ブロックチェーンによる非中央集権化や分散化が進んだ先が、1人ひとりに優しい世界であってほしい
ブロックチェーン界隈では、非中央集権とか分散型という言葉がよく使われますが、このあたりピンとくるでしょうか?
僕自身、ブロックチェーン技術とはかれこれ4年以上の付き合いがありますが、あまりしっくりきていません。
ブロックチェーンが誕生した時のこと、多くの技術者やビジネスサイドの人の考え方などを知るにつけて、この技術が進歩し、社会実装が進んだ世界が一人ひとりに優しいものであってほしいと思うようになりました。
否定からは真のアイデンティティは生まれない。
そもそも、ブロックチェーン界隈ではその特徴を表現するために、従来型の仕組みを中央集権的というのに対して、非中央集権的(Decentralized)ということがよくあります。このこと自体は特徴を捉える上で分かりやすいけど、いまいちピンと来ませんでした。
というのも、非中央集権を言い直すと、「今までは中央集権型の仕組みだったけど、これからはそうでない仕組みでいこう!」という意味になるし、結局何を目指すのか曖昧になっていると思ったからです。
自己紹介で「私はあなたではありません!」と言われても「は!?」となるようなそんな気持ち。
バシッとその本質を表現してくれればイメージが湧くのですが、「何かではない何か」というのはいまいち釈然としない気持ちが残ってしまいます。言い換えるならアイデンティティが曖昧な感じでしょうか。
分散型/Distributed
ブロックチェーン技術について学んでいけば自然と分散型という言葉に出会います。英語ならDistributedとかでしょうか。実際、ブロックチェーン技術を含むより広い概念として分散台帳技術(Distributed Ledger Technology/DLT)というものがあるし、ブロックチェーンを生かしたアプリケーションを分散型アプリ(DApp)ということもあります。
実際そうなのです。
ブロックチェーン技術はもともとPeer-to-Peer(P2P)技術を前提として誕生した技術です。P2P技術はマシンとマシンを同列につないでネットワークを形成し、その上で様々なデータをやりとりするための技術です。
従来型のWebシステムの多くはデータをリクエストして受け取る側を「クライアント」、データを管理し提供する側を「サーバー」として役割分担して機能しています。しかし、P2P技術では全てのマシンがサーバーでありクライアントである構造がとられています。言い換えるなら、役割分担がされていない仕組みです。
P2P技術の下では、特定のサーバーに依存しないという意味で、責任も役割も分散しています。ブロックチェーンとはそもそもそんなネットワーク上でも正しい情報をみんなが参照できるようにと発明されたものです。
P2P技術は人間社会をモチーフに作られた
ブロックチェーンの前提とも言えるP2P技術ですが、これは人間社会が形作られる様子をモチーフにして開発されました。
人間は1人ひとりが自由に振る舞い、他者とつながって関係を作っていく。それぞれのそういった行動が全体として社会というネットワークを形成していくわけです。
1人ひとりの個人は社会全体から見れば部分になるでしょう。しかし、その部分がたくさん集まり相互作用していくことで、全体としてみたときにただの部分の合計以上の構造を作り出す。
P2P技術はこんな人間社会のダイナミクスを機械を使って再現したものだと言ってもいいでしょう。
福沢諭吉が「天は人の上に人を造らず 人の下に人を造らず」と言ったり、フランス人権宣言でも「人は、自由かつ権利において平等なものとして出生し、かつ生存する」と示しています。人間が作る社会において、1人ひとりは平等でありフラットな関係であると昔から理想が掲げられてきました。
P2P技術はそんな考え方が根っこにある技術なのかなと勝手に思っています。
誰が為の分散化か?
ブロックチェーン技術でいうところの非中央集権や分散化という言葉はその根っこに、特定の中心が存在しないという性質を持っています。システムに特化して言えば、単一障害点がないということです。
ブロックチェーンがこのような性質を持っているのは当然のことです。なぜなら、すでに紹介した通り人間社会をモチーフにしたP2P技術が前提となっており、人間社会は基本的に特定の中心など存在しないからです。
このように考えると、対等に権利を持つ「部分」が相互に関係を持ちながら社会を維持している、このような仕組みにこそ大きな意義があると思います。
全ての部分に等しく注意が払われ権利を持つべきであるとする考え方、言い換えるなら、1人ひとりが主役になれるそんな思想がブロックチェーンの根底に流れている気がしています。
誰が為の分散なのか。それは紛れもなく社会やネットワークを構成する1人ひとりと言えるでしょう。これを言葉にするなら、「多中心性」を意味するPolycentricやMulticentricといってもいいかもしれませんね。
一人ひとりに光を当てる
最近はSNSや動画配信サイトが普及し、個人が活躍する時代になってきました。僕もそうでしたがフリーランスとして活躍する人も年々増えています。
個の時代と呼ばれる現代、みんなが主役、それ故に多様性や複雑性が増しており、それに対応しなければいけなくなってきました。
ブロックチェーンの「多中心性」の仕組みは世界の隅々まで巻き込んでしなやかな社会を作っていくでしょう。
今まで世界の隅っこで震えるしかできなかった人々にきめ細かく救いの手が届く。より多くの人に対して社会や経済に参加する機会が与えられる。ブロックチェーンはこんなことを実現してくれる、優しい技術になる可能性を秘めている。
多様化が進む現代社会。多種多様な主義主張が入り混じる世界でどのように国や世界の行先を決めるのかこれまでになく難しくなっています。そんな世界にあって、ブロックチェーンという技術が人類史にどのような物語を与えていくのか、楽しみですね。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?