「美」を受け継ぐということ〜【Opera】藤原歌劇団『蝶々夫人』
粟國安彦演出の『蝶々夫人』は、1984年の初演以来藤原歌劇団がずっと上演し続けている伝統のプロダクション。何よりも目を惹くのは、舞台装置など美術の美しさである。手がけた川口直次によると、初演の2年後に、初演時のイメージは受け継ぎつつ移動公演に対応できるように作り直したものが35年以上の長きにわたって(多少のバージョンアップは施されつつ)用いられているということだ。舞台上には三重の透彫欄間、背景には長崎の港の形式が南蛮絵風の扇面に描かれる。1幕は春爛漫、桜の木々の植えられた蝶