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展覧会レビュー:特別展 春日若宮式年造替奉祝 杉本博司―春日神霊の御生 御蓋山そして江之浦場所@春日大社国宝殿

今まで春日大社国宝殿に行ったことがなかったことに加え、杉本博司にも興味があったため訪問しました。それについて私の感想などを書きます。

結論:私の満足度は低かったです。1,000円の割には展示数が少なく、説明も不足気味。杉本博司の作品の良さを感じ切ることができない印象でした。

奈良の鹿

私は「春日大社国宝殿」に初めて行きました。元々あった「宝物殿」が、2016年に「春日大社国宝殿」としてリニューアルした、とのこと。私はそのどちらにも行ったことがありませんでした。

建物の全景。建築自体もあまりパッとしない
建物の入り口

現在、春日大社国宝殿では「特別展 春日若宮式年造替奉祝 杉本博司―春日神霊の御生 御蓋山そして江之浦場所」を開催中(長過ぎやしませんか)。

私が前に杉本博司の作品を見たのは「STARS展:現代美術のスターたち―日本から世界へ」@森美術館(2020年11月、私による撮影)
国宝殿に至る前にある看板

1階に杉本博司の作品、2階に主に春日大社の所蔵品が展示されています。
1階の杉本博司の作品は3〜5点ほどと少ないです。屏風がダイナミックに大きい割には、空間が狭くて残念でした。こういった作品は、もっと広い空間で椅子に座ってゆっくりと遠目から全体を鑑賞したいと思いました。

杉本博司「春日大社宮暁図屏風」
杉本博司「春日大社藤棚図屏風」

暗い空間に展示されてある数点の作品が終われば、渡り廊下のような明るい空間に出ます。そこには大きな鼉太鼓(だだいこ)のレプリカと、「光学硝子五輪塔」(全部で10基とちょっと)が展示されています。
その他、杉本博司が江之浦測候所を作る際のインタビューなどをまとめた映像作品があります(どうせなら、この展覧会にある屏風についてのインタビュー動画を撮り下ろしてほしかった)。動画の合計時間をキャプションに書いて欲しかったです(スケジュールを想定したいため)。
その動画はyoutubeでも見ることができます。杉本博司は春日明神への崇敬から、2022年3月に春日大社から祭神を迎え、小田原に江之浦測候所を創設、さらにそこに「甘橘山 春日社」を創建したとのこと。動画ではそのような経緯が触れていませんし、何の動画なのかはっきりしません。展覧会でもそのような背景をもっと観覧者にわかりやすく明示してほしいです。
この展覧会は杉本博司が監修していますが、第三者目線でのわかりやすさも学芸員(いるのか?)がキュレーションすべきだと思いました。

杉本博司「光学硝子五輪塔 日本海、礼文島」他
中を覗くと、杉本博司の写真が入っています
鼉太鼓(だだいこ)のレプリカ

2階は撮影禁止でした。中でも、直径が5mを越す鼉太鼓の実物は圧巻でした。暗い部屋にぼうっと浮かび上がる演出は神聖な気持ちになりました。

その他、「春日鹿曼荼羅」(鹿の背中に菩薩が生えている)を見ると、鎌倉時代から奈良で鹿が神聖な動物と認知されていることが、わかりやすいほどに理解できます。また、「春日若宮曼荼羅」(南北朝時代)に描かれている春日大社近辺は今ともほぼ変わっていなかったことが確認できました。
それだけで春日大社の歴史的価値をシンプルに知ることができました。

展示の合計数は少なく、早い人だと全部見終わるのに30分もかからないと思います。展示のストーリー性やメッセージ性が希薄で、杉本博司の良さを感じきれないため残念でした。これで1,000円は高い(私の肌感覚で500円)。
バス停留所の横に国宝殿があるため、自動的に春日大社ツアーに組み込まれる仕組みのようです。国宝殿で小銭稼ぎをするのではなく、2016年の立て替え時に、前年踏襲しないで、もっとドラスティックにコンセプトを変え、価値を最大限発揮するように検討すべきだったのでは?と感じました。
杉本博司に関心がある人にとっても満足度は低いかもしれません。

蛇足ですが、私はこの日に「なら瑠璃絵」にも行きました。事前の情報収集が不足しており、結果的に徒労に終わりました。「なら瑠璃絵」のメイン会場(地面にLEDライトが敷き詰められている場所)は有料(500円)で、いい時間帯になると約40分待ちの大行列になります。「なら瑠璃絵」に行きたい場合は、それのみを目的とすべきでした。お昼過ぎから「なら瑠璃絵」の時間まで奈良公園付近を歩き回ってしまうと、かなり疲れます(この日は約2万歩も歩いてしまい、足が棒になりました)。

人が手で植えたのかと思うほど苔の生え方が絶妙
杉本博司「甘橘山春日社望遠図屏風」
杉本博司「日本海、隠岐」(これらは若宮神楽殿に展示されているため誰でも見ることができます。しかしい、展示が唐突すぎるため、見ている人はこれが何なのかほぼ理解できていない様子でした)
春日大社境内図
東大寺。大仏様のご尊顔がチラッと見えます
「なら瑠璃絵」で池をライトアップ中

展覧会名:特別展 春日若宮式年造替奉祝 杉本博司―春日神霊の御生(みあれ) 御蓋山そして江之浦
場所:春日大社国宝殿
満足度:★★☆☆☆
会話できる度:★★★☆☆
会期:2022年12月23日(金)〜2023年3月13日(月)
アクセス:近鉄奈良駅から徒歩約20分
入場料(一般):1,000円
事前予約:不要
展覧所要時間:約1時間
混み具合:休日でも快適
展覧撮影:1階のみ可能
URL:https://www.kasugataisha.or.jp/museum_exhibitions/11762/

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