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上村元のひとりごと その457:スタイル

 こんにちは、上村元です。よろしくお願いします。

 iPhoneで書くようになってから、執筆時の姿勢が、むちゃくちゃになりました。

 MacBookは、どうしても、炬燵に置いて、タイピングすることが要求されていたので、割と、きっちり座り続けなければならず、しょっちゅう、背中や足腰が痛かった。

 しかし、スマホは、両手で持って、どこへでも、転がっていける。

 下書きの際の原稿用紙は、さすがに、下敷きと天板が要りますが、それも、はっきり言って、きれいな字で書く必要はない。

 僕が読めれば、それでいいので、いきおい、流し書き、崩し文字。

 ひどい時は、漢字を忘れて、確か、二文字だったな。

 とにかく、字数さえ合っていればと、くちゃくちゃのひらがなで、ごまかしたりなんかして。

 まあ、後で解読するのも大変だから、ある程度、しっかり書いて、ふう。

 ちょっと、休憩。

 にーどるるる。

 ごろんと、床に寝そべる腹の上、愛猫ミントがべた乗りして、気持ち良く、喉を鳴らします。

 しばし、天井を仰いで、ぼうっとして、さて、打ちますか。

 愛猫を振り落とさないよう(そんなことをしたら、ぶち切れられて、かじられる)、慎重に、腕だけ伸ばして、iPhoneをつかみ。

 ただでさえ、超ちっちゃく、拡大鏡が欲しいくらいの、自分の字と首っぴきで、こつこつと、原稿を仕上げていきます。

 だらっだらです。

 ぐってぐてです。

 ぬいぐるみの猫を腹に乗せて、オンラインゲームに興じる、失職して引きこもり中の、独身中年男にしか見えない。

 どうして、こんなことに。

 嘆きつつ、しかし、身体は、とても楽。

 エアコンの冷気が、埃っぽい床を這って、過熱気味の夏の肌に心地良い。

 腕が痺れたら、適宜、愛猫を抱いて、うつ伏せればいいし、寒くなりすぎたら、ベッドから、毛布を引っ張り下ろせばいい。

 最高。

 ただし、他人様には、決してお見せできないけどね。

 こういう時、握っているスマホは、やはり、超高級品であって欲しくない。

 ほどよくくたびれた、ちょっぴりひびの入ったケースに包まれて、なんとなく、旧モデルの匂いがする画面を、展開して欲しい。

 このまま、ずっと、だらだらであれたら。

 いっそ、本当に、スマホで遊んでいられたら。

 つい、気弱になるほど、馴染んだ物のもたらす安定感は、半端ない。

 しかし、僕は、物書き。

 遊んでいるわけにはいかない。

 ずぶふーん。

 だぶふーん。

 もはや、べったりと、青緑色のスライムと化している愛猫も、決して、芯から、だれてしまっているわけではない。

 これが、スタイルなのです。

 表現者として、猫として、最大限にくつろいで、それぞれの、ハイパフォーマンスを披露している。

 矯正することはできない。

 型にはめれば、嘘になる。

 物書きとは、パソコンに向かって、日がな呻吟し、我が身を削って、文章を作る者である。

 なんて、固定観念、笑止だね。

 実際、そうやって、特段の成果を挙げたということもなかった。

 そもそも、僕の文章は、ものすごく、格式高いか?

 とんでもない。

 だらだら寝そべって、古びたスマホを操っているのが、ふさわしい。

 悲しいことですが、仕方ない。

 スタイルは、選べるようで、選べない。

 僕にできることは、安心してだらけている自分を、ありのまま、受け入れるだけ。

 それが、真に、自分を愛するということ。

 ぴーぷす、ぴーぷす。

 元気に寝落ちした愛猫の下で、一心に、指を動かすこと、一時間。

 ようやく、入力完了。

 ふざけているような、真剣なような、地味極まりない文章を、今日もまた、書けて幸せです。それでは、また。

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