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仏像の材質

仏像めぐりをよくするのだけど、仏の造形というのは時代によって違っていて本当におもしろい。

日本に最初に伝わった仏は金銅製と言われていて、金属の仏像だった。
他にも石造りや、木でできたものなど色々ある。

特に木造は木そのものが霊木であったりするので、珍重された。
日本にはない白檀などお香としても有名で、ないから希少価値があり、良い香りがして、だから仏像に相応しいといわれると確かに拝みたくなる。

そもそも日本は木の国だ。家も建具も木で作る。紙だって木からできている。鉄だって木があってこそ(燃料として)生成される。

日本の神話でスサノオという神様が登場する。
天照大神の弟で、すごい乱暴ものエピソード満載の人なのだけど、このスサノオの体から日本の木ができたという話がある。

彼のひげが杉の木となり、胸毛が檜に、尻毛は槙に、眉毛が樟になったと。
さらに、杉と樟は船を造るのに適していて、檜は宮殿を造るのに良い。槙は棺を造るのに良いということを言っている。

日本がいかに木に恵まれていて、木でなんでも作っていたかがよくわかる。

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(檜皮葺きは木の皮だ)

昔ギリシャに旅行した時、パルテノン神殿などの石の遺跡を見て回り、その巨大な建築と大理石の神様の像に圧倒された。

ギリシャ人は人間の体を愛していて、その造形美は彼らの肉体自慢に見える。

体の線を強調しない日本の仏像と本質的に違っていて、だからこそおもしろかった。ミケランジェロと同じ土俵の作家が出てくるのは運慶の登場を待たなければならない。

ギリシャで圧倒的な肉体美の彫刻制作を可能にしたのは、そこが石の国だったからだ。大理石は柔らかくて加工しやすいそうで、それがふんだんに産出される山があってこそだ。紀元前から大理石の加工品をじゃんじゃん作っていて、いまだに輸出なんかをしている。すごすぎる。

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大理石は柔らかくて加工がしやすい分、もろい。日本のお金持ちが大理石を玄関の石に敷いたら傷だらけになった・・という話もよく聞く。ギリシャの神殿は朽ちているところが歴史を感じる部分ではあるけれど、風情があるね~なんて言ってる間に無くなってしまっては困るので、補強もされているそうだ。

ただ過去に鉄柱を使って補強した際、内部で鉄がさびてしまい膨らんで内側から柱を破ってしまうという事例があった。今はそれを取り除く作業も並行して行われているという。文化財の保全は難しい。


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