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公立学校(小学校・中学校・高校)に営業する方法 教育系ソフトの場合

EdTech!DX!GIGAスクール!と教育業界もデジタル化されつつあります。自社でアプリやソフトのある方、SaaSの方は学校を売り先として意識することでしょう。

「toBで売ってるけど、少しカスタマイズすれば学校でも売れるんじゃない?」

そう思っている方のため、新規市場として学校を狙う道しるべをここに残します。ここにいう学校とは小学校・中学校・高校です。

学校という市場

そもそも小学校・中学校・高校は何校あって何人いるのでしょうか?

■学校数 計35,327校(うち私立2,327校)
小学校:20,095校(うち私立231校)
中学校:10,325校(うち私立775校)
高校:4,907校(うち私立1,321校)

■児童生徒数 計13,062,239人
小学校:6,448,658人
中学校:3,333,334人
高校:3,280,247人

文部科学統計要覧(平成30年版)より。かなりの人数です。この市場を狙いたくなる気持ちは痛いほど分かります。児童生徒1人あたり1万円の販売価格が狙える商材なら市場規模は1,306億円です。中小企業には魅力的。

私立学校への営業は企業と類似

私立学校は基本的に一校ずつリードを獲得し提案し受注を取らなくてはいけません。受注までのプロセスは企業と同じです。

一つ特徴は分散していること。駅から離れている学校も多く、バスが1時間に1本〜2本という地域も普通にあります。電車やバスで移動するには非効率です。

公立学校への営業は特殊

公立学校を営業する上で押さえておきたいのは以下の特徴です。

・教育委員会
・予算
・入札
・実証研究

教育委員会

自治体(都道府県・市区町村)ごとに教育委員会があります。基本的に公立学校にものを売るには教育委員会を通すことになります。

学校単位で少額の予算もありますが、それは消耗品費に近いもので大きな受注を狙うことは難しいです。

商材により担当者や担当部署が違います。教育ソフトの場合は「ICT教育推進担当」の方が管轄されています。一定以上の規模になると「ICT教育推進課」があります。

予算

国会で予算委員会が開かれたという報道は毎年ありますよね。公立学校を運営する都道府県や市区町村も同じです。

各担当部署が年度の予算を作成し議会で審議。承認がおりたらお金が使えます。そのため予算案を作成する前に関係を築く必要があります。

時期は自治体によりますが、概ね秋頃と覚えておけばいいでしょう。

入札

これは学校に限りませんが、役所系は概ね入札で業者が決まります。

指定の仕様で最も安く提案した者が受注するのです。シンプルなお話です。

入札に参加するためには資格が必要になります。この資格取得を自社で全てやっているとかなり大変です。資格を持つ他者と組む方法もあります。

実証研究

予算案の根拠として必要です。絶対必要とは言い切れませんが、このプロセスをパスするのは新規事業者にとって大変です。

実証研究の結果が予算案に入るか否か・予算が承認されるか否かに影響します。実証研究という名の無料トライアルが繰り広げられます。

タダで提供するから損と考えるか大きな案件の受注プロセスと考えるか。聞いただけで誰もが効能のわかるプロダクトになればこのプロセスをショートカットできるかも。

ステークホルダー

このようなプロセスにはどのような人たちが関わってくるのでしょうか。

学校

校長:実証研究の受け入れ・継続・中止を判断する人です。

教頭/副校長:実証研究に入ると実務の取り仕切り・連絡窓口になることがあります。

◯◯主任:各校で先生たちが色々な担当を持っています。教育系ソフトの場合はICT主任・教務主任の先生たちと協働します。

先生方:実証研究校の先生方が使ってくれることが大切です。直接のコミュニケーションは少ないですが絶対にフォローが必要です。

教育委員会

教育長:すごく影響度のある場合と営業に全く関係ない場合があります。特別思いのある人・小規模自治体は影響度高めでしょうか。

指導主事:基本この人に営業掛けます。課長クラスが実証研究や予算化のキーパーソンです。先生が異動で赴任していることが多め。

児童生徒・保護者

あまり直接関わることはありません。ただ印象が良いと確実に成果は出やすくなります。

販売会社・ベンダー

代表的な企業は内田洋行。それ以外にも知る人ぞ知る企業が各地にあります。営業が先生と密にコミュニケーションを取りニーズを把握し、それにあった商品を販売します。

教育系に限らず販売会社は粗利を目標にしていることが多いです。彼らに儲かると思わせたら一生懸命売ってくれます。

ソフトウェア大手

日系の有名企業でいうとNEC・富士通・NTTなど。外資はマイクロソフト。GoogleやAppleも近年シェアが上がっています。その他にもTVCMや新幹線の広告でおなじみSkyも教育系のキープレイヤーです。

それぞれ自社商品を販売するのに他社と組みます。自社で持たない機材・ソフト・教材を組み込んでセット販売するのです。

営業の流れ

リード獲得

自治体のホームページに問い合わせがおすすめです。自身の経験ですが問い合わせ送信から20%返事が来てうち4分の3はアポイントが取れました。企業に同じことをすると5%がいいところだと思います。

他には展示会があります。リードアンドエグジビションが運営する「教育ITソリューションEXPO」が最大。販売会社・教科書会社・ソフトウェア会社が開催するものもあります。

また販売会社と関係を構築すれば自然と各自治体に紹介してくれます。

商談

商談に業界ならではの特徴はありません。他業界と準備・本番・アフターフォローの流れは同じです。

初期は実証研究の獲得のための提案になります。提案先となる教育委員会の指導主事が興味を持ってくださり、かつ実験校が決まると開始です。指導主事が候補校の校長先生とコミュニケーションを取ります。

実証研究

まずは導入です。ソフトウェアの場合は新しいパソコンやタブレットの導入や定期メンテナンスの時にインストールされることが多いです。

作業はベンダーさんが行うのが主流。端末やネットワークの専門の方々なのでお任せしたほうが安心です。

学校だと端末数が多く1台ずつ設定するのは大変。そのため専用ソフトを使って一括インストールします。

このとき自社側で一括設定しやすくすることが重要でした。

次は研修です。学校にソフトウェアがインストールされると先生方に説明します。放課後に先生が集まり会議する時間があるのでそこで説明やデモをします。

その後は継続的に運用支援します。教育委員会・学校の主任先生と継続的にコミュニケーションを取りながら成果の共有と課題の解決を進めます。

授業見学は予め許可を取っていれば可能です。真摯な姿勢も伝わりますしむしろすべきでしょう。

予算案見積

実証研究で一定の成果が見られ担当者の関係も深まると自社商品を次年度の予算案に組み込んでもらえます。

担当の指導主事がベンダーなどに依頼し仕様書を作成。そしてそれに沿った見積を取ります。

大事なことは2点。仕様書にプロダクト名を記載してもらうこと&営業初期からの説明した価格認識とずれないことです。

ぶじに予算案に記載してもらえると議会の審議に入ります。審議の期間は問い合わせや見積の調整相談が来ます。

予算通過〜入札

予算通過から入札までに必須のイベントはありません。放置して関係性が消えないようにしましょう。

最も怖いのは予算通過後の仕様変更とキーパーソンの異動です。いずれも情報を早めに取れる体制を整えましょう。

入札用見積

導入時期が来ると入札が行われます。基本予算審議の見積額から大幅にはずれなければ受注できます。

導入

受注すると導入作業が始まります。実証実験と基本的に同じことをしますが違いは対応する学校数です。

研修やフォローは1校1校訪問するのが現実的でないパターンもあります。その時は教育委員会に各校主任の集合研修を提案しましょう。

まとめ

ユーザー数は多く規模面で非常に魅力的な市場です。ただし商流は独自で初動から受注まで早くても1年と時間がかかります。

進出時に「1年で結果出します!」と啖呵を切って進出しほとんど何も残せず撤退…。など商流や時間軸の認識違いで失敗しないことを祈念いたしております。

これから学校に進出しようとしている人、学校市場を攻めあぐねている人の参考になっていれば幸いです。

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