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「学力」と経済学#番外編.7 最終回

今回で、番外編としての本の紹介は最後です。心理学や行動経済学の記事はこれからもあげますので、よろしくお願いします。読んでいている方、本当にありがとうございます!人生に活かしてください。


いつも、心理学と行動経済学の記事を読んでいただきありがとうございます!

今回は、番外編として、東進ハイスクールの林先生も絶賛した教育経済学者の中室牧子さんの「学力」と経済学を読んで、記事にしようと思います。

第1回の記事はここに貼っておきますので、まだ見てない方は是非!


https://t.co/AY4pkfPIv8

というわけで!今回は第5章「"いい先生"とはどんな先生なのか?」の内容を要約して説明します!

※ちなみにめんどくさくて、早く情報を知りたい方は、太字を読めば大方掴めるようにはなっています!



「いい先生」に出会うと人生が変わる

ここで伝えたい事は、遺伝や家庭の資源など、子供自身にどうしようもないような問題を解決できるポテンシャルを持つのは、「教員」だということです。

これは教育経済学における数多の実証研究の中でも明らかになっています。


・スタンフォード大学のハヌシェク教授は、能力の高い教員は、子供の遺伝や家庭の資源のふりすらも帳消しにしてしまうほどの影響力を持つと結論づけている。
・テキサス大学のハマーメッシュ教授らの研究でも同様の結果を得ている。

教員の「質」として、図られる付加価値という指標がある。例えば、アメリカのカリフォルニア州の有力紙「Los Angeles Times」のウェブサイトで公開されているものの概念図などは、サイト上で教員名を入力すると、教員の情報が事細かに出てくるようなシステムがある。

しかし、「いい先生」とは点数を上げたことだけに限りません。

「いい先生」とは、昨年も今年もクラスの平均点が80点である先生ではなく、昨年の平均点は30点だったけれども今年は35点にできる先生だということになります。


教員を「ご褒美」で釣ることに効果はあるのか

ここで考えるべき事は、「一体どうすれば教員の質を高めることができるのか」ということです。

アメリカでは少なくとも10州が、給与やボーナスを成果主義にすることで教員の質を上げようと試みました。

しかし、そうしても教員の質を高め、子供たちの意欲や学力の改善につながることを示したエビデンスは決して多いとはいえません。

アメリカの名門シンクタンクであるランド研究所とヴァンダービルト大学のスプリンガー専任講師の研究チームが、教員に対して成果主義が導入された場合の研究を行いました。
しかし、生徒の成績向上が見られず、教材や授業を改善するなど、生徒の成績を改善するための努力をした、形跡は見られなかったことも報告されています。

一方、成果主義について、やや異なる視点を提供してくれる研究もあります。

ハーバード大学のフライヤー教授は、問題なのは成果主義そのものではなく、「与え方」だと指摘しました。
具体的には、ランダムにボーナスを「得るグループ」と「失うグループ」の2つに分けました。
この結果、成績が上昇したのは「ボーナスを失う」グループの教員に教わった子供たちだったことが示されました。

上記の研究では、確かに子供の成績は上昇していますが、あまり現実的とはいえないかもしれません(もしあなたが、失うことを恐れるのなら、子供の成績を上げることだけが全てではないかもしれない)。


教員研修に効果はあるのか

日本の小・中学校教員の50%程度が、1年の間に何らかの研修を受けています。(国際数学・理科教育動向調査より)

しかし、最近の研究に限ってみれば、教員研修が教員の質に与える因果効果はないと言う結論が優勢です。

ミシガン大学のジェイコブ教授らが行った研究などが結果として出しています。また、ウィスコンシン大学のハリス準教授も同様の結論に至っています。


教員免許は「参入障壁」なのか

実は、「今、すでに教壇に立っている教員の質を高めるために、どんな政策が有効か」という問いについて、教育経済学はまだ明確な答えを持ちません。

しかし、それでも教員の質を上げる方法があります。もともとの能力が高い人を採用すればよいのです。

経済学者は、教員になるための参入障壁をなるべく低くする、つまり教員免許制度をなくしてしまうということが、解決策となります。

理由は、免許という参入障壁が、能力の高い人が教員になったり、あるいは他の職業で活躍してきた人が教員に転職したりするのを妨げている可能性があるからです。

ティーチ・フォー・アメリカは、派遣する教員の多くが、教員免許を保有していない教員でありながら、公立学校で教員免許を持つ教員に混じって教鞭をとっているという事実があります。
マセマティカル研究所のベッカー教授が、教員免許は必ずしも教員の質を担保しているわけではないという研究結果を出しています。

これまでの海外における研究蓄積を見る限り、「給与を上げる」「研修を受けさせる」「免許制度を撤廃する」という3つの選択肢の中では、教員免許制度を変更し能力の高い人強になることも参入障壁を低くすることが有力な政策オプションなのではないかと考えられます!


なぜ日本で研究が進まないのか

しかし、紹介した研究はほとんどアメリカの事例です。

実は、日本の教育において最もエビデンスが必要とされているのは教員の質に関するものですが、データの不足・アクセスの難しさという点で問題となっています。

以下の結論は、本書をお読みください。
また、補論もして、どの研究方法が信頼性があるかも載せられています。



私の考え

私は、大学生です。今年、卒業研究として、論文を提出します。その中でも、エビデンスが非常に重要であることは言うまでもありません。

何かに対して、結果を出したり、効果を生み出すためには、実行前に根拠が必要であることが往々にあります。

皆さんがモノやサービスを買うときに、理由が全くなく買うなんてことは少ないでしょう。


当たり前です。


でも、日本の教育をする側も受ける側も、そんなことを知らないことが多すぎるんじゃないかと思います。

今回の本書で、日本の教育のする側のエビデンスがないことは、筒抜けでした。

しかし、教育を受ける側である小・中・高校生は、そのことを知らないし、大人は教えません。


私は、教育を変えるんだ!といって、行動はしませんが、少なくとも、塾講師をしている立場で、こういうことを学んで、教えてあげることができることだと思います。


もし、これから親になる人、あるいは親である人は、教育ということをエビデンスありきで、しっかりと学んでおく必要があると思います。

私が伝えたいことは以上です。


ありがとうございました。

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