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バリュエーションを「先送り」?!(2)

前回の記事はこちら。

では、具体的に、バリュエーションを先送りするにはどのような方法があるのかをみていきましょう。

株ではなくて借金(社債)にする?

株で資金調達(エクイティ・ファイナンス)をしようとするから、「株価いくらか」を決める(バリュエーション)必要が生じてしまいます。

じゃあ、株じゃなくて、負債(借金。Debt)で調達したらどうか?

会社が負債で資金調達をする方法として、会社法上の社債制度を利用することが考えられます。

「社債」というと、聞き慣れず、なんだかよくわからなくなるかもしれませんが、要するに借金=借りたら返さないといけないお金、と思ってもらえればよいです。

単に社債を発行するだけであれば、調達にあたってバリュエーションをする必要がありません。当然、返済の目処を示すために、事業計画を提示する必要があるケースは多いでしょうが、必須ではありませんし、少なくともDCF法による計算結果を提示する必要もありません。

そして、社債は、銀行融資と異なり、発行会社が、金利や、返済方法、償還期間などを自由に設定することができますので、お金の出し手さえいれば、相当程度会社の都合に合わせた調達が可能になります。

しかし単なる社債だと。。。?

と、なんとなく都合の良さそうに見える社債ですが、実はスタートアップが単なる社債で資金調達をすることは殆どありません(注1)。

なぜか。

まず、単なる社債は投資家のニーズにあいません。ベンチャーキャピタルは、キャピタルゲインによる、通常の金利ではありえないような利益を狙って、わざわざリスクの高いスタートアップに投資するのであり、返ってくる儲けが年数%の金利、といわれてしまっては、投資に旨味がありません。「それだったら銀行からお金借りてきたら?」ということになります。

また、スタートアップ側も、社債は、要するに借金ですから、いつかは投資家に返済しなければなりません。

さらに、社長が連帯保証人になってしまった場合は、会社を畳んだ後も個人的な負債になってしまい、人生設計に重大な支障が生じることになりますから、社長としても受け入れがたいことになります。

このようなわけで、スタートアップが単純な「社債」で調達をすることは現実的ではありません。

しかし、社債には「バリュエーションを先送りできる」「とりあえず元本(と金利)が返済されるという投資家の安心感」があります。このメリットを生かせないか。。。?!

次回に続きます。

今日も1万回の失敗と挑戦を繰り返す起業家・スタートアップを応援しています。

注1)スタートアップも、晴れて上場すると、社債による資金調達をすることがあります。とくに最近は、金余りの影響でソフトバンクなどの大企業による社債発行が相次ぎ、人気企業の社債は、売り出してからすぐに完売していました。

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