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『メンタルモデル』と『行為遂行のサイクル』で、フロー状態の阻害要因を取り除く

「つくってみたけれど、面白くない」
ゲームのつくり手として、いちばんドン底に落ちる一言だと思います。
企画者にとって「ツマラナイ」という言葉が何よりの絶望のスパイスです。

そうならないためにも、ゲームの面白さを言語化し、それを伝え「面白いゲームをつくる」のを学ぶために、
必要な理論をゼロから学び直す一連のコーナーです。

今回のトピックは、『メンタルモデル』と『行為遂行のサイクル』です。

Why / なぜ、メンタルモデル・行為遂行のサイクルを学ぶ必要があるのか

前回までの2つのnoteで以下の概念について学びました。
・面白さを分解し、伝えるためには『MDAフレームワーク』で面白さを言語化する必要がある
・面白さを伝え、ハマっている状態をつくるには『フロー理論』を意識して、難易度とスキルレベルが拮抗させる必要がある

それぞれのURLはこちら

フローに入る条件の一つに「認識される挑戦の度合いと、自身が持ちうるスキルに対する理解のバランスがあること」というのがありました。
自身が持ちうるスキルに対する理解とは、そのお題を解くための方法がわかっている状態のこと。
方法がわからなければ、上達のしようがない。
ある日、この世界に、新競技として「シンクロナイズド・相撲ミントン」が爆誕したとします。
さあ、上達してくれ! いますぐに!
と言われてもルールや、うまいプレイがわからなければ上達のしようがないはず。

では、「わかる」ようにするにはどうすればよいのか。
それを説明しようとするのが、今回取り扱う、『メンタルモデル』のうちの『行為遂行のサイクル』です。

What / メンタルモデル・行為遂行のサイクルとは

メンタルモデルとは、「人が何かをするときに、何が起きているか」という行為の構造をモデル化しようとしたもの。
そのメンタルモデルに、『行為遂行のサイクル』という概念が紹介されている。

『行為遂行のサイクル』とは、以下の一連の流れのことを指す。

・【目標】達成されるべきゴールを設定する
・【実行】そのゴールの達成のために、なにか行為をして自分を動かすのか。それとも他人を動かすのかを検討、実行する
・【評価】行為の結果として、ゴールが得られているのかをチェックする

実行と評価はそれぞれ3つずつに分解されることから、『行為の七段階理論』と言われる。

【目標】
1 ゴールの形成
要するに、何を成し遂げたいかを考えるフェーズ。
【実行】
2 意図の形成
3 行為の詳細化
4 行為の実行
要するに、ゴールを達成するために、何を計画し、実行しようとしているのかのフェーズ。
【評価】
5 外界の状況の知覚
6 外界の状況の解釈
7 結果の評価
要するに、その行為の結果、ちゃんとゴールが達成できているか?という、
状況を把握して、それが達成できているかどうかを判断するフェーズ。


【実行】→【評価】に至るには、下記の4つの観点を抑えていると、よいとされる。

A 可視化されていること。つまり、目で見て状態がわかること
B よい概念モデルであること。つまり、ユーザーにとっての行為と結果の表現に整合性があること
C よい対応づけであること。つまり、行為と結果
D フィードバックがあること。つまり、行為の結果の反応を常に得られること。

How / どうやって使うのか

みんな大好きウマ娘。
こんなウマ娘は嫌だ、という例で考えてみます。

・秋川理事長が何もいわずに、いきなり物語がはじまってしまうウマ娘
・たづなさんが、トレーニングについて、1mmも教えてくれないウマ娘
・桐生院さんが、何の説明もしてくれないままパフェをいっしょに食べに行くウマ娘
・トレーニング時に体力がわからないウマ娘
・トレーニングの失敗確率がわからないウマ娘
・トレーニングしたのに、どれだけ数値があがるのかわからないウマ娘
・いまのパラメータが一切公開されないウマ娘
・スピード、パワー、スタミナなどの説明が一切されないウマ娘
・スキルの説明が一切されないウマ娘
・本人の適正が芝なのか、ダートなのか一切わからないウマ娘
・もちろん、距離適性も一切明かされない。短距離なのか、長距離なのか不明なウマ娘
Etc…

ヤバすぎる。
何も目標が提示されず、どこに向かって走ればいいかわからないウマ娘。
しかも、ありとあらゆるものが隠し事にされていて何をどうすればよいのかわからないウマ娘。

こうならないために、ゲームのつくり手側は「伝える努力」をしないといけないわけですね。

では最後に、演習問題です。

演習問題

問1
自分がプレイしている/つくっているゲームでわかりにくいのがあれば、行為遂行のサイクルのうちどこでコケているか書いてみよう

問2
コケたポイントを改善するには、何をすればいいかの改善策を書いてみよう

おまけ もっと詳しく知りたい

こちらの本で理論が紹介されています。
今回のフレームワークは、第2章に載っています。
旧版は1990年の発行ですが、原理原則なので、古さを感じません。

それでは、またお会いしましょう。

ここまで読んで下さり、ありがとうございました! サポート頂いた分は、新しい記事を作成時の参考書籍や、 勉強代に充てさせてもらう予定です。