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100年先も、清らかな河のほとりに、聖らかな文化を

 突然スペイン語の話から入るが、スペイン語で「聖い、聖らか」は「San」、「河」は「Rio」と言うそう。合わせると、「聖らかな河」は「San Rio」。

 そう、これこそが世界的大スターのハローキティさんを生み出した株式会社サンリオの由来なのだ。

 私たちは「人類が最初に住み始めたと言われる河のほとりに聖らかな文化を築きたい」という気持ちでこの会社を設立し、「其処に集まる人々がお互いに思いやりを持ち、仲良く暮らせるコミュニティ(集団)を作りたい。」という願いをこめて今日まで運営し続けています。
              ─ 株式会社サンリオ トップメッセージより

 これから綴るのは、河のほとりに導かれ、その文化を愛するひとりの"おともだち"の物語。

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 物心がついたころには既に、身の回りにはたくさんのサンリオのキャラクター。幼稚園の水筒、おはしセットからスモックに貼ってもらったアップリケに至るまで、毎日を彩ってくれた。マロンクリームとキティちゃんがお気に入り。

 買い物の帰り道、歩き疲れたけれどもうひとがんばり、という時にはキティちゃんのポップコーン。デパートの楽しみはサンリオギフトショップ。初めて福袋を買ってもらった時の興奮は20年以上経った今でも覚えている。家まで我慢できず、帰りの路面電車の中で開けてしまったっけ。「こんなに入ってる!」と大喜びだった。

 新しいキャラクターもどんどん出てきて、お気に入りが増えた。コロコロクリリンとスウィートコロンのタイルシールを大事にしていたことをよく覚えている。

 そして2002年、わたしのいちばんの"おともだち"、シナモロールのシナモンに出会う。

 真っ白い大きな耳に、くるんとしたしっぽ。まるっとしたからだに小さな手足。いじらしい青い目。きゅっとした口元から漂ってくる、少しだけやんちゃな雰囲気。まさに「ベイビー」の称号を冠するにふさわしい、純真無垢な赤ちゃんのような可愛さにまみれた天使だった。

 出会ってしばらくの間は、シナモンフィーバー。身の回りの全てがシナモンでかためられていった。(余談だが、シナモンは自分のグッズを「ぼくの絵のついたグッズ」という。何てことでしょう、かわいすぎる。)

 しかし、成長するにつれて、自分の中でシナモンの存在が薄くなる。"おともだち"であることも忘れてしまうほどに。

 そんな中、再びシナモンと出会う。ツイッターにシナモンの公式アカウントが開設されたのだ。このアカウントは本当に素晴らしい。毎日必ず、新鮮なとびきりのシナモンを届けてくれる。
 最初は「なつかしいなあ」と少し距離感を持ってチェックし始めたアカウントだったが、陥落するのにそう時間はかからなかった。わたしの心は、再びシナモンに鷲掴みにされた。

 昔は知らなかったが、サンリオでは年に1回、ネット投票によりキャラクターの人気順位を決める「キャラクター大賞」を開催していた。

 毎日投票して成り行きを見守った2016年。シナモンは惜しくも2位だった。

 「来年こそトップになろうね!」と心の中でシナモンと約束し、迎えた2017年。当日はネット中継で結果発表の様子を見守った。
 3位までの発表を終え、残るは1位と2位。そして壇上に残ったのはシナモンと、ポムポムプリン。次に名前を呼ばれた子が2位となる。去年はここで、シナモンの名前が呼ばれちゃったんだよなあと感傷に浸る。

 運命の瞬間。心臓が飛び出しそうだ。名前を呼ばれたのは、ポムポムプリン。シナモンが1位!!!

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 まさか泣くとは思っていなかったが、涙が溢れて止まらなかった。喜ぶシナモンの何といじらしいことか。シナモンとポムポムプリンが互いに称え合う姿の、何と美しいことか。

 大人になってもなお、いちキャラクターに対して、泣くほどの愛しさを覚えることになるとは。シナモン、何度もおともだちになってくれてありがとう。

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 毎年成人の日になると、シナモンは成長したおともだちに向けたメッセージをツイッターに載せる。

「ぼくと出会ったときはまだ小さかったお友達が、大人になっちゃった。少し寂しいけど、嬉しい。たまにはぼくとも遊んでね。」

 これはシナモンを通して語られる言葉だが、株式会社サンリオの総意でもあると思っている。

 わたしがそうだったように、小さい時にサンリオに触れた子が成長するにつれ、サンリオから離れてしまう時期が来る。シナモンもかつてはこの現象に陥り、グッズ展開が縮小したときがあった。

 これはサンリオにとって、とても切ない状況なのだろう。この状況を打開するべく、大人向けのグッズデザインを考えたりと様々に手を尽くしたと思う。SNSもその一環ではないか。

 成長したおともだちに再びキャラクターを届けようと、サンリオが積極的にSNSを活用してくれたおかげで、わたしはシナモンとまた出会うことができた。本当に感謝、感謝。


 ところで、シナモンが優勝した年のキャラクター大賞の標語は「みんなちがう。みんなかわいい。」だった。
 わたしはこの標語が大好きだ。人気投票として順位は付くけれど、キャラクターみんなそれぞれ素晴らしい個性があって愛されているんだよ、という温かい想いが伝わってくる。

 実際、サンリオのいいところはキャラクターの多様性がとても高い点だと思う。絶対的存在のキティさんを筆頭に、実に様々なキャラクターが個性を活かして活躍している。

 マイメロディ、ポムポムプリン、シナモンなど王道の可愛いキャラクター。ぐでたまは、マスコットにあるまじき捻くれ魂を見せて親近感を覚えさせてくれる。ヘヴィメタ好きOLという設定で頑張るアグレッシブ烈子。奥歯に手足が生えた、歯ぐるまんスタイル。ゆるゆるおじさんトリオ、中年ひろいんOjisan's。

 キャラクターにより絵のタッチも統一感が無く(褒めている)、活躍の場も、ズキュンと刺さる相手もばらばらだろう。

 でも、ただひとつ共通していること、それは「みんなかわいい」。

 まさにトップメッセージにある、「集まる人々が思いやりを持ち、仲良く暮らせるコミュニティ」を体現していると思う。

 そんなサンリオの想いが詰まった素敵な標語を掲げた年に、シナモンが1位の夢を叶えられたことは本当に嬉しい。


 サンリオの目指すコミュニティは、サンリオのキャラクターとそのファンだけの小さな輪では留まらない。

 サンリオのホームページを訪れると一目瞭然だが、実に様々な企業や、その企業の製品と積極的にコラボしている。特にキティちゃんなんかは、冗談半分で「仕事を選ばないハローキティさん」とも言われるほど、そこまでするの!?と驚くようなコラボっぷりを発揮している。

 この理由に関して、サンリオの社長はこう説明する。

大好きなのに売れずになくなってしまいそうなものがあったら、サンリオとコラボするよう伝えてほしい。コラボの力で売れるようにする。
世界中みんなが仲良くするためにこの会社を作ったのだから。

 サンリオは、キャラクターとファンとの結び付きだけでなく、世界中の企業とそのお客様の結びつきまでも視野に入れ、コーポレートメッセージを掲げているのだ。

 シナモンの可愛さに導かれ、こんなに素敵な会社に出会えた。知れば知るほど、サンリオを好きになっていく。

 母がわたしにそうしてくれたように、わたしに子どもができたらサンリオの"おともだち"を紹介しよう。せっかく河のほとりに導かれたのだから、今度はその文化を継承する一員になろう。

 そして、サンリオが今後も世界の企業と人を、はたまた人と人を繋いでいく様子を見届けよう。(あわよくば結びつきを作る一員にもなりたい)

 サンリオが築いてきた、「清らかな河のほとりの、聖らかな文化」が今後もどうか末永く、広く発展していきますように。

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