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イタリア、ローマ🇮🇹と社会の格差

さて、体調絶不調の義則と、断続的な腹痛を抱えた私、絶好調な娘を乗せた夜行列車は(笑)、ウィーンを19時半前に出発し、翌朝11時頃にローマ、テルミニ駅に到着しました。

何と12時間ストレートで眠ったという義則の体調は無事回復し(夜行列車でよくストレートで寝れるな)、私の腹痛もほんの少しずつ快方へと向かっていました。

ウィーンとはうってかわって到着時から快晴のローマ。今日はローマのホテルに宿泊です。ホテルと言っても、レセプションはおらず、booking.comのチャットで施設の担当者とやりとりしながら、入室のためのロック解除用のコードをもらいました。いわゆる最初から最後まで無人でのチェックイン/チェックアウトの宿泊施設です。

交渉して早めのチェックインへ

ローマ、テルミニ駅(夜行列車到着ホームはホームの超端っこ…)

ひとまずテルミニ(中央駅)を降りて、荷物を預けるためのロッカーを探したところ、ロッカー前の長蛇の列に早めの絶望。笑

…ということで、一般的なチェックインは14時〜16時ですが、できれば早めにチェックインしたいという旨を担当者にメッセージをしたところ、部屋の清掃は早めに終わるからそのままチェックインしてもいいよ。とのこと。

この日は市内を比較的たくさん移動する予定だったので、駅で1日乗車券を購入した後、バックパックを背負い、テルミニ(中央駅)から宿泊施設へと地下鉄で向かうことにしました。

狙われる母の肩掛けバッグ

後で調べて再確認したことですが、ローマはスリの被害がとてつもなく多い都市なのだそうです。考えてみれば、昔家族でローマを旅行した時も母親のリュックサックが狙われ、子どもながらに「お母さん、カバン!!」と叫んで難を逃れたことがありました。

特に地下鉄(メトロ)でのスリの発生率が非常に高いらしく、ローマでは頻繁にニュースになっていると後に聞きました。そして、例外なく私たちにも魔の手が忍び寄ったのです。

テルミニ(中央駅)から地下鉄に乗り込むと、1人の女性がそこまで混んでいない車内で母親の隣にピタっとくっつきました。不自然なくらい真横に立っている女性に、母親は違和感を感じ、肩掛けバッグを前で抱きしめたところ、その女性は何事もなかったかのように去っていったのでした。

「えー?!こんな大胆なのー!?まじかー!!!」

と思った私。オランダでは人と接触することやむやみやたらと人に近づくことが忌み嫌われるので、あんなにあからさまに接近してくる女性のあり様にとても驚いたのでした。

チェックイン、そしてコロッセオへ

無事にセルフチェックインを済ませ、地下鉄の一件から室内の荷物にループ状の鍵をかけることにしました。バックパック一つひとつのジッパーには既に南京錠をつけていましたが、バックパックすべてをまとめてループ状の鍵をかけ、その鍵を小銭入れの中に。貴重品を肩掛けカバンに入れて、身軽になった状態でローマ観光へと出かけたのでした。

話は戻りますが、ウィーンからローマへ向かう車内、ふと「コロッセオって当日入場できるのかな?!」とふと思った私は、コロッセオの公式サイトを訪れました。すると、今日のチケットが買えない!!「なんてこった!やってしまった!」と思った私は、直接チケットセンターに電話をして、今日のチケットは既に完売なのかを確認しました。すると、

「今日はコロッセオの入場は無料の日です」

と言われたのでした。何と、年に数回の「無料の日」に当たっていたのです。あらら、ラッキ〜。ということで、実際にコロッセオに向かってみると、人、人、人!(無料だもん、そりゃそうだ)
チケットを発券してもらう列で30〜45分程度並ぶと、無料で発券してもらえるカウンターへ。

この日のローマはとても暑かったのですが、路上では(恐らく違法に)水のボトルを販売している人たちがたくさんいました。他にもスマホのチャージャー(充電器)を歩きながら売っている人たちもいました。観光客に気安く声をかけてくる彼らですが、一度取り締まりの警察官(?)が現れるとネズミのように逃げまどっていました(しかも爆走で)。恐らくそれ自体は捕まる行為なのでしょう。

また、コロッセオの発券の列に近づく物乞いのご老人女性も、取り締まりの警察官(?)に「ここでやるな!」と叱られ、何かを叫びながらその場所から追いやられていました。華やかな観光地という場所で慈悲を求める人たちがいるのです。

オランダにもホームレスと呼ばれるような人たちはいますが(実際に本当に家がないのかはわかりません)、その数は圧倒的にローマの方が多かったです。美しいローマという都市の裏側に、社会に蔓延る格差を見たような気がしました。

ゴミだらけの裏道も多かったです

世界遺産、コロッセオ

ということで、快晴の中コロッセオを観光しました!

以前にも一度訪れたことがあるのですが、それは幼少期の頃。大人になってから見るコロッセオはまた違う味わいでした。

地下鉄で移動…そして財布をすられる!

さて、「楽しかったね〜」とコロッセオを出発し、次は地下鉄でスペイン広場とトレビの泉に移動することに。その際、財布(小銭入れ)をすられたのでした…

それは、テルミニ(中央駅)を経由して2つ目の地下鉄に乗り換えた時のこと。車内に乗り込んだ義則がドア付近でマスクをした女性に話しかけられたのでした。女性は何やら彼に道を尋ねているようでした。激混みの車内で、私の注意は説明をしている義則に。何か困ったことがあれば私が助けようと思って、注視してしまっていたのです。

その際、私のカバンから小銭入れがスられました…泣 そもそも、現金を多く持ち歩く習慣はないので、被害額としては少ないですが(€100以下)、マリメッコの小銭入れ返せ〜!!!!ぐおらぁぁ!!怒

幸い、クレジットカード類が入ったパスケースは取られず(これを取られていたら旅どころの話ではなくなる)、見事に小銭入れ(現金)だけ取られました。そして、後々わかったことですが、これがプロのスリ集団の手口なのだそうです…

財布がないことに気付いたのはスペイン広場の駅で降り、カバンの中を確認した時。さっきまであった小銭入れがない!!「あぁ…さっきの地下鉄だ…」と意気消沈。財布を盗った後、ご丁寧にチャックは閉められていて、発見を遅らせるための工作だということに気がつきました。

その後、色々調べてみると、アジア人だけを狙うスリがいるのだとか。これからローマへの旅行を考えておられる方、面倒でも財布とカバンをチェーンで繋いでおくことを超オススメします。Youtubeで"rome pocketpicking"と調べたら、たくさんの動画が出てきます。ちなみに、ローマだけじゃなくてパリなどでも多く出てくるので、パリやイタリアは要注意です。ちなみに、混雑するテルミニ(中央駅)から乗り込んだ地下鉄で、私たちアジア人はほぼ100%狙われているように感じました。異様に近づいてくる人たちがたくさんいました。本当にお気を付けください!!

財布を失い「あぁ、情けない…」と、オランダでの生活で平和ボケしてしまっていた自分を責める私。それでも家族は「切りつけられた訳でもないし、お金だけで良かった!大丈夫大丈夫!」と励ましてくれて。泣

完全傷心モードのまま、スペイン広場、トレビの泉へ。

にしても、人多すぎ
綺麗に撮影する気のない私の心の表れ。笑

鍵が小銭入れに…カバンが開けられない…

…ということで、人、人、人!のローマの街は少々疲れました…何をするにも人混みを通り抜ける必要がある上、気温も高く、私は財布を失い、「もうゆっくりしたい…」というモードな私。笑

ひとまず部屋に戻って、あとは美味しいイタリアンを食べるのだ!!!と気を取り直しました。←単純

その後、部屋に戻ってクローゼットを開けると、荷物がループ状の鍵につながっている…あぁああぁぁあぁぁあぁぁあ!!!!

そうだった…カバンに鍵をかけて出かけて、しかもその鍵…小銭入れの中に入れたんだったあぁあぁあぁぁあぁぁ….

…ということで、ホテルのあらゆるドアを開け(やめぃ)、どうにかニッパーなるものはないかと探すも見つからず(そりゃそうやろ)、またまた試練に向き合う私。笑 
もちろん、その辺でホームセンターを探してニッパーを探してこれば良いのですが、1回きりしか使わんニッパーなんて正直いらんのです。重いわ!笑

「よし、玄関で隣のマンションに帰ってくる人を捕まえる!!」

と建物を出て、待つこと3分。隣のマンションに車で帰宅する住人ご夫婦(?)を発見!!即座に近づき、話しかけてみたのでした。

"Hi, excuse me to ask this…but do you live here?"
(こんなこと聞いてごめんなさい…ここに住んでいる方ですか?)

めっちゃ怪訝そうな顔をされ(そりゃそうやわ)、"yes?"との返答。笑

"Good…I'm sorry to ask this…but do you have this?"
(そうですか…こんなこと聞いてすみません、これ持っていますか?)

と言ってスマホで見せた画像がこちら。

私の心を救うであろう、ニッパー

"…yes?"と答えた男性は既に笑っていました。苦笑
確かに、急に「これ持ってる?」ってニッパーの画像見せてくる奴、変やろ。爆

"great! I've just got my wallet stolen in a metro today…and I left a little key in it which was for a little wire lock for all my luggages. I mean, I went out as the key on my backpacks around…now I cannot open the backpacks without the key lost. Could you kindly help me cut the key with this…? I'm awfully sorry to ask this!!!!"
(よかった!実は今日地下鉄で財布を盗まれてしまって…それでその財布に荷物をくくっていたワイヤーロックの鍵が入っていたんです。つまり、荷物に鍵をしたまま出かけてしまった訳で…で、鍵を失くしてしまったからバックパックが開けなくて。もし良かったら、このニッパーを貸してくれませんか?こんなことお願いして本当にすみません!!)

ってなことを伝えました。

そうすると、一瞬で2人の表情が変わり…
もう完全に"I'm sorry."(御愁傷様)的な表情に。苦笑

すると男性が、
「それは散々だったね、家にあるよニッパー。車を停めて取ってくるから、ここで待ってて!」
と言ってくれたのです。なんとありがたい。

それから待つこと2分程度。女性の方がいくつかの種類のニッパーを持ってホテルの前に来てくれました。

「これでいけるかな…中に入っても良いの?サイズが合うかどうか確認しましょう」
と言ってくれて、一緒に室内へ入りました。義則がお礼を言って、ワイヤーロックの切断に取り掛かりますが、このワイヤーロック安物なのになかなか切れません。笑

女性が「もう少し大きめのものを探してくるわね、ちょっと待ってて」と言って戻りました。その間も義則はワイヤーを切り続けてくれていました。

しばらくして、女性と男性が一緒に戻ってきてくれたのですが、その手にはさらに大きなニッパーが。男性が「これを試してみよう。疲れたでしょう。代わるよ!」と言って、大きめのニッパーでガンガンワイヤーを切ってくれたのでした。そしてやっと切断!
わーよかった〜!!!そしてその瞬間、男性が、

"welcome to Rome!"
と笑ってくれたのでした。笑

「せっかくローマに旅行に来てくれたのに、嫌な思いをさせてごめんなさいね。特にローマではスリがとても大きな社会問題になっていて…テレビでもかなり報道されているのよ。片方がマスクをしていて話しかける役をして、もう片方が別の人間の財布を狙ったり…組織的にやっていて、警察もなかなか捕まえられないそうなの」

それを聞いた瞬間、「いや、まさにそれやん!」となりました。爆

「ローマでしばらく過ごす予定なの?不安なことはない?財布が取られて困っていない?私の電話番号を教えましょうか?困ったことがあればいつでも連絡してくれて構わないから」

そんな優しい言葉をかけてくれた女性の優しさに感謝しながら、

「いえ、明日にはローマを出るんです。財布は小銭入れで被害は現金だけだったので良かったです。親切にありがとうございます」

と伝えたところ、「そうなのね、それなら良かった」と言ってくれました。「残りの旅も楽しんでね、とにかく鍵が切れて良かった!」と言ってくれた彼らにお礼を伝え、彼らはニッパーを抱えて帰って行ったのでした…

美味しいイタリアンを食べて、元気だそう!

ということで、無事ワイヤーロックを切断することができ、カバンも開きました。もうこれは美味しいものでも食べて元気を出すしかない!と判断した私。←やっぱり単純

食べることに必死すぎて、この写真しかない。爆

滞在先から徒歩で行けるGoogleマップでもレビューの良いイタリアンのお店へ出かけることにしました。マルゲリータとカルボナーラが大好物の娘は、本場のイタリアンに感動していました。そして、私はオランダに比べて物価が安く美味しいものが食べられることに感動。笑

ジェラートうまーい!

帰り際には、これまたレビューを参考に徒歩圏内のジェラート屋さんへ。これがとびきり美味しかったです!!

「イタリアの人は悪いなぁ」と言う娘に

さて、財布を取られて私は相当ショックを受けていましたが、同時に娘もとてもショックを受けていました。人の財布を盗る人がいるという事実をどうも飲み込めなかったようです。

「イタリア、ちょっと嫌やな。怖い。イタリアの人、悪い…」

そう言う娘に、私と義則は、起きた事象とその国の人たちとの間に強い結びつきはないということを伝えました。確かに私たちはイタリア、ローマに来て財布をすられました。その行為は許されるものではありません。人の物を勝手に盗るという行為は犯罪です。でも、それが「イタリア人」すべてを意味するかと言えばそうではないのです。

「お母さんの財布を盗った人もイタリアの人かもしれないけれど、ニッパーを貸してくれて、鍵を開けるように協力してくれて、僕たち家族の心配をして電話番号を教えようかと言ってくれた人たちもイタリアの人やったよ。だから、イタリアの人が皆んな悪い訳じゃない。どこの国にも、どんな場所にも悪い人もいるし、良い人もいる。それはオランダや日本にだって同じこと。次からこういうことが起きないように気を付けて旅行しよう。それできっと大丈夫!」

義則はそう言って、娘の中にある蟠りを払拭しようと話してくれました。すると、娘は、

「次から地下鉄に乗ったら、ママのカバンに抱きついとく!そうやったらカバンの中の物は取れんもんね!」

と、意気込んで教えてくれたのでした。笑

人の物を盗んで生きる人たちのことを考える

私の財布を盗んだ人を心から許すことは難しいかもしれませんが、きっとその人にもそれをしなければいけない心理状態があるのでしょう。私は神でも菩薩でもないので、自分を傷つける人を愛するという境地までは至れませんが(笑)、社会の格差が広がるということは、つまりこういう社会を生み出すということなのだと改めて考えました。

自分には無関係だと社会の問題を放置していると、その刃はこのようにして自分に向かってくるのだということです。結局、無関係に見える問題はすべてつながっていて、私にとって「関係のあること」になっていく。そんなことを考えました。

また、娘には「自分たちがされて嫌なことがあったとしても、それをリベンジとして誰かに返さないこと」の大切さを話しました。私は自分の財布が故意に盗まれたとしても、誰かの財布を奪うようなことはしません。そういった負の行為は必ず社会で連鎖するのです。

その後訪れたローマ以外の場所でも、イタリアには格差が見え隠れしました。華やかに見える観光資源や社会の裏側で、その隙間に落ちていく人たちのことを考えました。旅は色んな景色を見せてくれて、同時に様々なことを考えさせてくれます。今回の事件も、きっと娘にとっては様々なことを考える機会になったはずです。

美味しいイタリアンとジェラートを食べた後、ベッドで眠りにつこうとしたら、やっぱり断続的な腹痛に襲われ(笑)、これは身体的なことなのか、今日の事件のダメージがでかいからなのか…そんなことを考えていたら、義則が頭をよしよしと撫でてくれました。笑

傷心モードの私を支えてくれるのはいつも義則さんです。

「あぁ、この腹痛は何原因なんだ…」そんなことを考えているうちに眠りにつくことができたのは良かったのかもしれません。笑

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