見出し画像

基礎があってこその自由。|フリーランスで生きていく #11

今回の個展では、濃淡の大きなものや、一つ一つの個体差が大きく出ているものを多く作りました。
それが皆さまに好評なのがとても嬉しい。
(お手にとっていただいた皆さま、ありがとうございました。)

これ私にとってはちょっと大事な変化で。
というのも今までは、「ベーシックになるもの」を意識して作ってきたんですよね。

どんな場面でも使いやすい
デイリーに使えて合わせやすい
気に入ったら買い足せる
色違いで数枚持つのにも良い

そういうことを軸にして、作品を考えていました。
narumiyashiroのベーシックラインを作ろうとしていたんです。

***

どうしてそこから始めたかというと、
(ここからめちゃくちゃ戦略的な話になります。)
(ほんとは恥ずかしいし内緒にしておきたいけど)
(まあここだけの話ですよ?)

まずは幅広く、多くの人に知ってもらうことが必要だと考えたからです。

2018年に自分のアトリエを持って独立した当時の私は何者でもありません。
陶芸の産地にいるわけでもなければ横の繋がりもなく、美大を出たとか窯元で修行したとか、ぱっと見て分かりやすい経歴を持っているわけでもありません。

そんな状態でターゲットをあまりに絞り過ぎるのはきっと無謀。

「うつわが好きで知識も豊富で、専門店やクラフトフェアに足を運ぶことも厭わない人」よりも
「なーんか食器っていいかも。別に詳しいわけじゃないけど、無印良品やIKEAよりはちょっと良いもの、オシャレなものを使ってみたいな~」
という人に向けて作ろうと考えました。

***

そして私ができないこととできることを整理する。

創造性のある個性的なアイテムは作れない。
一発で爆売れするようなデザインとか思いつかない。
絵を描くことも別に好きではない。

でも、
釉薬(ゆうやく:うつわに色をつける薬ね)を調合することは興味がある。
シンプルなかたちを作ることはできる。
実際に使う目線で使いやすさを考えることはできる。

そのあたりのことを掛け合わせて、ベーシックを作り上げていきました。
「やりたいこと」「好きなこと」を見つけよう!と思うと結構力入っちゃうじゃないですか。
それによって最初の一歩が遅くなるよりも、まずは「できること」「やっていて苦じゃないこと」をやってみたというかんじです。

面白いと思った釉薬の色味や質感を中心に。
だからこそかたちはシンプルに、余計なものは削ぎ落とす。
使いやすい、買い足したい、と思えるデザイン。
色のバリエーションを増やすことで、選べる選択肢を増やす。

そうやって作り続けたことで、幅広く、多くの人に知ってもらい、手にとっていただけるようになってきました。

***

淡々と同じものを作り続けることが苦しい時期もありました。
陶芸の楽しさを忘れて「作業」になってしまっているときとか。
まあそういうときはたまの個展で大きめの一点ものとかを作ってストレス発散して笑。
あと同じものを作り続けていると、絶対的に上手くなるし速くなります。地道だけど、勝つために必要なレベル上げです。

***

ベーシックが受け入れられると強いです。

私の今の作品は、パッと見てそれと分かるような特徴的なかたちをしているものは一つもありません。カラーバリエーションだって、ものすごく突飛で唯一無二なものというわけではありません。
(これは謙遜とか自己卑下ではなく、冷静な客観視。)

それでも、
実際に使ってみると本当に使いやすいんだよね、とか
どんな料理にも合う、だから料理が楽しくなる、とか
なーんかありそうで他にない絶妙な色味だよね、とか
前回購入したものがとっても気に入ったから買い足しにきました、とか
マグカップ毎日愛用してるので、合わせてお皿も揃えたくなっちゃいましたとか。

嬉しい言葉をたくさんいただくのです。
自分が意図したことがきちんと届いている。
その感覚は、なんとも言い難い喜びなんですよね。

***

そういう実感が湧いたからこそ、
最近はつくりたいものが変わってきました。

ちょっと次の段階へ行こう。
ジムバッジ全部揃えたから次はポケモンリーグに挑戦しよう。
いやごめん、言い過ぎた。まだそこじゃないや。
ハクタイのジムバッジゲットしたから次はトバリシティに行こう。くらいか。
(ポケモンやる人にしか伝わらない例えやめて。)
(ちなみに私はやってません。解説動画をBGMにしています。)

ベーシックが積み上がったからこそ、
少しの遊びを加えられる。

それは全く新しい別の道ではなく、あくまでこれまでの延長なので。
今までの私の作品を気に入ってくださった方にもきっと届く。
そんな思いで、新作を数種類作りました。

個体差の大きいものは、リアルな場である展示会でこその「選ぶ楽しみ」がある。

かたちで選ぼうかな、
色の出方で選ぼうかな、
あーでもやっぱり第一印象のこのコかな!
と。

時間をかけて、アレコレ悩みながら選んでくださる場面はとても嬉しい。
少し離れたところから、ニヤつきながら眺めておりました。

***

つくりたいものが変わってきた。
というよりは、

ようやく自分のつくりたいものをつくっていいんだと思えるようになった。
のかもしれません。

基礎があってこそ自由を得られると思っているので。

ようやくそれを自分に許せるようになったのかもしれないです。

2018年に初めての個展を開催して。
narumiyashiroは、来年2023年の春に5周年を迎えます。

会社員だった期間よりも、陶芸家である期間のほうが長くなるんだな。
なんだかちょっと感慨深いですね。

けどそんな感傷に浸っている暇なんてないので!!
ここからまた次のフェーズ突入して、さらに進化していきますよ。
皆さんどうかついてきて、応援して、そしてもっともっと愛してくださいね。私も愛してます。(愛が重め。)

ていうかまだ個展終わってないから。笑
週末在廊しますのでよかったら会いにきてくださいね。

narumiyashiro solo exhibition
「quiet moment」
2022.9.23(fri)-10.2(sun)
うつわとカフェ Lim.
東京都目黒区駒場3-11-14-1F
詳細こちら。


読んでいただきありがとうございました! サポートしていただいた資金で美味しいものを食べて制作に励みます。餃子と焼肉とカオマンガイが好きです。