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青い想いを忘れない。意志が繋いだグッドパッチ上場ストーリー

2020年6月30日
株式会社グッドパッチは東証マザーズに上場いたしました。

証券コードは7351。"波来い!"で覚えてください。

多くの皆様の支えのお陰でここまで来ることができました。後ほどまた感謝の言葉を述べますが、応援してくださった皆様、本当に有難うございます。

2011年9月にGoodpatchを立ち上げた時には全く想像もしていなかった未来を僕は過ごしています。

これまで上場に関してはあまり表立って話をしてこなかったので、上場までのストーリーを少しお話したいと思います。(※7000文字越えてます)

※7月17日 創業から上場までのドキュメンタリームービーも追記しました。

なぜ上場だったのか

Goodpatchはそもそも立ち上げ時に上場とかを考える類の会社ではなく、いわゆる受託で仕事をして、ご飯を食べていく会社でした。それが、たまたまGunosyやマネーフォワードなどのUIデザインに関わり仕事が一気に増え、ある事がキッカケで2013年にデジタルガレージから1億円の出資を受けることになりました。(当時のブログ

この出資を受けるときも実は当時そこまで深く考えずに出資を受けてしまっており、自己資本でやっていく道がなくなり、将来IPOか売却をする事になるかもしれないなーと今振り返るとそんなに強い覚悟もありませんでした。

ある起業家達との食事会でのこと

初めての出資を受ける前後のタイミング、今から7年前にはてなの近藤さん(元社長)とアカツキ香田さん(現社長)、ツクルバ村上くん(現社長)と食事に行く機会がありました。

その時に僕は近藤さんに「はてなってIPOするんですか?普通に既存事業で回っていて利益が出てるのにIPOするメリットあるんですかね?経営も自由に出来なくなるし、僕はあんまりメリットを感じないんですが。IPOを目指す理由って何ですか?」と質問しました。すると近藤さんはこう答えました。

「IPOのメリットかーそりゃ色々あるけど、そういうのじゃないんだよなーIPOはさ、会社の成人式なんだよ。上場するって事はやっと大人の会社として認められるって事なんだよ。あと理由があるとすれば、自分の尊敬する経営者や同世代の起業家がみんなその道を通って行っているんだよね。みんな頭の良い人達がわざわざ面倒な道を選択しているんだよ。理由があるとすればそれが理由じゃないかな?」

確かに孫さんも三木谷さんも藤田さんも自分が尊敬する起業家はみんな苦しいと分かっていながらも上場を選択している。その一言で少し上場への意識が変わったのを覚えています。

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はてなはその後IPOし、当時は出資も受けていなかったアカツキもツクルバも今では立派な上場企業になっています。

ビジョン・ミッションを決め、腹をくくる

2014年に渋谷に移転する時に初めてGoodpatchのビジョンとミッションを言語化しました。

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Goodpatchを創業して、ずっと家族と仲間を食わせていかないといけないと必死に走り続けていたのが、改めてGoodpatchが社会のために何をできるかを考えるキッカケになりました。

その時に思ったことが、当時すでに熱量も高く優秀なメンバーたちが30人も集まって来ていて、これだけの人材を集めて社会に何も残せなかったら自分は経営者としてクソだなと思ったことと、デザインの事業に関わる中で見えてきた社会的な課題、自分たちが信じている事は間違っていない、デザインは社会にとってもっと重要になる。

もし、僕が会社を売却したら同じビジョンとミッションを掲げる会社はもう現れないかもしれない。Goodpatchは絶対になくしてはいけない会社で、社会にとって必要な会社になるはずだ。という想いがどんどん強くなりました。

その時に売却という選択肢は捨て、IPOへの覚悟を決めました。買収の話が来ても、金額がいくらであろうとその選択は取らない。

どうせだったら難しく険しい道を選んだ方が人生面白い。

険しい道のり

その後、Goodpatchは成長とともに非常に険しい道に入っていくことになりました。当然ながら、上場する事に納得していないメンバーもいましたし、少数精鋭で小さな組織でやっていくと思っていたメンバーもいました。そういったメンバー達はもちろん抜けていき、組織も急速に成長していきました。たった2年半のうちに30人→50人→100人と人が増えていきました。しかし、その準備ができていない中で大きくなった組織は大崩壊を迎えます。

全てはこちらのnoteに書いてますが
今振り返っても、本当に苦しい数年間でした。

初めてSOを渡した初期のメンバー達は全員辞め、組織崩壊の時に辞めていったメンバー達は残るメンバーに「この会社にいても未来ないよ」と転職を勧め、役員もマネージャーもほぼ全員辞めていきました。ずっと会社の雰囲気は回復せず、2年連続離職率が40%という時期が続きました。

長いトンネルを走っていつまでも抜け出せない、そんな感覚でした。

あの時に上場を目指しているなんて言ったら鼻で笑われる状況だったと思います。

それでも、諦めることはありませんでした。
辞めずに残ってくれたメンバー達、状況が悪いと分かっていながらも入社してくれたメンバー達、一緒に少しでも会社を良くしようと戦ってくれているメンバー達のために先頭を走っている僕が絶対に諦めるわけにはいかないと、そう思い組織課題に向き合い続けました。

組織崩壊ブログに書いていますが、バリューの再構築と浸透を経て段々と組織は改善していきました。

そして、2019年3月の半期社員総会で組織崩壊の戦いは終わりを告げます。

改めて示した上場への覚悟

組織崩壊の終わりが見えかけた2019年3月の半期社員総会で僕は全社員にこんなプレゼンをしました。

世界でも類を見ない
デザイン会社として初のIPO

IPOをする意味は
より大きな挑戦をするため
社会的な信用力を得る

IPOはGoodpatchという会社を
永続的に成長し続けるためのツールの一つ

社員の家族が
Goodpatchという会社で働いていることを
誇れるような会社でありたい

20年後、将来この子達が
もしデザイナーを志すのであれば
Goodpatchに入りたいと思ってもらえる
会社であり続けたい

デザイナーを目指す若者達の憧れの会社であり続けたい

「みんなが使っているあのプロダクトをデザインしたのはGoodpatchだよね」
「デザイナーを日本で一番増やしたのはGoodpatchだよね」
「デザイナーを稼げる職業に変えたのはGoodpatchだよね」
「デザインの認識を変えたのはGoodpatchだったよね」

そういう未来を俺は見たい

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一般的にIPOのことを社員にオープンに話す会社と経営サイドでなるべく社員にIPOを意識させずに準備を進める会社が二通りあります。

オープンにするのは、もしIPOが失敗した時に社員のモチベーションを大きく下げる可能性があるのでリスクがあります。しかし、僕はあえて社員にオープンに話し、同じ目的を共有する道を選びました。

ここから2020年にIPOを達成するには、全員で気持ちを同じにして臨まないと簡単に達成できる目標ではなかったのと、やはり「デザイン会社として初の上場」という夢を社員みんなと共有し、大きな目標に向かい、それを一緒に達成して、喜びを分かち合いたかったからです。

2019年3月の半期社員総会以降、Goodpatchの一体感は大きく高まり一つの方向に向かっていきました。

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FY2020の最初に掲げた全社OKR

組織崩壊を乗り越えてからの半年は、本当に会社全体の勢いを感じる期間となりました。不思議と組織が良くなるとみるみる会社全体の業績も改善していきました。

そんな中で行われた8周年の社員総会と9期のキックオフでどんな発表をしようかと考えました。過去、組織崩壊時に複雑な評価制度の導入に失敗した後に、もっとシンプルな設計にしようとOKRを導入していました。そして、FY2018、FY2019に作ったOKRのObjective(目標)は不思議と掲げた旗の方向に全社を導き、崩壊からの復活に大きく寄与する形になりました。

その経験から明確な旗を掲げる事の大切さを感じていた僕は、このFY2020で掲げるObjective(目標)はこれしかないなと決め、9期のキックオフで全社員に伝えました。

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このタイミングはコレしかない。

絶対に達成しようと。

不退転の決意で掲げたObjective(目標)でした。

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8周年の社員総会のエモめのスライドも置いておきますね。

最後の最後に立ちはだかった壁

FY2020の上半期は全社の気合も乗り、非常に良い結果を残し上半期を終えることができました。

しかし、ここで全世界を襲ったコロナウィルスが経済に大きな影響を与えることになり、株式市場は大荒れとなりました。

元々、6月上場を予定していた弊社も、3月4月IPOの上場延期と中止の連続の中で株式市場の混乱を理由に一時期は上場延期の可能性も示唆され、4月は非常に先が見えない状況でした。

それでも、弊社管理部、大和証券の公開引受部の皆さん、監査法人デロイトトーマツの皆さんが諦めずに最後まで粘り上場を推し進めてくれ、予定通りの6月上場のスケジュールで進めれる事が決まったのが緊急事態宣言中のGW明けのことでした。

多くの反響をいただいた上場承認のニュース

2020年5月27日、株式会社グッドパッチは東証マザーズへの上場承認を受けることができました。

上場承認のリリースは本当に多くの方々にコメントとDMをいただき、改めて、こんなにGoodpatchの事を応援してくださっていた人がいたことに驚くと共に、多くの人々の期待を背負っているのを感じ身が引き締まる思いでした。

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今回、上場にあたり目論見書も弊社BXデザイナー陣が気合を入れてデザインし、過去の目論見書の常識を覆すような目論見書になりました。表紙にハートが入った目論見書は見たことがないw

青い薔薇に秘められたストーリー

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今回、IPOに際し目論見書や色んな箇所で使われた青い薔薇のモチーフ。

実は薔薇は青い色素を持たず、その昔薔薇を青くする事は難しいとされていたことから、青い薔薇の持つ花言葉は「不可能」でした。その後、日本の研究者達の努力により世界初の青い薔薇が誕生し、花言葉は「不可能」から「夢叶う」になったというストーリーを1年ほど前に見つけ、とても良いストーリーだなと温めていたものでした。

デザイン会社の上場という不可能と思われていた事を成し遂げ、Goodpatchのストーリーをこのブルーローズのストーリーに重ねてモチーフにしようとデザイナーたちと考え作ったものでした。

今回のIPOを彩る良いモチーフになったと感じています。

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2020年6月30日上場当日

残念ながらコロナウィルスの影響で東証での上場セレモニーは中止。一応、東証のストックボイス収録や記者会見もあるので、せっかくだからと仲の良い森さんが経営するFABRIC TOKYOで初めてのオーダースーツを注文して本日に臨みました。仕事でスーツを着るのは2回目くらいですが、たまのスーツは意外と良いもんですね。大和証券で皆さんにお祝いしていただきました。

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会社に戻って来て、密を避けながら飲み物も食べ物も出さずオンラインとオフラインで社内メンバーで上場を振り返る会を開催しました。

これまでのストーリーを振り返るドキュメンタリーや東証で鐘を鳴らせないので借りてきた鐘を鳴らす上場セレモニーなど、最近メンバー達にも直接会えていなかったので、久しぶりにみんなの声を聞き、楽しい会になりました。

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表紙・背表紙_ローズ.key 2020-06-30 23-05-46

青い想いを記した創業者の手紙

上場に合わせて、今の気持ちを記した創業者の手紙を書きました。

表題は「Stay blue」

上場しても、初心を忘れず青い想いを持ち続けるという意味とGoodpatchのコーポレートカラーのブルーを重ね、今の想いを書き記しました。

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本日来ていた社員には一人ひとり手渡しで手紙を渡しました。この封筒や便箋も弊社BXデザイナーたちがデザインし、経営企画室を中心とした運営チームが一枚一枚手作業でシーリングスタンプで封蝋したこだわりの手紙です。本当にこだわりと遊び心の溢れるメンバー達で、僕の誇りです。

コーポレートサイトにも創業者の手紙として文章が載っているので、ぜひご覧ください。

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ストーリーを繋ぐ意志の力

上場承認が降りた日、僕がGoodpatchの全社員向けにこんなメッセージを送りました。

もし、あの時あの案件がなかったら、
あのクライアントに出会ってなかったら、
あのメンバーがあのタイミングで入ってくれてなかったら、

何か一つでも欠けていたらこの上場はなかった。
沢山の奇跡の積み重ねが今を作っている。
しかし、その奇跡を作ったのはやり切る、
諦めないと行動し続けた俺たちの意志の力だ。

いるマーケットが良かったからではない。

諦めようと思う瞬間なんていくらでもあった。それでも、もっと世の中のプロダクトを良くしたい、組織を良くしたい、デザインの力を証明したいという1人1人の想いと意志の力がグッドパッチをここまで持ってきた。

これで、やっと入り口に立つ事ができる。でも、この入り口は多くのデザイン会社が立つ事ができなかった入り口だ。

デザイン会社初のIPOという夢を信じてくれたGoodpatchのメンバーみんなのお陰だ。

信じてくれて、本当にありがとう。

創業してから、この8年10ヶ月のGoodpatchのストーリーは多くの登場人物たちが繋いで来たストーリーです。

Goodpatchの大きな強みの一つは明確にこのストーリーで、幾多の偶然や奇跡も起きましたが、やはり困難に陥った時にこのストーリーに関わった多くの登場人物たちがどんなに苦しい状況でも諦めずに明るい未来を信じ強い意志を持ってストーリーを繋いできた事が、このGoodpatchの魅力であり資産であると思っています。

スタートアップは基本的に良い時もあれば悪い時もある、むしろピンチのフェーズが多い訳ですが、結局組織の中にいるメンバー達が諦めずに主体性を持って会社のストーリーを繋いでいく意志を持てるかどうかが大事なんだと、この約9年間の起業家人生で学んだことです。

意志のないところに物語は生まれないのです。

一度もブレることがなかったWhy

今回の上場にあたり過去の社内向けの発信や社外向けのインタビューなどを見返していましたが、6年前に定めた「ハートを揺さぶるデザインで世界を前進させる」というビジョンと「デザインの力を証明する」というミッション、このGoodpatchのWhyは全くブレなかったと感じています。

どんなに苦しい時も、足元が揺らぐような事が起きても、このWhyが強力な芯となり、いつも組織を支えてくれたと思っています。

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未だにビジョン・ミッションで飯は食えないなんて言葉を巷では聞いたりしますが、Goodpatchはこのビジョン・ミッションがなかったら明確に今はないと言えます。いつの時代も強固な組織を作るにはWhyを言語化し、メンバーが会社のWhyを内在化させ、語れることが重要だと思っています。社内社外ともにWhyの一貫性が信頼を形作るのだと思っています。(こちらの記事もぜひ参考に

謝辞

上場は一つの通過点とは言え、大きな節目の一つです。

本当にここに来るまでに、多くの方々に支えていただきました。社員はもちろん、過去Goodpatchで働いてくれたメンバー、多くのクライアント含むパートナーの皆様、関わってくれているアドバイザリーの皆様、いつも刺激をもらっている起業家仲間、Goodpatchを応援していただいてる皆様。本当に多くの方々の支えなしにここまで来ることはできませんでした。

その中でも、最も感謝を伝えたいのが家族です。

9年前にまだ8ヶ月の娘を連れてサンフランシスコに行く時も、起業する時も反対する事なくいつも僕のやりたい事を尊重してくれた奥さん。本当に会社が辛い状況だった時もいつも圧倒的な味方でいてくれ、子供たちのお陰で一瞬でも辛い事を忘れる事ができました。

Goodpatchを上場させると誰も信じてくれなかった時から唯一最初から信じてくれていたのが奥さんでした。家族の支えがあったからこそ今の僕があります。

家族なしではここまで走れなかったと思います。本当に感謝しています。

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毎年結婚年数の本数送っている
結婚式記念日の薔薇を今年はブルーローズに。
2020年7月1日は13周年で13本。

ストーリーは新章へ

Goodpatch創業から8年10ヶ月、このIPO編とも言えるこのストーリーは本当に途中の組織崩壊のどん底から這い上がりIPOまで行くという、まるで王道のジャンプ漫画のようなストーリーになったと思います。完全に図らずもなんですがw

ここからGoodpatchの新章に突入していきます。IPO後に、どんな出会いと困難が待ち構えているのか、とてもワクワクしています。

まだまだ長いストーリーの第1部が終わったばかり、ドラゴンボールで言うとフリーザ編が終わり、人造人間・セル編くらい。幽遊白書で言うと暗黒武術会編(戸愚呂兄弟編)が終わって、魔界の扉編(仙水編)くらいです。

と社内でも書いたら、全く通じずジェネレーションギャップをもろに食らっています。キングダムで言うと函谷関の合従軍の手前くらい。

ここからも更に強い敵が現れ、多くの困難に見舞われると思いますが、Goodpatchのメンバー達はそのピンチをチャンスと捉え、登場人物としてストーリーを繋ぐ覚悟を持っています。

魅力的なストーリーにピンチは付き物ですから。

ということで、Goodpatchの上場までのストーリー皆さんいかがでしたか?

ここからのGoodpatchの新たなストーリーも楽しみにしててください!

Design to empower !!

表紙・背表紙_ローズ.004
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Goodpatch Story 第1部 IPO編


※追記 創業から上場までのドキュメンタリームービー

上場日に社内メンバーに向けて公開したGoodpatchの創業から上場までのドキュメンタリームービーをYoutubeに公開しました。多くのストーリーの登場人物達が当時を振り返っています。ムービーの最後にサプライズも・・

Youtubeリンクはこちら

新たなストーリーの登場人物たちへ

Goodpatchは引き続き新たなストーリーの登場人物を募集しています。IPOを経て、多くの新たなチャンスが生まれていくこの会社で一緒にストーリーを作って行きませんか?

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