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ニーチェは偉い!

 偉そうなことを書いたが、私はニーチェの思想を理解しているわけではない。ニーチェを理解したくて読んだ竹田青嗣の『ニーチェ入門』の一節を理解した、ということである。その一節とは、次のようなものだ。

「弱者」にとってほんとうに重要なのは、自分より「よい境遇」にある人間に対して羨みや妬みを抱くことではなく、より「高い」人間の生き方をモデルとして、それに憧れつつ生きるという課題である。また「強者」にとって重要なのは、他人の上にあるということで奢ったり誇ったりする代わりに、自分より弱い人間を励ましつつ、つねに「もっと高い、もっと人間的なもの」に近づくように生きると言う課題なのである。(竹田青嗣『ニーチェ入門』、ちくま新書、p.146)

 何というか、この世のややこしいドロドロは、この一節を理解し、実践すれば全て吹き飛ぶのではなかろうか、という気がした。最近の社会で汚いな、と思うのは、公務員を叩いたり、正社員を「既得権」として叩いたりする風潮(大阪で維新の会が躍進したのは、この手腕による)や、自己責任というもっともらしい言葉で困っている人を切り捨てる傾向(こともあろうに、一国の首相が「自助・共助・公助」などと言う)であると思う。僻まずに前を見て、自分にできるベストを尽くす、無理なら社会に援助を求め、求められた方はエラソーに説教せずに手を差し伸べる、というだけで、分断は溶け、いい世の中になるのではないだろうか。

 朝日新聞に連載中の「患者を生きる」において、心臓が悪い猪又竜さんと筋ジストロフィーの井出今日我さんのことが紹介されている。二人はタッグを組み、長野県内の学校で講演会を行なっているそうだ。二人の基本的な考えは「人によってできることとできないことは違うのだから、できる人ができない人を助ける」ということである。そしてそのために大切なのは「人と人が親しみ合うこと」だと考えている。ここにも「分断が溶ける」構図がある。

 「幸せとは」と肩肘を張って定義しようと努めなくても、要するに「一人一人がその人のベストを尽くす」、「それに対して冷笑せずに寄り添う」でいいんじゃないの?と思わせる『ニーチェ入門』だった。そしてこのことをもっと掘り下げるべく、私はきちんとニーチェを読もうと思う。

 


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