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PPI抵抗性のGERD、処方をどう変更する?

※この記事は医療従事者向けです。

逆流性食道炎に使用される、プロトンポンプ阻害剤(PPI)。
しかし、PPIを服用しても改善しない場合があります。PPI抵抗性胃食道逆流症(PPI抵抗性GERD)です。

標準量のPPIを8週間内服しても、食道粘膜のただれと胃食道逆流が原因と考えられる症状(胸やけ、つかえ感、呑酸、胸痛、など)のいずれかもしくは両者が十分に改善しないものを、PPI抵抗性胃食道逆流症(proton pump inhibitor-resistant GERD)と言います。

http://www.nagakute-nishi.com/column/gerd2.html

PPI抵抗性GERDの場合、治療はどのように変更されるのでしょうか。

PPI抵抗性GERDの原因

胃酸分泌抑制が不十分であることはもちろんですが、それ以外にも様々な原因が報告されています。

1)患者のCYP2C19活性が高い

オメプラゾール、ランソプラゾールはCYP2C19により代謝されます。また、CYP2C19の遺伝子変異により、酵素活性が変化することになります。以下もご参照ください。

患者がCYP2C19の活性の高いhomo EMの場合、PPIの効果が得られない。そのため、別のPPIに変更することで、症状が改善する可能性があります。

2)服薬アドヒアランスが悪い

医師からPPIが処方されているにもかかわらず、服用を忘れていたり、自己判断で休薬したりする患者さんもいます。毎日継続して服用できていないことで、PPI抵抗性GERDと勘違いされることも考えられます。

その他、心理的な要因や、食道運動障害などの影響も報告されています。


PPI抵抗性GERDの薬剤治療

1)食後服用の場合は食前に変更する

PPIを食後8週間服用しても改善が見られないときは、用法を食前に変更することで奏功する場合があります。

なぜなら、胃壁のプロトンポンプが活性化するタイミングに合わせて、薬を服用することが効果的なためです。

プロトンポンプは、胃壁細胞からの胃酸分泌を促しています。PPIは、このポンプの機能を抑えることで胃酸の分泌量を減らし、炎症を改善する薬です。

プロトンポンプには休止期と分泌期があり、食事の摂取により活性化され、分泌期に移行します。分泌期の方が、胃壁に存在するプロトンポンプ量が増え、当然PPIの効果も強く現れる。そのため、食事を摂取する30分から60分前ぐらいにPPIを服薬することは有効だと考えられます。

2)第二世代PPIへの変更

ランソプラゾール(タケプロン)やオメプラゾール(オメプラール)は第一世代PPI、エソメプラゾール(ネキシウム)・ラベプラゾール(パリエット)は第二世代PPIです。

第一世代と第二世代の違い、私は恥ずかしながら今までよく理解していませんでした。これらの薬は、CYP2C19遺伝子多型の影響の受けやすさが違います。

そのため、第一世代PPIを使用していた場合は、第二世代PPIに変更することで改善する場合があるのです。

3)1日2回服用に変更

PPIは、通常は1日1回投与。1日の投与量を変えずに、1日2回に変更することも対処法の一つです。

理由は、投与回数を増やした方が酸分泌抑制効果が高くなることが知られているため。新たにできたプロトンポンプを阻害し、効率よく阻害効果を得られると考えられます。


おわりに

近くの内科で受け付ける処方箋。同じ胃薬を使っていても、患者によって食前投与と食後投与で分かれていたため、なぜなのかな?と思っていました。

きちんと処方理由を説明し、納得して服用して頂けるように努めます。

食前服用の場合、欠食していると思うように効果が出ないので、食事の状況を把握することも大切ですね。

参考

日本消化器病学会 胃食道逆流症(GERD)診療ガイドライン2015



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