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「アルムナイ」とは?

こんにちは。社会保険労務士の町田です。

最近、人手不足を背景として「アルムナイ」「アルムナイ採用」という言葉が使われるようになりました。今回はその背景や留意点等を説明したいと思います。

※引用は以下のサイトからです。よく纏まっていると感じます。
アルムナイ採用とは? 元社員・退職者を再採用するメリットとデメリットまとめ


1.背景

 アルムナイ(alumni)は、英語で「卒業生」「同窓生」という意味(alumnusの複数形)です。
従来から、結婚・出産・介護等「家庭生活との両立」の観点から退職した従業員を再度雇用する制度・取組は行われていることがありました(「再雇用制度」と称されることもあります)。
最近は、人手不足を背景として、転職等のために一度退職した従業員についても、本人が希望すれば再度就職を認める制度、或いは退職した従業員と繋がりを残しておいて、常時再就職できる「口」を設ける企業も現れています。

さらにその背景として「企業と従業員の関係」が、企業について「全人格的に所属する場」であるという考え方から、「スキルを発揮し、貢献する対象」という考え方に変化しつつあるのでは、と感じます。
前者の考え方からすれば、転職等のために一度退職した従業員、というのは(キツい言い方をすれば)「裏切者」であり、お互いに接触を拒否する、という方向に向かいがちになります。しかし、後者の考え方であれば、たまたまそのタイミングで合わなかっただけであり、状況が変われば再度就職することに問題はない、という方向に向かうのでは、と考えます。

※このニュースも、その文脈に位置付けられると感じます。
イオンモール内定辞退者、3年以内なら即採用 【イブニングスクープ】 - 日本経済新聞

2.「アルムナイ採用」のメリット

採用や早期離職に悩む企業にとっては特に以下の点にメリットがあります。

(1) 採用や育成にかかるコストを抑えられる

広く応募者を集めて新たな人材を採用するには、それなりの時間とコストがかかります。キャリアや実績をしっかり吟味するなら、なおさら求人や選考過程に工夫を凝らす必要があるでしょう。しかしアルムナイであれば、直接声をかけたり会社説明会を省いたりするなど、これまでの関係性を生かした採用活動を展開できます。採用後の研修費用も抑えられるので、コスト削減にもなるでしょう。

(2) 自社をよく理解した人材を獲得できる

在籍経験のある人材ですから、初対面の応募者よりも基本的な企業理解が進んでいます。また、退職を経たことで「外からの目」を持って自社の強み・弱みを再認識することもあるでしょう。そうした新たな視点を業務に持ち込めば、自社の成長に貢献してくれることが期待できます。

3.「アルムナイ採用」のデメリット・リスク

ただ、「アルムナイ」の積極採用には、やはりリスクも付きまといます。

(1) アルムナイが再び職場に馴染めるか

一度は職場を去った人材である以上、アルムナイの採用は慎重に行いましょう。何かしら事情や不満があって退職したのですから、その原因が未解決のままでは、双方にとって良い結果を生みません。
また、アルムナイの魅力を周囲が理解し、互いに良い影響を与えられるかは、社内の受け入れ体制によって大きく左右されます。現場のスタッフやアルムナイ本人の意思を確認しながら人員配置を行い、適切なポジションを探しましょう。

(2) 在籍社員の退職へのハードルを下げる可能性がある

アルムナイ制度を設置することで、「退職しても復職できる」という認識が社内に浸透します。それにより、在籍社員の退職に対するハードルが下がるかもしれません。

4.まとめ

人手不足や中途採用の拡大、さらには「企業と従業員の関係の変化」を背景として、退職者を再び雇用するアルムナイ採用は拡大していくと思われます。
ただアルムナイ採用にはデメリットやリスクも存在します。それが従来、特に転職理由の退職者に対して積極的にアクセスしてこなかった理由では、と思われます。企業風土によっては全く不可能なケースもありますし、それが一概に悪いことではありません。
ただ、人手不足に悩む中で、このあたりのデメリットやリスクを評価し、妥当な対策を講じることで、一つの「採用市場」として考えることができるのではないでしょうか。

以上です。
最後までお読み下さいまして、ありがとうございました。


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