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手離すこと

手離すこと

動機は部屋からの脱出
といえば聞こえがいい

ファッションに興味がない
着心地がよくて、使い回しが効く
それだけでいい
といえば聞こえがいい

音楽はストリーミング配信で聴く
色んな音楽に簡単に触れ合える時代だ
といえば聞こえがいい

本に囲まれる空間と時間
本を開けば広がる空間と景色に没頭する時間

自分のセンスとアンテナが
無いと思い知る洋服屋

音楽のことはなにも分からないけど
好きな子とお近づきになりたくて
買った数々のCD

大事な人へのプレゼントを大切に扱うように
開けば広がる新しい世界を楽しみにしていた
でも、ページに手汗が滲むくらい
現実逃避の手段と化した本

根幹がないから
いつも誰かを意識して
当たり障りのないものを選ぶ
そうすると増えていく紺色と黒色の服

叶わなかった想いが
後腐れがないようにと思う心に邪魔をするから
ダンボールに閉まったCD

そのままそのまま
変わらなきゃ変わらなきゃ

この部屋にいては葛藤する
といえば聞こえがいい

自分の部屋なのにリラックス出来ないんだ
だからリセットしたんだ
といえば聞こえがいい

手離したこと
一片の悔いはない
といえば聞こえがいい

手離して
手離すものがなくなって
意味も理由も自分対自分

患部に直接
これはこれでしんどいな

新しくもなく
改めてもなく

ましてキレイになったわけでもない
埃まみれも変わらない

本棚のあった場所には跡がある
裸になったハンガーがぶら下がっている
青春は液晶の中、結局聴いてしまう曲

手離せてないなって

失って気付くのは
もうやめようって

それさえ
失ってからしか思えないんだ


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