ポケット


小さい頃、ポケットを裏返し
いつも外に出している友人がいた。


20世紀初頭、
フランスの少年院では皆が揃って
よれたズボンに自分でポケットを作ったらしい

それは監獄でも同じように行われ
そのなかで宝物は交換され、
ときに愛が交わされた



あのときの彼はポケットにいつも文庫本を入れていたし



学生のわたしのポケットにはいつも小銭が入っていた



就職したあといくつかの冬は
コートのポケットが大きいのをいいことに、
鞄を持たずに出勤した



最近では
スーツのポケットにこっそりチョコレートを入れておき

ふとした瞬間、
周りの店の先輩たちのスーツのそれに
素早い仕草でチョコを忍ばせる

そのとき彼女たちはたいていお客様の前では見せない顔で笑うから、
わたしは嬉しくなる


無邪気でいることを
それごとポケットに隠して





冬が寒くって本当に良かった
君の冷えた左手を
僕の右ポケットに
お招きする為の
この上ないほどの理由になるから
   (BUMP OF CHICKEN「スノースマイル」)



大人になっても

いつも神秘に満ちていたい。

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