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買ってもらって、そこからつながりがまた生まれる、こんなに嬉しいことなんだ!

今年の3月12日に英国から帰国したとき、日本はすでに新型コロナウィルスの影響で変わり果てていた。

空港にはほとんど人がおらず、空港スタッフはみんなビニール手袋をしていた。

空港から街へ向かう特急にはほとんど人が乗っていない。

このウィルスはただものじゃない、肌でひしひしと感じた。

その後、英国でもロックダウンが始まり、あれよあれよと日本でも緊急事態宣言が出された。

今まで毎週のように新幹線にのり、全国各地をかけまわっていた生活が一変した。

4月に入り、こんなときでも自分にできることはないかと模索が始まった。

1つは、今まで対面で行っていた視覚障害のあるお子さんのいらっしゃる保護者向けの相談会をオンライン化した。

保護者のニーズを聞き取り、実施時間は金曜日の夜21時以降とした。

世の中がストップしたように見えても、日々の子育てはとまらない。

パパママたちの悩みは環境の変化とともに新たに生み出される。

保護者の声に耳を傾けながら、これまで行った素晴らしい講演会の数々をアーカイブとしてまとめることをしようと思い立った。

まず、最初に着手したのは、今年の2月に実施したパパママ会だ。

この日は、愛知県で初めて地域の小学校・中学校・高校で学んだ全盲の娘さんとそのお母さんにゲストにきていただき、その経験を語ってもらった。

とても明るく終始にこやかにお話が展開されるのだが、この地域のインクルーシブ教育のまさにパイオニア的存在のお二人。

その経験の1つひとつが、これから子育てをするパパママたちに様々なヒントを与えてくれるものだった。

だから、私はこれを1冊の本にしたいと考えた。

私にできること。

それは「書くこと」だ。

そして、生まれたのが
「ごめんね」から「ありがとう」へ
地域で学ぶ盲児の物語
という本だ。

完 表紙

初めて本づくりに取り組んだ。

右も左もわからない中、インターネットで情報を集めながら作った。

そして、この本が保護者のもとへ届けられるようになった。

読んでくださった保護者から、
「最初から涙がとまりませんでした」
との感想が寄せられた。

きっと、自分の子育てと重なる部分があったのだろうと思った。

つい先日のことだ。

「奈良さんの本、買ったよ~。しかも、2冊!」
と視覚障害児を支援する専門職の方から連絡があった。

2冊も?!なぜだろうと思って尋ねてみると、

「1冊は自分用、1冊は盲学校に寄付しました。先生方もとても喜んでいらっしゃいましたよ!」
とのこと。

あぁ、なんてありがたいことなんだろう。

私に財力があれば、この本をすべての盲学校に寄贈したい!そう思っていた。

ただ、なかなかそこまではできていなかった。

私ができずにもやもやしているところに、すっと手をさしのべてくれたようなそんな優しさにふれたとき、私の心は本当にぽかぽかと温かくなっていくのを感じた。

私はこの10年、人と人、人と情報をつなげたい、そして、孤独な視覚障がい者やその家族をなくしたい!その一心で活動に取り組んできた。

1つのイベントを本にしたことで、そこからまた新たなつながりがつむぎだされる。

自粛期間があったからこそ、創り出すことのできたこの1冊。

赤ちゃんを未熟児で生んでしまった母親たちは、きっと、日々、悩んでいるはず。

未熟児で生まれたことで未熟児網膜症という病気になり、医師から

「目が見えない可能性があります」

と告げられた瞬間の絶望感はきっと一生忘れられない出来事になるでしょう。

しかし、その絶望から目の前のきらきら輝く命はきっとあなたを新たな光の方向へと導いてくれるはず。

暗闇で一人泣いていないで、つながりを求めてほしい。

きっと、大丈夫だから。

あなたは世界一素敵なパパママだから。

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