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株ってなに?おいしいの?(4)

前回の記事はこちら。

https://note.com/naoaki_chiba/n/ne7a9107f71bf

純資産法でも、類似企業比準法でも、スタートアップの企業価値を評価できないとすれば、一体どんな方法を使えばいいのか?

ここで登場するのが「DCF法」です。

DCF法ってなに?

純資産法の説明で申し上げたとおり、スタートアップの企業価値を算出するにあたって、過去(利益剰余金)に目を向けても仕方がなく(過去がないので)、未来にどれくらいの価値を生み出すのか(どれくらい稼ぐのか)に焦点を当てる必要があります。

DCF法(Discounted Cash Flow法)(注1)は、

「対象企業が将来生み出すであろうお金(キャッシュフロー)を、ぜ〜んぶかき集めて、現時点の価値に引き直したらいくらか?を計算する方法」

です。

現時点の価値に引き直すってどゆこと?

はい。さっそくいくつか疑問が湧くと思います。

まず、「現時点の価値に引き直す」ってどういうことか?

たとえば、あなたの会社の事業計画上、来期は1億円のキャッシュフローが生み出されるとします。

その1億円って、現時点では、本当に1億円ですか?

手元に1億円ないですよね?

そう。本当に1億円が生まれるかどうかは、かなり不確実なわけです。

というわけで、計画上、来年1億円が生み出されるとしても、企業価値を評価するにあたっては、そのリスクを踏まえた「割引」をするのです。

これを、「割引率」(r)と呼んでいます。

たとえば、割引率が5%だとしたら、来年の1億円は、

100,000千円 ÷(1+0.05) = 95,238千円

ということになります。

再来年(2年後)に2億円かせぐ予定だとすれば、その現在価値は、

200,000千円 ÷ (1+0.05)^2 = 181,405千円

ということになります。  

3年後に3億円かせぐ予定だとすれば、その現在価値は、

300,000千円 ÷ (1+0.05)^3 = 256,953千円

ということになります。

未来の儲けをぜ〜んぶかき集める?

次に「未来の儲け(キャッシュフロー)ぜ〜んぶかき集める」なんて無理じゃないの?という疑問が湧くと思います。

上記の例で、1年後に1億円稼ぐ、2年後に2億円稼ぐという例をあげましたが、事業計画を作るといっても限度があります。3年目に3億円稼ぐところまでしか事業計画書を作れなかったら、4年目以降のキャッシュフローの現在価値ってどうやって出すのか?

ここで出てくるのが、高校で勉強する、「無限級数の和の計算」です(注2)。

たとえば3年後に3億円稼ぐとしたら、4年目以降、永久に、1%成長を続ける、と仮定するのです。

この、1%のことを、「永久成長率」(g)と呼びます。

そうすると、4年目〜∞年目までのキャッシュフローの総額は

3億円÷(r-g) = 3億円÷(0.05-0.01) = 75億円

ということになります。

この75億円のことを、残りの会社の価値、ということで、「残余価値」(Terminal Value)と呼んでいます。

その残余価値の現在価値を算出するには、最終事業年度の割引率で割引をします。

7,500,000千円 ÷ (1+0.05)^3 = 6,478,782千円

上記の例では、企業価値は

1年目の割引後キャッシュフロー+2年目の割引後キャッシュフロー+3年目の割引後キャッシュフロー+残余価値

= 95,238千円 + 181,405千円 + 256,953千円 + 6,478,782千円 = 7,012,378千円(約70億円)

ということになります。

DCF法で正確な企業価値が計算できる?!

はい。ここまで読んで、さらに「????」となった方(特に数学に強い方)も多いのではないかと思います。

要するに、変数は、事業計画上の最終年度(3年目)の計画キャッシュフロー(上記の例だと3億円)、割引率r(5%)、永久成長率(1%)だけです。

いずれも、計画上の数値ですので、いかようにも変えることができます。

この3つの変数をいじることで、数字の上では、企業価値を無限に大きくすることも、小さくすることもできてしまうのです。


え。。。。?!


この話は、まだまだ続きます。

今日も1万回の失敗と挑戦を繰り返す起業家の皆さんを応援しています。


注1)DCF法にはいまいち定着した日本語訳がないように思われます。ちょっと覚えにくいですがDCF法、と呼ぶしかないようです。

注2)忘れてしまった人は「無限級数の和」で検索してみてください。無数の予備校講師先生方の解説動画、ブログが出てきます。

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