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クーラーのない部屋で働き続けた教員生活

オランダで続く猛暑日と、クーラーのない一般家庭

オランダはここのところ猛暑が続いていて、連日30℃を超えています。

「なんだ、たった30℃かよ。こちらは40℃なんて話ですよ」

と、日本で暮らす人々からは言われてしまいそうですが、
オランダの一般家庭にはクーラーはありません

そもそもこの国の緯度は、日本の北海道よりも高い位置にあります。

そのオランダで連日続く猛暑...

私が住む地域はビーチにも近く、そのビーチはオランダでも観光名所として知られています。
それもあってか、ウイルスの影響でこんな時期でもありながら多くの人々がビーチを訪れることになり、1.5mのソーシャルディスタンスが保てないことから大きな問題となっています。

昨日あたり、日中は33℃にもなりましたがクーラーがない...
そんな日々の中、思い出したのは教員生活の暑い夏でした。

30℃を超えたことが異常だと言われた小学生時代

「30℃...30℃です。温度計は30℃を記録しています」

私が小学生の頃、テレビの向こう側で女性のお天気キャスターがそう言っていたことを、何故か鮮明に覚えています。

「30℃という気温は異常なものなのだ」

当時、小学生だった私はそう思っていました。
そして、そこから何故地球が熱くなっているのかという、
「地球温暖化」というトピックに興味を持ち、調べ学習を行ったことを覚えています。

日本でもここ数年、異常な気温が続き「熱中症」という病が多くの人々の命を奪ってきました。それに伴い「熱中症対策研修」というものが業務に追加された学校も少なくありません。そして、徐々に全国の学校にクーラーが設置されています。

クーラーのない部屋で働く教職員の方が多い

しかし、多くの学校現場において
クーラーが設置されていない教職員の部屋の方が多い
ということはあまり知られていません。

私は約7年間、学校現場で働いてきましたが、その半分の時間はクーラーのない部屋で過ごしてきました。

朝7時頃に出勤した時の部屋の気温が、すでに30℃を指している。
そんなことは当たり前の話です。

その部屋でパソコンのスイッチを入れ、プリンターのスイッチを入れます。
これで、部屋をさらに暑くする準備は完璧です。←

「学校の教室には全部クーラーがあるのでは?」という保護者の想像

保護者の多くは、教職員が過ごす部屋にはクーラーが必ずあると思っています。それは、彼らが訪れる部屋/教室にはクーラーがあるからです。
どういうことか。

保護者が学校に何らかの用事があり、学校を訪れる時の行先はどこかを考えてみましょう。

・職員室(クーラーがあることの方が多い)
・事務室(クーラーがあることの方が多い)
・面談室(クーラーがあることの方が多い)
・校長室(クーラーがあることの方が多い)

恐らく、こんなところでしょうか。

職員室とは教頭首席担任を持つ教職員が常駐のデスクを持つ場所です。
そして、実際のところ高等学校には「担任を持たない教員」の方が多く存在しています。

一般的に、80名〜100名程度の教職員で構成されている高等学校において、担任の数は、

1学年8クラス×3学年=24名
※学年のクラス数は学校によります

です。
つまり、60名〜80名程度の教職員は職員室にデスクがありません。
そして、その多くはクーラーのない部屋にデスクを持っています。
(もちろん学校にもよります)

クーラーのない部屋でパソコンに向かい、8時間働くことが想像できるか?

日本で暮らし、この猛暑の中、
「クーラーのない部屋で仕事をする」
ということを想像することは難しいかもしれません。

むしろ、今オランダで暮らす中で「クーラーがない」という生活に直面している方々にこそ、
「クーラーがない中で仕事をすること」
をもっと身近に感じてもらえるのかもしれません。

教員時代、冷凍庫で冷やした保冷剤をタオルでくるみ、それを首に巻き、パソコンに向かって仕事をしていました。
パソコンからの放熱にも耐えながら、資料を読み込んだり、英文読解をしたり、汗を額に流しながら仕事をしていた日々を鮮明に覚えています。

生徒が過ごす教室にはクーラーがあるため、
「クーラーがある部屋(50分)」→「クーラーのない部屋(50分)」
という繰り返しを何度もすることで体調を壊す教職員も少なくありません。
その上、夕方以降にクーラーなしの部屋で残業します。

この暑い夏、日本の教職員はそうやって働いています。

決して忘れたくない、日本で働く教職員の夏の働き方

自分自身が熱中症にならないよう気をつけながら、短い夏休みの中、毎日30℃を超える職場で8時間以上働いています。
私はそうやって働く教職員のことを、教師を辞めた今でも忘れたくない。
と思っています。

教室にやっと設置されたプロジェクターも大切ですが、
教職員が汗を流しながら、経口補水液を何本も空にしながら働く環境で、
どうやって良い教育が生まれるのかを知りたいと思っています。

「教育」の"コンテンツ"や"環境設備"をあまりにも軽視しすぎている日本の教育

そもそも、
教室にプロジェクターが設置されることも、
学校にWiFiが完備されることも、
教職員が働き方に関わらず一人一台のPCを貸与されることも、
在籍生徒数に応じて課題が行えるPCやタブレットが用意されることも、
教室にクーラーが設置されることも、
教職員が季節問わず快適に働ける環境を作り出すことも、

日本において「教育」というものがもっと大切にされるのであれば、
すぐに予算が確保され、適切になされるべきものだ、と私は思います。

しかし、学校に足を運んでみてください。
上に書かれたほとんどが、今の日本の学校にはありません。

もちろん生徒の命は大切です。
しかし、彼らを守り、育てる教職員の命は?働き方は?

夏休みが短くなった、猛暑が続く日本の夏。
私が心配しているのは、子どもたちだけではありません。
教育現場で働く教職員のことも気がかりです。

日本は「教育の在り方」を考えるために立ち止まり、
その問いに対して真剣に向き合わなければいけない。

そんな風に思っているのは、私だけでしょうか。
22時のオランダ。
32℃を指す温度計を見ながら、扇風機の風を浴びながらそんなことを思うのでした。


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