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奈良にうまいもんなし、は本当か?

奈良にうまいもんはないそうである。

これはこれまでの人生で実感したことでもある。

奈良にお客さんがくる。なにか美味しいものを・・と思う。美味しい店は沢山ある。お金を出せば際限なくある。そこで問題となるのは「奈良でしか味わえない。奈良の名物でおいしいもの」があるのかどうか、ということだ。

奈良の名物。柿の葉寿司。これはもともと家庭料理で、今でも奈良県南部の吉野町や五條にいけば、手作りしている家庭もあるという。実際そういうところのお手製柿の葉寿司を食べたことがあるが美味しかった。カレーがそれぞれ家の味が出るように、柿の葉寿司も家庭の味が出るのだ。

奈良の名物。三輪そうめん。これは奈良の桜井というところで生まれた。素麺は製麺したあと乾かす期間がいるそうで、冷たい風がいいらしい。奈良の桜井地方は冬は寒く(奈良は雪が少ないところがおおいけれど、この桜井や榛原は雪が多いイメージ)麺を乾かすのにうってつけだ。かつて冬の農業の閑散期に素麺を作り、コメ作りが終わった田んぼで素麺が風にたなびく姿があちこちで見られたという。(今は室内干しだそう)

奈良の名物。茶粥。これはもともと奈良の水不足からきた生活の知恵である。奈良はお茶の名産地で、高地に行くと茶畑が沢山あるのだけど、そのお茶でお米を粥にしたものだ。奈良の河川は長さが短く、水をたたえ続けにくいという。そこでため池などを作って対応していた。奈良にある池の多くは人工のため池で、自然発生の池は少ないらしい。こうしたことから雨が少ないと水不足となった。水がないとコメが取れない。少ないコメで乗り切るために、お粥にして少ない量で満足を得るためにできたのが茶粥なのだ。

柿の葉寿司も素麺も茶粥も、それぞれに美味しい。茶粥なんて、ちょっと高級和食のメニューに加えられているくらいだ。それらを用いて「うまいもんをどうぞ」と言えないのはなぜだ。それはつまり奈良県民にとって「これ、美味しいけどふだん家で食べるやつやん。外から来た友達と一緒に外食するなら、ふだん食べないやつ食べたいよー!」ということなのだ。
 つまりは肉である!魚である!ボルシチである!(そうか?)ケーキである!パフェである!(古都華という品種のいちごパフェは美味しい)そういうふだん食べないものを(自分が)食べたい。でも、せっかく奈良に来て、どこにでもあるステーキやらとんかつやら、お造りやらパエリアやらボルシチやら(まだ言ってる)食べたいとお客が思うだろうか?

思わないんじゃないだろうか・・・?と奈良県民は固唾を飲んで見守っている。やはり、奈良に来たら、奈良っぽいもの、奈良にしかないもの。名物というものを食べたいのではなかろうか・・?

そういうわけで奈良県民は苦悩する。奈良にうまいもんなしと言われて「最近はそうでもないよ。美味しいところ増えてるし・・」と思う。でも、もてなしたい気持ちが先に立って、希少価値のあるものを提供しなきゃいけない気分になっている。そして店探しは難航する。エンドレス。


※画像のかき氷は「ほうせき箱」さんのかき氷です。これはまちがいなくおいしいです💛


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