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Tさんと昆虫スナックの話

「虫って食べたことあります?」

施術用のベッドにうつぶせになっている私に向かって、担当マッサージ師のTさんが唐突に尋ねてきた。

「ない……ね」

「僕、この間、食べたんですよ」

少し考えてから答えた私の言葉が最後まで終わらないうちに、要は食い気味に、Tさんがたたみかけてくる。彼は食に貪欲だ。施術してもらうようになってから1年以上たつが、施術中の会話に食の話題が出なかったことがない。いつも「彼が最近食べたおいしいものの話」を教えてくれた上、「私が食べたおいしいものの話」を聞きたがる。そして気になったおいしいものは貪欲に食べに行く。昆虫を食してみたいと思ったのもそれと同じ「単純な好奇心」だそうだ。

「虫やゲテモノが好きなわけじゃないんですけど、食用として加工してあるやつなら全然抵抗ないんですよね。だから食べてみたくって」

なるほど変わった人だ。

Tさんが昆虫食を買った店は台東区松が谷にあるという。

昆虫食の通販ショップ|TAKEO

ちなみに私が「昆虫食」と聞いて最初に思い出したのはこれだったが、上記のお店をやっているのは違う人だった。

さてTさんはそのお店で昆虫スナックと「ふりふりちょい虫」という昆虫の入ったふりかけを買い、タガメサイダーを飲んだという。

「思ったより普通でしたね。見た目はやっぱアレですけど、味は全然普通に食べられます。あ、でも甲殻アレルギーの人は食べないでくださいって書いてあるんですよ。昆虫って甲殻類と似てるんですって。タガメサイダーは『青リンゴの味がする』って思いました。スナックは今、手元にあるんで、よかったらあとで食べてみてください」

ということで施術後、私も虫を食す流れになった。

「とりあえず見てみて、だめそうだったら食べなくていいですからね」

Tさんがそう言って私に昆虫スナックのパッケージを手渡す。彼が買ったのは幼虫ミックスという、ミルワーム(ゴミムシダマシの幼虫)・スーパーワーム(でかいミルワーム)・シルクワーム(カイコの幼虫)・サゴワーム(サゴゾウムシの幼虫)の4種類がミックスされたものだ。まぁまぁの見た目なのでリンクは貼らない。ご自身で探してみてほしい。なお、商品紹介ページには「4種類の幼虫を贅沢に味くらべ!」と書かれている。よくわからない。

言われるがままパッケージを開け、中身をチラ見してみると、結構なインパクトだった。いったんしまって、心を落ち着ける。自分で中身の幼虫を取り出すのは無理そうだったので、Tさんに取ってもらった。なるべく小さくて虫感の少ないものを手のひらに乗せてもらう。うん、ナッツみたいに見えなくもない。そのままの勢いで口に含む。乾いた「シャリッ」という歯触りと、桜エビのような味わい。桜エビの入ったこういう味の煎餅あったなぁと思い出す。

「意外と大丈夫。普通の味」

「ですよね。意外と普通なんですよ」

「うん、平気だった。ありがとう。じゃあまた」

「ありがとうございました。またお待ちしてます」

こうして私の初めての昆虫食は終わった。

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医療、とくに不妊、妊娠、出産など女性の健康にまつわることを伝えるライターをしつつ、「どうやったら来世で“金持ちの家で飼われている猫”に生まれ変われるか」を考えながら日々生きています。左投げ左打ち。Twitterはやってません。
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