【掌編】『僕は待ち人』
約束の時間を過ぎても、彼女は現れなかった 。
僕は待ち人
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今日、初めて二人きりで彼女と会うので、緊張して、30分も前に約束の公園に着いてしまった 。
勿論、彼女は来ていない。
時刻は午前10時30分。
ベンチに座って待とう。
何を話そう?何処へ行こう?
何も決めてないんだ。
10時40分 。
あと少しで、彼女が現れる。
緊張していて、何も食べてこなかったから、
ちょっと、お腹が空いてきた。
お腹が鳴ったらどうしよう…
10時50分 。
もう来るかな?
意外と時間にルーズな人だったりして。
そんな事はないか..
男と違って女の人は支度が大変だから。
でも、もうすぐ約束の時間。
もう約束の11時 。
彼女は現れない。
時間を守らない人って、どうなんだろう?
どうしたんだろう?何かあったのかな?
彼女、そんないい加減な人には見えないのに..
まさか、事故にあったとか..
時刻は11時20分。
もしかして、からかわれてたとか..
とても、そんな事する人とは思えないけど。
11時30分
どうしよう?
もう少し、待ってみようか..
12時まで待ってみよう。
来なかったら仕方ない…
11時45分。
キキキキッ!
自転車に乗った、中学生位の男の子が、僕の前で急ブレーキをかけて止まった。
「すみません!Sさんですか?」
僕は頷いた。
誰だろう?
「あの、お姉ちゃんに頼まれて。お婆ちゃんの具合が少し悪くなっちゃたんで、お姉ちゃん遅くなります」
そう言って、男の子は自転車で走り去った。
僕は待ち人。
これは、携帯電話なんか無かった『昭和の出来事』だ。
【終】
サポートされたいなぁ..