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プロダクトコーチとの伴走で掴んだ、新たな視点と成長への道 ~プロダクトマネージャーが伸び悩んだときに読むnote~

マネーフォワードでプロダクトマネージャーをしている白石です。
思い起こせば1年前、2023年の冬のことです。プロダクトに真剣に向き合い、日々奔走していた私の脳裏にこんな不安がよぎりました。

「このままでは、プロダクトの成長をリードできないのではないか。」

このnoteでは、課題感を抱えていたプロダクトマネージャーがプロダクトコーチとの伴走によって、日々の行動が変化し、結果としてメンバーからマネージャーに昇進、リードプロダクトマネージャーとして管掌する領域が単体プロダクト→複数に広がった経験についてお話しします。

同じような悩みを持つプロダクトマネージャーの皆さんの参考になれば幸いです。


プロダクトトライアングル、全部埋められるのか?問題

プロダクトマネージャーに必要なスキルセットを語る上で、よく登場する「プロダクトマネジメントトライアングル」。これは、ビジネス、ユーザーエクスペリエンス、テクノロジーの3つの要素から成り立っています。
この全てを高いレベルでカバーする人は“存在しないスーパーマン”と揶揄されることもありますが、プロダクトマネージャーとしては、少なくとも各領域について一定の理解と知識が求められるのは事実です。

プロダクトマネジメントトライアングルの図
プロダクトマネジメントトライアングル
引用:The Product Management Triangle(Product Logic)

当時の私は、ユーザーにより大きな価値を届けるために、プロダクト戦略とビジネス戦略との連動性をもっと高めなければならないという課題感を持っていました。
しかし、いざビジネス戦略の資料を読み込もうとしても、数字のロジックや妥当性、なぜその指標が重要視されているのかを自分の言葉で説明できず、表面的な理解に留まっていました。助けを求めようにも「何が分からないのか、誰にどう質問すればいいのか」と悩み、まさに「分からないことが分からない状態」に陥っていました。

「プロダクトは、プロダクトマネージャーが描いた未来以上には成長しない」
そんな言葉に、「このままではいけない」と強い焦りを感じました。
マネーフォワードでは豊富な研修プログラムが提供されていますが、プログラムやタイミングの兼ね合いで、このときは適切なものを受講できておらず、ひとりもがく日々が続きました。

プロダクトリーダーシップ開発プログラムとの出会い

そんなとき、当時のマネージャーである広瀬さんから研修としてProductPeople社の「プロダクトリーダーシップ開発プログラム」へ参加の打診がありました。

プログラムのコーチを務めるのは、横道 稔さん。LINE株式会社でプロダクト組織戦略担当フェローや、プロダクトマネジメントに関わる書籍の翻訳、pmconfの代表理事など豊富な経験を持ち、第一人者として知られる方です。
横道さんのこれまでの取り組みや哲学に触れ、「この方から直接学べるなんて、なんて幸運なんだろう」と、すぐに参加を決意しました。

Product People社のサイトに掲載されているプロダクトコーチ横道さんの経歴紹介のスクリーンショット。写真とともにどのような経歴かが掲載されている。
プロダクトコーチの横道さん

プロダクトコーチングの流れ

このプログラムで紹介される考え方やフレームワークは、受講者に合わせてすべてカスタマイズされるそうなのですが、今回は横道さんとの1on1と2時間程度のワークショップを交互に行う形で進んでいきました。
約1ヶ月の間にワークショップ2回、1on1を8回ほど実施いただき、伴走者としてご一緒いただきました。
この伴走の中で経験したことについてご紹介します。

プログラムはZoomで実施。
miroを利用して対話を記録、付箋を見ながら関係づけを行ったり、深堀りを行います。

目指すべき姿の言語化

プログラムの最初のステップとして、マネージャーとともにリーダーシップを発揮するために超えるべき課題「エッジテーマ」を設定します。

特にビジネスとの連動性について課題感を持っていたので、「どういう状態になっていたらその課題を克服できているか」「どういう状態になっていれば一段上の役割を担えるか」という視点で言語化していきました。

定めたエッジテーマは以下のようなものです。

1. プロダクトビジョンを描き切り、事業責任者をプロダクトの視点からリードできる
2. 担当領域における知識・検討・実践において突出し、意思決定や検討を誰にでも説明できる

普段、つい業務に関することを話してしまう1on1で、向き合うべき課題について深くディスカッションできたのは大変ありがたかったです。
この時間を通じて、目指すべき上位目標を具体的に描くことができ、漠然とした不安状態から、こうなれば良いという目標を定められました。
そのことで、心がだいぶ軽くなったことを覚えています。

相手を知り、共に進む:前進するためのステークホルダー理解

ワークショップのなかで印象に残っているのは、氷山モデルを用いたステークホルダー分析です。
氷山モデルとは、目に見える「行動」だけでなく、その下に隠れた「価値観」や「信念」、「目指す目標」などを理解するためのフレームワークです。

氷山モデルを図示した画像。海上に表出している「できごと」の下にはパターン、構造、意識・無意識の前提が隠れていることを示している。
氷山モデル

このワークを通じて、ステークホルダーの発言や行動の背景にある、価値観やミッションを深く考えるようになりました。

マネーフォワードは行動指針に「User Focus」を置き、社員はそれを強く意識して行動しています。
ビジネス側/開発側など雑に相手を括らず、相手を「User Focus」実現に向けて進む仲間だと認識することで、コミュニケーションは立場が異なる人達と『物事を前に進める』ためのものと捉え直すことができました。

エトス・ロゴス・パトスで自己を再発見する:強みと課題の明確化

エトス(信頼)、ロゴス(論理)、パトス(情熱)は、古代ギリシャのアリストテレスによって提唱された説得の三要素です。リーダーシップに重要な要素である「人を動かすこと」の重要な要素となる説得について学び、自己分析を行いました。


プロダクトコーチングのワークをmiroのボード内で行っている様子。テーマごとにエリアが区切られ、発話内容を付箋を用いて整理していく。大量の付箋が画面に貼られている。
ワークで使ったmiroボード。
2時間弱の対話でビッシリ画面が埋まるほど、思考と対話を繰り返します

数字のロジックについての課題感を感じていたため、予想通りロゴス(論理)が弱みとして浮き上がってきました。短期・中長期で弱みを克服していくアクションを具体的に洗い出し、セッション内で必ず実行するようプランニングします。

一方で、既に持ち得ている良さについても自覚できるようになりました。
ユーザーやプロダクトに対するパトス(情熱)は強みであり、エトス(信頼)を積み上げていく基盤になると感じました。弱みであるロゴス(理論)を強化できれば更にエトス(信頼)を獲得できるというサイクルのイメージを獲得したのです。

実際に、「ここはパトスを発揮して話すべきところだな」といったように、普段の行動をこの3つの軸に照らして俯瞰できるようになりました。

協働という意思決定で弱点を補う

弱みを自覚し、改善に向けた取り組みを続ける中で、横道さんとこんなテーマで話したのを覚えています。

Zoom画面内で1on1するコーチの横道さんと白石が映し出されている様子。
1on1の様子。
横道さんはいつも真摯に対応くださり、話しやすい空気感でありつつも真剣な対話が続きます。

白石: 弱みであるロゴス(論理)はもちろん強化したいです。ただ、全て自分の力で解決すべきなのか迷っています。助けを借りながら進むことについて、どう思いますか?
横道さん: 必要と認識した上で「今は時間をかけない」と意思決定することもできます。自分が何を学ぶのか、誰にどこまで頼るかを決めることも、全て意思決定です。

この言葉に強く納得しました。プロダクトマネージャーは「やらないことを決める仕事」とも言われ、本質的なことに集中することが求められます。
理想の状態に向けて努力は続けるものの、私一人で全てを完璧にこなすのは難しいと認め、チームとの協働で弱点を補うことにしました。

例えば、プロダクトの重要指標を明らかにするプロジェクトでは、信頼するデータアナリストの力を借りることで、ロゴス(論理)の礎となるデータを得ることができました。

実践を通じて得た成果

約1ヶ月という短い期間でしたが、濃密な対話と自省を繰り返し、その後も継続して学びを行動に移すことで、ステークホルダー向けの資料や発言が変化していきました。
その影響もあり、ステークホルダーとの会話や情報提供の量が以前より格段に増えていったのです。
3つの軸で捉えると、以下のような変化がありました。

  • エトス(信頼):

    • ユーザーインタビューや制度・競合情報の収集を行い、惜しみなく共有する機会を増やしました。

      • その結果、「ユーザーのことなら白石さんに聞けば間違いない」という信頼を得ることができました。

  • パトス(情熱):

    • ユーザーストーリーやプロダクトのポジショニングを率先して整理し、資料作成とプレゼンテーションを情熱を持って行いました。

      • その内容が戦略に合致していたため、戦略資料に取り入れられ、戦略策定の場に関わる機会が増えました。

  • ロゴス(理論):

    • 有識者の協力を得ながら、①KGIと連動する重要指標の発見プロジェクト、②プロダクト間の連携強化によるビジネスインパクト算出プロジェクト に参画しました。

      • 引き続き不足領域ではありますが、他者との協働によってこの領域をカバーし、学習する機会が増えました。

プロダクトコーチングから1年が経ち、努力が実を結び、副部長への昇格とともに、複数のプロダクトのリードプロダクトマネージャーを任されることになりました。
強みであるユーザー理解での信頼獲得と、弱み(ビジネス理解)克服のための姿勢や取り組みを評価していただいた結果です。

まさに、プロダクトコーチングの中で横道さんにフォローアップいただいた部分が強く影響していると実感しています。

同じような悩みを抱えているあなたへ:ワークを通じて学んだこと

しかしながら、プロダクトコーチングだけが成長の道ではありません。自分なりに工夫して課題に向き合うことで、きっと新たな発見があるはずです。
ここでは、このプログラムの中で学んだ個人でも取り組めるアクションについてお話ししたいと思います。

マネージャーと課題について言語化する

1on1、日々の業務の話をするだけで終わっていませんか?私もそうでした。
自分の成長や活躍について、腰を据えてマネージャーとディスカッションできる機会を意識的に作ってみましょう。現状や注力するべき課題・テーマが浮き彫りになり、具体的なアクションを考えられるようになります。

ステークホルダーの解像度を上げる

プロダクトマネージャーは一人で仕事を完結できません。
物事を前に進めるために重要なステークホルダーを改めて把握し、その人の背後にあるミッションや価値観について書き出してみましょう。これが書けない場合、ユーザーと同じく、相手に対してもっと踏み込んで情報を取りに行く必要があります。
相手を知れば、コミュニケーションが変わり、リアクションが変わっていきます。その繰り返しによって一人では成し遂げられなかった事が前に進んでいきます。

自分自身の解像度を上げる

次は、自分自身の解像度も上げてみましょう。
フレームワークを通して自己認識を高めることで、強みの強化や、弱みをどうカバーするかを考える事ができます。
業務に絡めた具体的なアクションプランができれば、行動のハードルはぐっと下がるはずです。

忙しさに負けず、真剣に向き合う時間を作ることが第一歩です。その先にはきっと新たな道が開けると思います。

最後に

今回の研修を通じて感じたことは、自身や他者についての徹底的な言語化と思考を、素晴らしいコーチと共に行えることの価値は計り知れないということです。

「分からないことが分からない」状態から、丁寧な対話とインプットを経て、言語化を繰り返すうちに、現状がクリアになり「何をすればよいか考えられる」状態に変化していきます。
日々目まぐるしく社会も組織も変化する中で、繰り返し自己と他者の理解を深めて物事に向かっていく姿勢を獲得できたと思います。

アクションと評価・チューニングを繰り返すことで、見えるものや周囲からの視線が変化していくのは、まるでプロダクトづくりのプロセスを追体験しているようでした。

最後になりますが、このような貴重な機会を与えてくださった当時のマネージャーである広瀬さん、伴走してくださった横道さん、支えてくれたチームメンバー、そして理解を示してくれたステークホルダーの皆様に深く感謝いたします。

これからも「物事を前に進める」ために、誠実さと情熱を持って歩んでいきたいと思います。そして、「プロダクトリーダーシップ開発プログラム」で得た影響力を活用し、より良いサービスを届けられるよう励んでいきます。

最後に、マネーフォワードでは共に働く仲間を募集しています!
豊富な社内研修や学びの機会とともに、チャレンジングなポディションが多数オープンしています。
領域を決めかねる場合はオープンポジションなどもご用意しているので気軽にご応募いただけたら幸いです。

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