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三菱一号館美術館(東京都千代田区・東京駅 イスラエル博物館所蔵 印象派・光の系譜)

三菱といえば岩崎家。岩崎家といえばジョサイア・コンドル。ズブズブの関係である。
そんなコンドルが建築した三菱一号館を美術館として広く活用している。
東京駅の丸の内南口から歩いて数分の場所にある好立地。
今回の企画展はイスラエル博物館所蔵の「印象派・光の系譜」と題して、印象派の作品を中心にして展示をしている。ゴッホ、セザンヌ、ルノワール、シスレー、ドガと、とにかく有名どころが揃い踏みしている。モネもね。

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中庭側にある入り口から係員の指示に従って窓沿いに進めば、正面にチケットカウンターがある。銀行だっただけあって銀行の窓口のようなカウンターなのが微笑ましい。すぐそばにあるエレベータで3階に上がればそこは展示室。

館内は作品保護のため薄暗くしている。天井を見上げると多数の小さなライトを光を集めて作品を照らしているのがわかる。光の系譜というタイトル通りの演出かもしれないけれど、鑑賞者がしっかり作品を見ながら、作品も保護する、という美術館側の努力が見られてうれしい。

最初はコローやヨンキント、ドービニーといった画家による水の風景。水の反射がとても美しく飾りたい気分。コローの作品のいくつかでは赤い帽子の釣り人がいて目立つ。同じ人だろうか。
いくつかの部屋にレプリカのマントルピースが設置されており、かつてはどの部屋も本物の暖炉が置かれていたことを物語っている。そんな建築の名残を見るのもまた楽しくもある。
シニャックやブーダンを見ながら、シスレーの点描、もはや描き尽くされた感のあるエトルタの断崖は今回はモネ。

続く部屋は撮影可能となっており、ピサロ、ゴッホ、コロー、ルノワール、セザンヌといった画家の作品が並ぶ。モネもね。中でも秀逸だったのがレッサー・ユリィという画家の作品。筆と、おそらくペインティングナイフで巧妙に塗られた作風が他の画家とは一線を画していて、しばらく魅入ってしまう。白樺の樹か、白い幹に青や赤のペイントが混りこんでいるのがまたセンスがあって良い。どの画家もかなり近距離で見られるのだけれど、コローの絵でどうやら虫が固着して絵に塗りこまれているような箇所を発見して微笑ましくなる。

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この展示室を抜けると中庭を見下ろす形の廊下へと出る。眺めが良くて素晴らしい景観。一休み用の椅子もあるのでゆっくりとできる。
次の展示室ではゴーギャンをメインとした構成になっている。パナマやタヒチでプリミティブな人間の本質を描こうとした頃の作品が中心。さらに都市の風景としてゴッホやピサロによるパリの風景が描かれる。あ、ここ行ったことある!って感じで懐かしくなる。

先ほどの部屋で感心したユリィの作品がまたここにもある。夜のポツダム広場、冬のベルリンという2作品はいずれも路上の反射の描き方がとても尊い。特に人気のあるのは夜のポツダム広場で、雨の夜の街というのをここまで巧妙に油絵として落とし込んでいるのは感心するしかない。またしても魅入ってしまう。

階段を降りて2階へ。特別展示としてモネの睡蓮の連作がある。先ほどの部屋にもあったので一度の展示で何作も睡蓮を見ることができる。その違いを見比べてみるのも面白い。隣の部屋にはルドンの巨大な花束がある。かつては海外の邸宅で飾られていたらしい。天井まで伸びるほどの大きな絵を飾れる邸宅ってどれだけだよ。

再び中庭を臨む通路を通り、最後の章として人物画と静物画。ここでもユリィの作品がある。赤い絨毯、これもまた良い作品。ペインティングナイフの効果が鋭い。人気沸騰になるのも頷ける。これまで注目されなかったユリィの作品に期待しつつ、たっぷりと堪能するのであった。トイレはウォシュレット式。

1階はミュージアムショップとカフェがある。カフェはかつて銀行の営業室だった場所で、2階までの吹き抜けとなっている。一息いれるのもいかが。歴史資料室とデジタルギャラリーもあるので岩崎家の歴史と繁栄を心ゆくまで堪能できる。

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