裁判員裁判のコスト

 弁護士が裁判所の内部に触れるのは、司法修習時期の数か月に過ぎない。その数か月間で強く印象に残っているのが、裁判所のコスト意識の希薄さだ。コスト意識はほぼないと言っていいかもしれない。一つの象徴が裁判員裁判であろう。裁判員側の問題は色々ある(5月22日日経参照)が、裁判を主催する側のコストがクローズアップされたことはないように思う。裁判官は司法試験を受かった純粋培養で、民主的な選任手続きを経ていない。時として社会常識から外れた判決をする恐れがある。だから裁判に一般市民を参加させて一般常識に沿った判決を導こう、という建前は理解できる。しかしそれを実現するためにどのくらいのコストがかかるのか。裁判員の選任コストはもちろん、素人を入れたがゆえの、教育時間を含む冗長な審議のコストもある。プロ裁判官だけの裁判コストの数倍はかかっているだろう。控訴されれば無に帰す結論を得るためのコストとしては高すぎるように思う。

鳥飼総合法律事務所 弁護士 奈良正哉

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元 みずほ信託銀行(株)総合リスク管理部長、同執行役員運用企画部長、同常勤監査役。みずほ不動産販売(株)専務取締役。 現 日弁連信託センター幹事、(株)タムロン社外監査役。