical Stone』騒動については「esportsタイトルとなった『ぷよぷよ』、今後の展開に期待と不安を込めて」を参照。

――それでもライセンスプロとして認定を受けることにしたわけですね。

live:
僕が『ぷよぷよ』をプレイし始めたのは5歳ぐらいのときで、シリーズが誕生して間もない頃です。ずっとプレイし続けてきて思うのは、やっぱりこのゲームはめちゃくちゃ面白いってことですね。それと、僕の周りにいるプレイヤーたちも魅力的で面白い。そういう、自分が面白いと思うことをより多くの人に共有するにはプロになるのもいいなと思って返事をしました。

いまも専業でやってるわけではないですが、プレイヤーとして『ぷよぷよ』で食べていくこと自体は目的ではなくて、とにかく『ぷよぷよ』を盛り上げることが第一です。で、そのためにゲームやプレイヤーたちの面白さを知ってもらいたいんですよ。それがブログをやってる理由で、広く知ってもらう、そのために繋がりを作る、そういうことが自分の役割だと思ってます。

――知ってもらいたいというのは誰に対してですか?

live:
『ぷよぷよ』をまだ知らない人もそうですが、プレイしててもトッププレイヤーたちを知らないような人たちですね。トッププレイヤーって、シリーズが20年以上続いてきたこともあって、突飛で極端な人が多いんですよ(笑)。僕がそれを痛感するようになったのは10年ほど前に上京して、ゲームセンターでアーケード版をプレイするようになってからです。ゲームセンターに来るプレイヤーは本当に濃かったですね。

ただ、それもあって『ぷよぷよ』の競技シーンがゲームセンターという小さな輪の中で回ってきたのは事実です。いまは先の騒動や時代的にもゲームセンターが下火になりつつあって……そんなところに、セガが昨今のesportsブームを受けて競技シーンを表に出していこうとした。そういう流れもあったので、僕はチャンスだと受け取りました。

――周りのぷよ勢はどうでしたか?

live:
賛否両論で、「いまさらか」と言う人もいれば、「楽しみ」と言う人もいました。ただ、いずれにせよ期待感があったのは間違いないですね。その根底には公式のイベントや大会を開催してほしいという気持ちがあったと思います。

公式大会の開催って2016年が最後で、その前が2012年なんですよ。Red Bull 5Gでは2012年から『ぷよぷよテトリス』が採用されてましたが、これも2016年末で終わってしまいました。「しばらくは何もなさそうだなぁ」と2017年が過ぎ、そして2018年……と思ってたところにプロライセンスの話が立ち上がったわけです。当然期待しますよね。

――最初の推薦でプロライセンスを断ったプレイヤーはいるんでしょうか。『スト5』ではももちさんが理念に同意できないという理由で辞退されていました。

live:
推薦があったプレイヤーをきちんと把握しているわけではないですが、『ぷよぷよ』でももしかしたら辞退したのかな、と思い当たる人はいます。ただ、ももちさんのように信念からというよりは、あくまで個人的な都合からかなと。

――とすると、ぷよ勢の間ではプロゲーマーになって盛り上げていこうという思いが共有されてたんですかね?

live:
盛り上げたくても1人では何もできないと各々が感じてたはずなので、その意味ではみんなで何かやらなくてはいけないという課題は共通してましたね。

プロになってからの変化とJeSUとの関わり

――プロになって8か月ほど経ちますが、何が一番変わりましたか?

live:
大会の頻度が増えて、練習と出場のために土日がほとんどなくなりました(笑)。公式大会が2か月に1回開催されて、そのうえにもともと開催されてきたコミュニティ大会があります。忙しいと思いつつ、そう思えるということはまだ忙しくないってことですね。兼業でやるからには避けられませんし。

プレイ以外では、やっぱりプロライセンスがあることで一般のプレイヤーとは違う価値を持ってると周りに思ってもらえるようになったんじゃないかなと。ブログやTwitterなどで発信すると注目されやすくなりましたし、『ぷよぷよ』界隈の外の人たちと繋がることが増えました。いままではコミュニティの中だけでしたから。例えば、ちょもすさんに『ぷよぷよ』を教えることになったり、ぷよ勢以外の人に記事が読まれたり、活動の枠が広がってると思います。

――公式大会はほぼゼロの状態から2か月に1回ですから、かなり増えましたよね。賞金も30万円、規模が大きいときは100万円と国内でも有数です。JeSU周りでは賞金があれこれ言われてましたが、この賞金額はどう思いますか?

live:
賞金が出るに越したことはないので増えればいいと思いますが、自分がその金額を受け取ることになったら、本当にもらってもいいのかと考えなくはないです。僕がそれに値する価値を提供できてるかどうか……。プロライセンスは与えられただけですし。

――専業にしたいという気持ちはありますか?

live:
ありますが、迷ってます。まだ未開拓の分野なので道が見えないじゃないですか。もちろん、そこを開拓していくのがプロとしての使命の1つかもしれませんが、年齢も年齢なので専業になってしまうのはリスクが高いなと不安があります。もう少しはっきり『ぷよぷよ』のビジョンが見えてくれば、という感じでしょうか。

スポンサーについても特別に動いてるわけではありません。EVO 2018のときはサポートしてくれる方がいたんですが、企業に継続的なスポンサードをお願いする場合、僕自身がどういう価値を提供できるかを定量的に測れてないので、どうやって売り込めばいいのか難しいですよね。

――liveさんには6000人近くフォロワーがいますし、生放送も数百人単位で視聴されてます。出場されてる公式大会も視聴者数は4、5000人規模で、esports系のテレビ番組でも『ぷよぷよ』が採用されました。僕はかなり可能性があると思うんですよね。『ぷよぷよ』のプロゲーマーはまだ1人もスポンサーがついてませんし、ゲーミングチームにも所属してないのはちょっと不思議です。

live:
僕はプロになって初めてesportsシーン全体を見るようになって、どんなチームがあるのかを知るようになりました。いまようやくチームのカラーが分かってきたくらいで、どのチームが自分に適してるのかはまだ何とも言えません。ただ、例えばRush Gamingはすごく面白いと感じましたし、理念に賛同もできました。結局は条件というより理念やビジョンに賛同できるかどうかなんでしょうね。

――個人ではできることが限られてるとのことでしたが、『ぷよぷよ』自体も個人対戦じゃないですか。活動もプレイも1人というのはけっこう厳しい部分もあるのではと想像します。チームに所属すると、ある程度マネジメントやPRを任せられるでしょうから、その点だけでも頼るのはありかなと。トッププレイヤーで発信力もあるliveさんなら引く手数多でもおかしくないと思います。

live:
たしかに、何でも個人でやることが多いんですよね。僕はぷよキャンで「タイムアタックによる階級分けシステム」を運営してますが、公式でプレイヤーランキング制度が始まったので、その対象大会をプレイヤー側で開催する流れになってます。でも、平日は働いて、そのうえに優勝するために練習して大会に出場して、さらに自分で大会を開催するなんて無理がありますよね。

――しかもliveさんはブログやYouTubeでの発信にも力を入れてます。プロ1人に何役を任せるんだという話で、これが続くと最前線の人たちから疲弊していってシーンが盛り下がっていきますよね。できる人に任せるだけではなく、仕組みで解決する必要があります。そういう意味ではプロライセンスを発行してるJeSUに一定の役割があると思うんですが、JeSUって何かしてくれるんですかね?

live:
うーん……直接的にはプロライセンスのカードをもらったくらいですね(笑)。結局僕らがやり取りしてるのはセガなんですよ。大会を開催してるのがセガなんで当然といえば当然ですが、僕の立場からするとJeSUの内側について分からない部分も多く、どうあるべきかは明言しづらいです。

――組織構造としてはJeSUの下にライセンス認定タイトルがあり、それと並列でプロライセンスがあるはずです。各々のゲーム会社がプロライセンスを発行するわけじゃないですから。でも、実態としてはライセンス認定タイトルを持ってるゲーム会社の下にライセンスプロがいるという状況なんですね。それが現実的と言えばそれまでですが、JeSUにしてほしいことってありますか?

live:
セガの担当チームからいろいろと慮っていただいているので、JeSU側からの動向がなくてプレイヤーが直接困ることはいまのところないですね。細部の問題についてはセガと密に連絡を取って解決するよう互いに努めてます。また、プロライセンスの取得を目標にしてるプレイヤーが増えているので、その点でいい制度だと思います。

――いま『ぷよぷよ』のライセンスプロの収入は賞金だけですか?

live:
そうですね。それとセガの番組などに出演した際に報酬をいただくことがあります。

――個人的にはJeSUやIPホルダーがプロゲーマーを喧伝してシーンを盛り上げようとするなら、プロに対して分配金など何らかの見返りが必要だと思うんですが、liveさんはJeSUなどが選手を直接支える仕組みはあったほうがいいと思いますか?

live:
僕は支えられる側なのでそういう仕組みがあると嬉しいですが、どういう構造がいいのかは何とも言えません。

――そもそもJeSUとの関わりがないんですよね。

live:
『ぷよぷよ』はまだ該当しませんが、アジア競技大会など国際大会に出場するならJeSUを通して、という感じですかね。組織としては「esportsタイトルのオリンピック種目採用と代表選手を送り込むこと」が大きな目標だと捉えてますので、国内は各IPホルダーやオーガナイザーに任せるというのはそれはそれで正しいのかもしれません。

コミュニティだけの状態から公式大会もあるシーンへ

――ライセンス認定タイトルになって以降、『ぷよぷよ』の競技シーンはどう変わりましたか?

live:
もともとコミュニティではアーケード版で100本先取や50本先取など長期戦で格付する慣例がありました。競技シーン、トップシーンといえばアーケード版だったんです。大会としてはプレイヤーを実力ごとに分けて昇降格を懸けて戦うA級リーグとS級リーグが有名でしょうか。これは例の騒動を機に休止となってしまいました。

そのあとコミュニティ内ではいろいろ議論が起こったんですが、徐々にネット対戦に移行していったんですね。そしてS級リーグを引き継ぐような形で生まれたのが、ぴぽにあくんが運営するおいうリーグです。これは400人以上が参加してて、DからSまで実力でクラスを分けて各試合20から50本先取で戦います。

一方で、ライセンス認定タイトルになって公式大会が増えました。ぷよぷよカップやぷよぷよチャンピオンシップは短期戦で、かつては実力が反映されないとあまり好まれませんでしたが、いまはこの短期戦で大会タイトルを獲得することにも意義が見出され始めてます。

――戦略や戦術も全然変わりますよね。最近ではくまちょむさんが短期戦のための速攻戦術を編み出すなど、印象的な試合も多いです。プロになったことで見られる、見せることも必要になったと思いますが、その点で意識の変化はどうですか?

live:
プロになってから、ゲーム配信をするときはできるだけ喋るようにしてますね。昔はとりあえずプレイ画面だけを見せてればいいと考えてましたが、せっかく観てもらってるので楽しんでもらいたいと思うようになったんです。ただ、『ぷよぷよ』はかなり集中力が必要なゲームなので、本気でプレイするときは無言になっちゃいます。練習でも喋れないくらいなので、どういう形で配信するのがいいかは模索中ですね。

――競技として取り組むプレイヤーの皆さんに変化は感じますか?

live:
観戦する側だと2か月に1回の大会は少ないかもしれませんが、出場する側だとけっこう頻繁なんですよ。しかも、いままでそれほど開催されてこなかったですから。以前は、例えばS級リーグの直前に一気に仕上げるというのが当たり前でしたが、現在はほとんどのプレイヤーが常時『ぷよぷよ』をやってる状況になってると思います。そのため、全体のレベルは上がってますね。

――『ぷよぷよ』は『ぷよぷよ通』以降、競技シーンで使用されるルールがずっと変わらないため、何年も最前線にいるトッププレイヤーに追いつくのは至難の業だと言われます。それでも、高校生のマッキーさんが公式大会で優勝してプロになってます。こうしたプレイヤーのあとに続くような、競技志向の新規プレイヤーは増えてるんでしょうか。

live:
増えてはいるんじゃないでしょうか、僕もなぜかは分かりませんが(笑)。おそらくは、何であれセガがシリーズの新作を出し続けてきたことや、おいうリーグなどを通じてトッププレイヤーのプレイがYouTubeで観られるなど、シーンに関わる全員がきっかけ作りをしてるんだと思います。

――プロやコミュニティ大会の生放送もそうですよね。おいうリーグは視聴者数が1000人、時に2000人にもなり、ほかのタイトルのコミュニティ大会と比べてもかなり多いです。

live:
おいうリーグはいろんな人が観てくれてると思いますが、特に昔プレイしてた人がその当時に活躍してたプレイヤーを観に来てくれてる気がします。くまちょむ、Kamestry、そういった古豪が現役ですからね。昔やってた人たちを観戦に呼び込めてるのは、シリーズとして歴史のある『ぷよぷよ』の強みだと思います。

esportsとして『ぷよぷよ』をどうしていきたいのか?

――それはつまりポテンシャルであって、まだまだ各方向に伸ばしていけるってことですよね。では、率直に尋ねますが、いまの競技シーンには何が足りないですか?

live:
まずプレイヤー側を見ると、二十数年来のコミュニティがあるため、公式大会でも身内感が出てしまってます。公に見せる、観戦してもらうという意識付けが僕も含めてまだまだかなと感じますね。プロがそういう姿勢を意識することで「魅せること」を浸透させていきたいです。

――それはプレイヤーの意識もありつつ、大会の雰囲気が大きいんじゃないですかね。公式大会も正直演出などのクオリティは低く、あんまり格式がある感じではないですし。僕は散々言ってますが、演出や見せ方はもっと工夫できると思います。クラロワリーグ世界一決定戦のような雰囲気の大会だったら、普段がどうであれ絶対魅せる意識になっちゃうはずなんですよね。

live:
過去にそういう大会が『ぷよぷよ』でなかったわけじゃないんです。Red Bull 5Gはまさにそうでしたが、あんな雰囲気の大会は理想ですね。いまは大会頻度が高くなったので、僕もけっこう慣れてしまって試合外では緊張感が薄らいでしまってる感があります。

――RAGEを開催してるCyberZや、『クラクラ』のリーグを開催してるWell Playedなら面白く料理してくれるかもしれませんね。RAGEでは『スト5』でドラフトありのチーム戦も開催してましたし。

live:
チーム戦は面白そうですよね。人と人の関係にもスポットが当たるいい機会になりますし、それが如実に可視化されるドラフトは絶対面白いと思います(笑)。

――そういったセガ以外のオーガナイザーや大会も含めて、esportsとしての『ぷよぷよ』にどれくらい可能性を感じてますか?

live:
将来性はかなりありますが、不安もあります。一番の不安は、JeSUやセガが今後何をしていきたいか、どういう指針をもってesportsとして展開していきたいのか、僕らからはあんまり見えてこないことです。プレイヤーとしてどこを目指せばいいのかあまり分からないんですよ。

もちろん、時々の大会で優勝するという目標はあり、それを活動の中心にしているプレイヤーも多いです。でも、それってシーン全体としては最終的な目的ではないはずです。だからこそ、セガには指針を示してほしいと思ってます。

――全体のビジョン、ロードマップのようなものがないと。可能性を感じるからこそもったいない部分は多いですよね。

live:
『ぷよぷよeスポーツ』のマッチングをいつ修正するのかという情報の提示もそうです。『ぷよぷよeスポーツ』で初めて触れた初心者と高レートのプレイヤーがマッチングするのはおかしいじゃないですか。ですが、それをそもそも問題として捉えてるのか、そうしたことも一般のプレイヤーからは分かりません。とにかく「これからこうしていく」という方向性、いわば夢を見せてもらいたいです。僕はそこを目指して全力で協力したいんですよ。

※インタビュー後の12月17日、「インターネット対戦時、マッチメイクする相手のレーティングを検索する範囲を修正」というアップデート情報が開示された。

あと、大会優勝だけが大きな目的になってるプレイヤーもいるかもしれません。個々人が優勝を目指すのは当然としても、僕ら最初のプロが全体としてどう盛り上げていくかという視点がないと、シーン自体が尻すぼみになってしまいかねません。実力も磨きつつシーンも盛り上げて、というのは簡単なことではないですが、これから取り組まないといけないことです。

――それはもうliveさんに夢を描いてもらうしかないですよ。課題を最も理解してる人が旗振り役にならないと、いい方向にはなかなか進んでいけません。

live:
僕が大言壮語することはできるんですが、じゃあ語ったところでそのために何ができるかというと考え込んじゃいますね。どのみちセガがやってくれないと話は進みませんから、いまは地道に、現実的なところで活動するしかない気がします。僕らからセガに意見は言ってるんですけど、プロだけじゃなくて初心者や始めたてのプレイヤーにも声を上げてもらいたいですね。

――いま実質的に最強プレイヤーを決める大会はおいうリーグだと思いますが、かと言ってコミュニティが独自にシーンの構想を練ったとしてもうまくいくかは難しいですよね。セガといかに歩調を合わせて前に進んでいくか。プロにはなかなか歩みがたい道を歩いてもらわないといけません。

live:
セガとのコミュニケーションはそれなりにあるんですが、そこも含めてちょっとずつやってくしかないですね。各個人の活動にしても、小さな活動の積み重ねがブランドになって、憧れる人が出てきて、観戦する人が増えて、シーンが下から盛り上がっていくはずです。

――そう思います。まだプロライセンスが始まって1年も経ってませんからね。

live:
それを考えると、大会の頻度や賞金など、セガはすごくよくやってくれてると思います。これからですよ。

インタビューを終えて――ドラマに溢れたシーンを活かして

インタビューのあとliveさんとご飯を食べたのだが、そこで印象的な言葉があった。『ぷよぷよ』の競技シーンは「その時代に最強と囁かれるプレイヤーが表舞台に出てこない」という。

僕が知るところでも、過去から現在にかけてミスケン、momoken、popo、まはーらといった名前が上がる。このうちミスケンさんは引退し、popoさんはネット上の概念と化しているが、momokenさんとまはーらさんは現在のおいうリーグS級プレイヤーに匹敵するか、あるいはそれ以上のプレイスキルを有しているのではと思わせられる存在感がある。

現役のトッププレイヤーが表舞台でいくら実績を積んでも、彼らと比較されてなかなか最強の名を冠することができない。これがシーンとしての悩みの1つだとliveさんは話していた。

かつて『スト4』でも表に出てこない最強のプレイヤーがいたのを思い出す。いまや人気プロゲーマーとなったsakoさんだ。ネット環境がない時代にはこういうプレイヤーの存在は珍しくなかったが、『スト4』はオンライン対戦があり、全国大会や国際大会が頻繁に開催されていて、いくらでも舞台があった。しかし、sakoさんは山から下りてこず。大会で誰が優勝しても彼と比べられて、ウメハラさんでさえもなかなか最強とは認められなかった。

そんなsakoさんも、『スト4』のシーンが最高潮に盛り上がり、真の最強を決めるための大会であるGODSGARDEN Online #1が開催されたとき 、ついに山から下りてきた(そして優勝した)。その後の活躍は多くの人が知るところだ。

「ストリートファイター」シリーズと同様に20年以上の歴史を持つ『ぷよぷよ』には、こうした人間関係、ドラマが溢れている。liveさんのように、シリーズ第1作が発売された当時からプレイし続けている人たちもいまだ最前線にいる。その筆頭であるくまちょむさんが新しい戦術を生み出してさえいる。

esportsの核は人でありプレイヤーであると言われるが、なればこそ、『ぷよぷよ』のesportsシーンでもそれを取り上げて魅せることは盛り上げに一役買うだろう。そして、その人間関係はプレイスタイルの違いにも表れているのだ(誰がどんな戦術や土台を得意とするかはまったく異なる)。

だが、それを最大限に活かすには、セガゲームスがビジョンを見せる必要がある。liveさんが言うように、『ぷよぷよ』をesportsとしてどう展開していきたいのか、何を目的にどんな道を歩もうとしているのか、それを示さなければならない。外野にいる僕には、"esports"が盛り上がっているから乗っかって、とりあえず大会を開催しているだけに見えてしまう。個々の施策の意図は分かる、だが全体としてはどこを目指しているのか?

プレイヤーやコミュニティがシーンを先導するのは当然として、しかし、そのサポートをするのはセガゲームスであるはずだ。場と賞金を供与しているだけでいいというわけではない。コミュニティとIPホルダー、その両輪が共通のビジョンという軸で繋がってこそesportsである。

そうしていま以上に熱気が増していけば、洞窟の奥にいる彼らも外の様子が気になって磐戸を開けてくれる……かもしれない。

※そして12月27日、momokenさんがliveさんを始めとするトッププレイヤー10人と30先を戦う企画が発表された……! その最後にはあの人の名前が!?

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live @livedesu
ブログ 清濁のるつぼ

取材・執筆
なぞべーむ @Nasobem_W

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