コンポントム税務署物語・承 年の瀬

4月はカンボジアのお正月。お正月でも変わらずあるのが毎月の納税。
正月明けは絶対に混むので、頑張って早めに準備。ふふふ。
ようやくクメール納税ライフのリズムがつかめてきたぞ、と内心自分たちを褒めながら、恒例の税務署訪問。

カンボジア正月前の税務署はのんびりしていて、窓口に先客は1人だけ。空いてる、空いてる。余裕を持って締め切り日よりも随分早く来たからね!

隣のゆったり構えたおじさんも早めの納税かな、と目をやると、ポロシャツの胸に税務署のエンブレム。他部署のスタッフが遊びにきているらしい。なんて穏やかな。

いつものMr.Chenは珍しく窓口を離れ、私の後ろの棚で大量の書類を積んだり下ろしたりする作業に勤しんでいる。その隣にはいつもの知的メガネのおばちゃんがファイリングを手伝いながらMr.Chenとよもやま話をしている。新年を前に孫と親戚の子の結婚式が重なり、その他の儀式にもお呼ばれしていて出費がかさんで大変らしい。
Mr.Chenも、こっちもここんとこ毎日飲み会で、お金が出て行くとぼやく。クメール的忘年会・新年会シーズンの到来だ。

背後から耳に届く2人の会話を聞きながら、年の瀬は何かと出費がかさむのは、どこの国でも同じだなぁと思わず頬が緩む。

そのとき、私の書類を担当してくれていた強面だけど実はソフトなお兄さんが、風で書類がめくれるから、天井の大きな扇風機が邪魔だと言った。
それを聞いた隣のデスクにいたお馴染み、キレイめお姉さんがMr.Chenに

「ボン、ちょっと扇風機止めて」と言った。

Mr.Chenの近くにスイッチがあるらしい。背後でどさっと書類を置く音がして、続いて積んだ書類のあいだから彼がのそっと立ち上がる気配がして、最後にぱちっという乾いた音とともに、部屋の電気が半分消えた。

ここから先は

852字

¥ 100

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?