ついに「ESG投資終了のお知らせ」記事が出た

ESG Equity Funds Experienced Record Month of Outflows in May

同業の大先輩がフェイスブックでシェアした記事の、そのまたコメントにぶら下がっていたブルームバーグのニュース。ってもこれも投稿はご本人なんだけど。

タイトルを日本語にすると

「ESG未上場株ファンドから5月に記録的な資金流出」

みたいな感じかな。

記事をざっくりサマリーすると、「米株式市場全体のパフォーマンスが悪化した結果、投資家がポートフォリオを見直しに入った。直近の3年間はESG系エクイティファンドに人気が集まっていたけれど、見直したら儲かっていないことが判明。5月単月で一気に過去最大となる20億ドルが流出した。こんなに極端なことになった理由は不明」ってな感じ。正確を期す人は自分で英文読むか、web翻訳でも使って確認して欲しい。

まあ要するに「ESG投資終了のお知らせ」みたいな記事をブルームバーグが書いているということ。

ほとんどの投資家は、儲けるために投資するんだから、リターンがなければ誰も投資しなくなるのは道理。どんなに未来の環境に貢献しようが、投資パフォーマンスが悪ければ投資する意味がない。「自分が多少損しても環境に貢献したい」というボランティアスピリットに溢れる「あしながおじさん」だけを相手にしていてもマーケットは成立しない。

少し前まで、グリーン系企業の株や債券市場では「これからグリーン投資が人気になる」という思惑買いで賑わっていた。そうなれば、限られたグリーン系金融商品の需給が締まるから、上がる前に買っておけばサヤが抜けるという考えは、まああり得えた。確かに短期投機としてはそこそこ順当な判断だけれど、結局のところそれが長期ポジションの人に繋がっていかない。売買でサヤは抜けるけど、配当が少なければ、最後の最後で利益が出ない。ばば抜きになる。

その構造は割と簡単なこと。誰だって環境に悪いことをわざわざ好き好んでやらない。それでも「環境に悪い」と言われることがやめられないそれなりの理由がある。直近、まあ見事なまでにそれを証明して見せたのがスリランカの例である。スリランカ政府は、欧州の環境団体の口車に乗せられて、農薬や化学肥料などを法律で禁止した。スリランカ政府が得たものは国際環境団体からの「世界No1環境国」の称号。北欧の環境スコアをぶち抜いて輝かしい栄光を手に入れた。

ただし、代償もあった。スリランカと言えば、お茶、天然ゴム、ココナッツ、米などが主要生産品で、まさに農業立国。国の源でもあるこれらの収穫量が半減した。そりゃ「農薬を使うのと使わないのとどっちが良い?」と単純に聞かれれば使わない方が良いに決まっているが、最初から選択肢設定が間違っている「農薬を使って今のままの収入と、農薬を止めて収入が半減するのとどっちが良い?」と聞くべきだ。ところが、こういう話をすると「結局金儲けの話か?」とか「強欲で地球を破壊する」という次なる攻撃コンボが待っている。普通に考えて、収入半減は強欲のレベルじゃなく生きるか死ぬかの話だと思うけれど。

現実を見ればスリランカは国家破綻した。治安も滅茶苦茶。これが理想主義の成れの果てということ。

中国みたいな新参者はともかく、西側経済で生きてきた各国は、過去に色んなバブルを経験して、時価総額よりも、実質成長の方が遙かに大事だと理解しているはずなんだけどなぁ。それでも懲りずに時価総額評価を追いかける人がいて、投機狙いで「グリーンに非ずば、企業に非ず」みたいな極論を言い立てていたし、最悪なグリーン系アクティビストになると、アンチグリーンな会社にレッテルを貼り、企業名名指しで非難する活動を始めたり、機関投資家に対して名指しで投資を止めろと弾劾したりともう本当にやりたい放題だった。

で、そんなバカなことは結局は上手く行かないだろうというのは、誰もが思い至る話だと思う。だって、最終的に収入が半減する投資にお金を入れて増える道理はない。

ブルームバーグだってちょっと前まで煽ってきたのにまあ華麗な掌返しだとは思うけれど、意地になって従来路線のまま報道を続けるよりよっぽど良い。

ということで、ESGの短い春はどうも終わりを迎えているらしい。


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