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ティール組織を読んでみたら、ビジネス書じゃなくて哲学だった

以前から話題になっていた「ティール組織」をいまさら読んだ。

組織論や人事制度に関するものだと思っていたのだが、うれしい誤解というか、組織の背景にある人類の進化や哲学を扱う書籍に見えた。

明確な共通点があるわけでもないが、背景に流れる創発的知性のコンセプトがニール・ドシ、リンゼイ・マクレガー「最高の社風の作り方」を想起させる。この書籍の著者フレデリック・ラルーも彼らと同じマッキンゼー出身だ。そういうアイデアを持った人が多い会社なのだろうか。

創発的知性

創発的知性、集合的な認知プロセスというものについて知ったきっかけは伊藤穰一氏の著書だったと思う。

改めて同著「ナインプリンシプルズ」を開いてみるとこうある。

「人間が作り出した創発系の最もはっきりした例は経済だ。これは明らかに、どんな個人も左右できない属性を示している。人々は市場を、売り手と書い手が出会って商売を行う場所としか思っていない場合が多い。でも市場ははるかに価値の高いことをやっている。社会のそれぞれの成員は、全員が所有する知識のほんの一部しか持っていない。そしてそれぞれはしたがって、社会の機能の元となる事実の大半を知らない」

ニール・ドシらの「最高の社風の作り方」ではこんな調子だ。

「創発の概念を説明するには、人間の組織より単純な例から始めたほうがよさそうだ。まずは、シロアリについてみてみよう。彼らのプロセスのすべては、階級のない社会で自主的に遂行されている。シロアリは、身の丈との比較で言えば最大級の建築物を建てるが、その世界にCEOはいない。私たち人間が、このような組織をつくるとしたらどうだろう。問題が起きれば、社員が自主的に解決する。新しい財源が見つかれば、それを活かすように資産が移動する。だれもが最高の能力を発揮して仕事に励むが、何より重視されるのは、共同体の必要を満たすことだ。どうすれば、アリ塚のような組織を築くことができるだろう?」

人間のティール組織とシロアリのアリ塚

シロアリと人間の違いは、自分たちが何ものであるか、そして自分たちが何をやっているかについて自覚的であることだ。(そうじゃなかったらシロアリに失礼かごめんなさい)

そしてティール組織という書籍は、前の質問 (どうすればアリ塚のような組織を築くことができるだろう) に対して、従業員の全体性 (ホールネス) を開放し、自主性 (セルフ・マネジメント) に委ねることによって経済的な成功と社会的な進歩を両立しうるということを言っている。

著者フレデリック・ラルーの冷徹

そして後半、誰の気分も害さないようなサラリとした物言いで、組織の進歩に関わる、最も核心的と思われる2つの事柄を述べている。

①企業のトップは、精神的な発達を遂げていなければならない
②組織の意識はそのリーダーの意識レベルを超えられないといえる

われわれ人類がインターネットという物理的な距離をほとんど無視する意識の拡張手段を手にしているという事実、生物界に見られる創発性、経済という発露、これらを考え合わせるといつも、自分でもよくわからない戦慄に襲われる。

もしかしたら私たちは、梵我一如の境地へ生きているうちにたどり着くのだろうか。

このエントリで紹介している書籍


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