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室田尚子のレビュー/Opera編Vol.2(2021)

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2021年に観た舞台上演のオペラのレビューをまとめています。
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記事一覧

ふたつのカルメン〜【Opera】オペラ彩第38回定期公演『カルメン』、ムジカルダ『カル…

 2021年はビゼーの『カルメン』をたくさん聴いた年だったが、年末に2つの舞台上演を鑑賞。ひ…

室田尚子
2年前
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まるでヴェリズモのような生々しい「ドラマ」〜【Opera】TRAGIC TRILOGY Ⅰ 『椿姫』

 Hakuju HallでスタートしたTRACIG TRILOGYは田尾下哲演出、ソプラノ・青木エマ、テノール・…

室田尚子
2年前
8

蝶々さんの閉ざされた生〜【Opera】新国立劇場『蝶々夫人』

 栗山民也演出の『蝶々夫人』は、2005年の初演以来6回の再演を重ねてきた新国立劇場人気のレ…

室田尚子
2年前
9

時代を挑発する芸術〜【Opera】新国立劇場『ニュルンベルクのマイスタージンガー』と…

 私は11月24日と25日に連続して、2つのオペラを観た。図らずもその両方ともが「時代の中でオ…

室田尚子
2年前
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音楽家発信のオペラの可能性を切り拓く〜【Opera】DOTオペラ『アイーダ』

 ソプラノ百々あずささんのD、コレペティートル小埜寺美樹さんのO、メゾ・ソプラノ鳥木弥生さ…

室田尚子
2年前
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歌の饗宴を堪能する〜【Opera】NISSAY OPERA 2021『カプレーティとモンテッキ』

 日生劇場で毎年続いているNISSAY OPERAシリーズ。今年はベッリーニの『カプレーティとモンテ…

室田尚子
2年前
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ヴェリズモの華〜【Opera】関西歌劇団『アドリアーナ・ルクヴルール』

 関西歌劇団第101回定期公演が1年の延期を経て、吹田市文化会館メイシアターで開催された。チレアの代表作『アドリアーナ・ルクヴルール』は、2003年度文化庁芸術祭優秀賞を受賞したプロダクションである。演出は、吹田市在住の井原広樹。指揮は関西歌劇団初登場となる栗辻聡。私が聴いたのはダブルキャストの1日目。  まず、アントニオ・マストゥロマッティの装置が素晴らしい。それほど大がかりではないものの豪華さがあり、センスもよく洒落ている。第1幕はコメディ・フランセーズの舞台裏だが、照

ある女の魂の解放の物語〜【Opera】東京二期会『ルル』

 東京二期会が18年ぶりに上演したベルク『ルル』。18年前は日生劇場で演出は佐藤信、フリード…

室田尚子
2年前
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圧倒的なモーツァルトの音楽の力〜【Opera】仙台オペラ協会第45回記念公演『魔笛』

 仙台オペラ協会は1976年発足の老舗団体で、今回は45回目の記念公演に『魔笛』が上演された(…

室田尚子
2年前
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僕たちに必要なのは「神」ではなく「天使」だ〜【Opera】新国立劇場『Super Angels』

 新国立劇場オペラ芸術監督の大野和士の総合プロデュースのもと、島田雅彦の台本、渋谷慶一郎…

室田尚子
2年前
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関西流サービス精神の結実〜【Opera】佐渡裕芸術監督プロデュースオペラ2021『メリー…

 兵庫県立芸術文化センターで毎年行われている佐渡裕芸術監督プロデュースオペラ。今年は、20…

室田尚子
2年前
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チャーミングなカップル誕生〜【Opera】調布国際音楽祭『電話』

 メノッティが台本・作曲した1幕もののオペラ『電話』は1947年2月にニューヨークのヘックシ…

室田尚子
2年前
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抱腹絶倒の和風ロッシーニ〜Vivid Opera Tokyo第6回公演『アルジェのイタリア女』

舞台を日本、しかも昭和!「アルジェ」は「亜流滋ェ」というヤクザの組!という奇想天外抱腹絶…

室田尚子
2年前
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「美」を受け継ぐということ〜【Opera】藤原歌劇団『蝶々夫人』

 粟國安彦演出の『蝶々夫人』は、1984年の初演以来藤原歌劇団がずっと上演し続けている伝統のプロダクション。何よりも目を惹くのは、舞台装置など美術の美しさである。手がけた川口直次によると、初演の2年後に、初演時のイメージは受け継ぎつつ移動公演に対応できるように作り直したものが35年以上の長きにわたって(多少のバージョンアップは施されつつ)用いられているということだ。舞台上には三重の透彫欄間、背景には長崎の港の形式が南蛮絵風の扇面に描かれる。1幕は春爛漫、桜の木々の植えられた蝶