ブラームス弦楽6重奏 第1番 第2楽章 動機(モティーフ)について

第1楽章はモティーフにより曲が作られていることがわかっていると思います。
第1楽章で出てきたモティーフが果たして他の楽章にも影響を与えているのでしょうか?
具体的に見てきましょう。

第2楽章冒頭のチェロ2番の進行を見ていきたいと思います。
D-Cis-Dと半音下がって戻ってきています。
もしブラームスが当時(ロマン派)の他の作曲家を同じように単に官能的に曲を作りたかったら、このチェロ2番のパートはおそらくD-Cis-Cの半音進行となっていた、と思います。
それをあえてD-Cis-Dと戻ってきたかというと、これはまさしく第1楽章の第1主題のB-A-Bと半音下がって戻ってくるこのモティーフを使っているからにほかなりません。

この半音下がって戻ってくるというモティーフは随所にみられます。
47小節目48小節目のチェロ1番の拍の頭を見てみるとD-Cis-Dとなっています。
他には、52小節目53小節目のチェロ2番はC-H-Cとこれも半音下がって戻ってくる形となっています。
細かいですが64小節目のチェロのA-Gis-Aも、同じだと言えるのではないでしょうか?
72小節目のヴァイオリンヴィオラのA-Gis-Aも同じです。
80小節目も同じです。
逆の形もみられます。
130小節目のヴァイオリンの合いの手、E-F-Eと半音上がって戻るのはまさしく逆の形となっています。

155小節目でヴァイオリン1番がD-Cis-Dとして終わりにしているのは、偶然ではありません。

第2楽章はこの後しっかり終わっているにもかかわらず、この後に下属和音を使いアーメン終止みたいにしているのは、柔らかさを出す為でしょうか?
印象がだいぶ柔らかくなります。

次に旋律ですが、
拍の頭だけみるとD-E-F-Gと音階進行しているのがわかります。
また17小節目からはA-C-C-Eとアルペジオになっているのは第1楽章の第3主題のアルペジオと関係性があるような気がします。
この順次進行と分散和音(アルペジオ)を巧みに使い旋律を作っています。

第5変奏曲の保続音は、第1楽章の長いドミナントが保続音を使っていましたが、これを模して作っていると思われます。
144小節目からの2番チェロのDの音も保続音を考えられます(この場合はDなのでトニックでの保続音)。

半音下がって戻る音型
順次進行とアルペジオ(分散和音)
長い保続音を使っている

この3点で見ても工夫しながら2楽章に取り込んでいるのがわかります。

こんな視点で見てみると第3楽章や第4楽章には、どんな工夫で作られているか?楽しみになってきます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?