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「飲む中絶薬」について調べてみた

※この記事は医療従事者向けです※

「飲む中絶薬」来月申請へ、承認なら国内初…日本は「時代遅れ」の掻爬法も : 医療・健康 : ニュース : 読売新聞オンライン (yomiuri.co.jp)

11/21の記事ですが、今更発見したので気になりました。
「飲む中絶薬」が今月中に承認申請される予定らしいです。

申請するのは、妊娠継続に必要な黄体ホルモンの働きを抑える「ミフェプリストン」と、子宮を収縮させる「ミソプロストール」。ラインファーマによると、フランスで1988年に承認され、現在は世界70カ国以上で使われている。

https://www.yomiuri.co.jp/medical/20211121-OYT1T50009

薬局でアフターピルの相談を受ける機会がたまにあります。今後はこの薬に関する相談を受ける機会もあるだろうと思い、勉強のために調べました。勉強サボリ魔だけど、noteに登録したからには誰かの役に立つ発信がしたい・・・と思うのです。

なお、この薬を個人輸入して自己判断で使うことは絶対にやめましょう!!!

ミフェプリストンとミソプロストールとは

この度承認される予定の、「ミフェプリストン」と「ミソプロストール」。2つの薬を合わせて服用することで、中絶を促す効果があります。

厚生労働省のHPにて、国ごとのミフェプリストンの商品名が紹介されていました。

一般名:ミフェプリストン(MIFEPRISTONE)
商品名:ミフェプレックス(MIFEPREX)(開発時の名称である「RU486」とも呼ばれています。)
欧州においては ミフェジン(MIFEGYNE) の商品名で販売されています。
中国では 息隠(米非司酉同片) の商品名で販売されています。
台湾では保諾(Apano)の商品名で販売されています。

https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/kojinyunyu/050609-1c.html

こちらは黄体ホルモン薬です。妊娠維持に必要なプロゲステロンの働きをブロックします。

ミソプロストールは子宮の収縮を促し、中絶を促進させる薬です。

この二種類を服用することで、内服による中絶が可能になるということです。

アフターピルとの違いとは

緊急避妊ピルのレボノルゲストレルなどと違い、妊娠後49日以内であれば効果が期待できる点が大きいでしょう。ノルレボ錠(レボノルゲストレル)は性交後72時間以内に服用しないと、妊娠阻止率が下がりますし。

使用方法

米国FDAで紹介されているミフェプレックスの服用方法は以下の通り。
①妊娠7週目までの女性に使用可能
②初日にミフェプレックス200㎎(1錠)を服用
③ミフェプレックス服用後24時間~48時間以内にミソプロストールを服用。ミソプロストール800μg(200μg*4錠)を頬で30分保持し、その後水で嚥下する。
④7~14日以内に、医療機関で中絶が完了したかフォローアップを受ける

頬で服用??と思って調べたら、FDAのドラッグインフォメーション(リンク)にて画像が紹介されていました。(2.1の画像参照)
左頬に2錠、右頬に2錠、歯茎と頬の間に置くようです。

ミフェプレックスを服用できない人

再度、厚生労働省のホームページより引用になりますが。

A. 次のような人は、ミフェプレックスを服用してはいけません。
・ 最後の月経開始日から49日以上を経過している妊娠している人
・ 子宮内避妊具(IUD)を装着している人
・ 子宮外妊娠(卵管妊娠)と診断された人
※ 子宮外妊娠(卵管妊娠)に対する中絶効果はなく、それに気づかず服用し、適切な処置がなされなければ卵管破裂の危険性がある。
・ 副腎に障害がある人
・ 抗凝血薬を服用している、又は出血傾向がある人
・ ステロイド剤を服用している人
・ 医師による経過観察を受けられない人
・ 服用後の2週間、容態が急変したときにすみやかに医療機関を受診することが困難である人
・ ミフェプリストン、ミソプロストール又は同種の薬に対するアレルギーがある人

https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/kojinyunyu/050609-1c.html

ミフェプレックスはCYP3A4で主に代謝を受けるようなので、CYP3A4誘導剤もしくは阻害剤の併用には注意する必要があります。

起こりうる副作用

・膣からの出血
・重篤な感染症
・腹痛、嘔気、その他消化器症状

承認後の動向を見守りたい

国内の治験では、妊娠9週目までの妊婦120人に投与したところ、93%が24時間以内の中絶に成功しました。腹痛や嘔吐の副作用を訴えた人は6割弱。どれも軽いものだったとのこと。

しかし、1988年にフランスで承認されて、70か国以上で使われている薬なのに、日本でこれまで承認されなかったのはなぜなんだろうか・・・。承認プロセスの違い??

12月中に承認申請されれば、1年後には国内で使用できるようになるそうです。性被害で望まない妊娠をしてしまった人にとって、体の負担が少ない選択肢が増えることは喜ばしい。今後の動向を見守りたいです。

参考文献一覧

1)Mifeprex (mifepristone) Information
2)ミフェプレックス(MIFEPREX)(わが国で未承認の経口妊娠中絶薬)に関する注意喚起について
3)MIFEPREX HIGHLIGHTS OF PRESCRIBING INFORMATION

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