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そのケーキは苦い

深夜1:42、電話が鳴る。
私が夜更かししてるのを知っているのか、中々鳴り止まない。

半年振りの連絡だった。
電話をかけてくるのは珍しい。

出てすぐわかった。酔ってる。まぁいつもの事だけど。

「話したい事がある。」電話口、

どうやら数ヶ月前に事故にあって生死をさまよったらしい。

元気になってから連絡してくる所が、らしいよね。

かなりの大事故だったみたいで、ちょっと怪我の具合が想像できない。最近やっと歩けるようになって、あの綺麗な横顔は何針も縫ったらしい。

交通事故は嫌だ。

いつも音楽室でギターを弾いてくれてた先輩はいなくなってしまったし、あの大好きなお兄ちゃんは首から下が動かない。私の右足はケロイドになってる。

本当に怖い。

生きててくれてよかった。傷痕が想像できないけど、元気そうでよかった。

そう思った。

まぁ今から家に来いと言うぐらいだから、かなり元気だ。

電話に出る前から私の答えは決まっていた。

私は知っている。そのケーキは苦い。とても苦くその毒が回って後から苦しくなる。

どこへ行きたいのか、私達はずっと答えを出さない。





傷付く事が怖かった私は、1年位前こんな文章を残していた。


悲しい出来事は不意に起きるんだね。


やっぱり帰ればよかったのかな。傷付いた事は無かったことにはできなくて、後から塗り替える事はできない。上から優しさを流し込んでも溝は溝のままで、その時は平気なフリをしても結局は1人で泣いている。

油断してた。期待をしていた私のせい。
大丈夫だと思ってた。まさかこんなに悲しい気持ちになるなんて思ってなかった。

悪いのは私。

勝手に自分で傷ついて。求めなければ傷付くこともなかったのかな。喜びは倍になるのかな。


私も気持ちが欲しかった。

そう思ってしまう私の心は醜い。


フワフワ優しいカスタードのバースデーケーキ。最後の一口が悲しくて悲しくて喉につかえて飲み込めないよ。

でもさ、これって自分で作り出した感情なんだよね。


似てるのかな?
寂しさを知ってるあの子は優しかった。
よかったね。

顔が見れただけでもしあわせな事なのに。そこにいられただけでしあわせなのにね。
自分で自分を傷付けていた。

こうやって、悲しいってそう思える人がいるという事だけで、それはとてもしあわせな事なんだよ。

気が付いて。でもやっぱりあの時の悲しい気持ちは消えないけれど、今の気持ちを大切にしたいな。

嬉しそうだったから、もういいや。

明日はクリームパン買って帰ろう。







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