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言いたすぎた映画の記録①

『NO COUNTRY FOR OLD MEN (ノーカントリー)』(2007)を観ました。

あまりにも議論の余地がありすぎる映画だったので勝手に感想を記しておきます。

あらすじは単純で、麻薬絡みの大金を発見して奪い逃げた男をギャングに雇われた殺し屋が探す。保安官はその二人を探す。果たして3人はどうなるの〜!?です。

初めに内容に触れない良さとして、構図・色彩・音・登場人物がとても良かった...

乾いた大地に渋いキャストたちで重厚感がすごい絵面。トミー・リー・ジョーンズのシワも重厚感や哀愁感に一役買ってるかもしれない。

音楽はほとんどないのに足音や光と影の描写で走る緊張感、7:3分けおかっぱ殺人鬼やアメカジおじさん店員、お喋りメガネママなど一瞬面白くなってしまいそうな登場人物。

7:3分けおかっぱ殺人鬼が使う武器はサイレンサー付きショットガン(音が良い)と酸素ボンベを使った謎の機器で、ギョロっとした目と静かなのに威圧的な物言い、勝手にコインで命を賭けさせてくるしサイコパスのように見えて普通に怪我するし返り血は徹底的に浴びないようにする意外と潔癖な一面もある......などキャラが濃すぎます。

ここからネタバレするので観てない人がもし読んでいたならさよならしてください!






ん〜!!!現実って無慈悲!不条理!

........と最後のシガーが事故に遭う場面で思いました。しかもしっかり青信号。 全体的にシガーが怪我をした描写がしつこいほど細かく描写されていて、ただの無敵サイコパス殺人鬼という印象を受けなかったのは監督たちの誘導なのだろうか......

そしてNO COUNTRY FOR OLD MENというタイトルの意味を、年老いた保安官のトリー・ミー・ジョーンズが「もうこの国がわからん...保安官やめよ...」(とは言ってないが)という流れになったときにやっと理解することができました。

また、タイトルがイェイツの詩の冒頭の引用だったり最後にベル保安官が話した夢はフロストの詩を暗示していたり、エンディングにもフロストの詩を用いたり文学的にも完成度の高い作品だと思います。(最初は詩なんて知らなかったくせに上から目線ですが)

全体的なテーマとしては無差別な突然の不幸は無慈悲で不条理である、と皮肉な死生観を表しているのかなと思いました。
一瞬面白くなってしまうようなビジュアルの登場人物のおかげで重くなりすぎず皮肉めいた印象を受けたのでしょうか?

残る謎として、シガーの行動パターンを予測してモスが殺された部屋をベルが訪れた時、部屋にシガーはいたのかどうか、気になります。

みなさんはどっちだと思いますか?
私はいなかった派ですが、ではあの暗闇にシガーがカットはなんだったのか....と気になっちゃいます。

どっちにしろ議論の余地がありそれもまた一興という気分です!
死生観を垣間見ることが出来る面白い作品でした。

おしまい




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