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mellowメロウの感想(ネタバレあり)

イオンシネマ京都桂川で鑑賞。今泉監督作品は毎回女性客中心にお客さん多い。

今泉作品はどれも監督の色がめちゃくちゃ出る作品ばかりなんだけど田中圭は何に出ても何というか本人の色が全くブレない役者さんだなぁと思う。

ともさかりえとその旦那を挟んでの告白シーンもめちゃくちゃ今泉作品でありそうなシュチュエーションなのに田中圭だけ空気感に負けず「いやいやあなた達おかしいでしょ」といつもの田中圭感で返しているのがとてもギクシャクしていて面白かった。
ともさかりえの迷いない「好きです」の連呼に対してどこまでも真面目に返すのに爆笑した。

ラストの手紙のシーン、2通共ナレーション的に内容が読まれ始める所で「説明的過ぎるし大丈夫かな?」と一瞬不安になったのだけど、この2通の手紙に今回の映画のテーマが集約されていて、読み進められる度に泣かされる。

これまで映画内で何度も語られてきた、誰かに想いを伝える事のエゴとそれでも伝えたい好意の尊さの全てが繋がってくる。

映画の終わりで初恋の思い出と対になる様に、自分で選んだ花で作った花束を彼女に贈る田中圭の笑顔で終わる切れ味、素晴らしかった。

ともさかりえ夫婦の田中圭への告白もコミカルと言いつつ今回の映画のテーマの重要な要素を担っている。
好きな人に気持ちを伝える事で生じる障害や自分を好きな人の気持ちはどうなるのか?そして想いを伝える事で、逆に関係性が壊れる負の面を提示している。
よく考えれば描き方によってはキツくなりそうな三角関係のシーンなのに本当に軽やかで、これはさすがは今泉監督作品だと思う。

田中圭。
冒頭の女子高生とのやりとりからすでに「キー!カッコいいな!この野朗!」と思わず悶絶する笑顔の数々。
1000円でいいよ、じゃねぇよ!といきなりフルスロットルでカッコ良さを振りまきまくり、天然で本人に悪意がないのがまた悪い男。
まあ自分の優しいカッコ良さに意識的になりここぞという時だけ使い分ける方向で演じていたのが「美人が婚活してみたら」のアイツなのだけど(そっちの方が地獄やん)。

基本的に優しい人だし他のカップルが別れる時に涙を流したりするのだけど、ともさかりえから告白でいざ自分が振る側になると割と冷静な(というか冷たい)態度なのが、凄く僕のイメージする田中圭感で良かった。
その直後疲れて子供の前で軽くやさぐれながらタバコ吸い出す所とか笑った。
この人の優しさと心無さを同時に醸し出す様な雰囲気が今泉監督作品にバッチリ合っていたし今後も組んで映画撮って欲しい 。

初めて見たけどラーメンウーマン岡崎紗絵さんもとても可愛らしい。
今泉監督は毎度毎度こんな綺麗な女の人をどこから見つけてくるのだろうか?と不思議に思ってしまう。

中盤のともさかりえ夫妻を笑い話にかこつけて(ひでえ)田中圭との腹の探り合いシーンはキュンキュンして微笑ましいのと少しヒリヒリする様な感じでとても好き。

田中圭が薔薇を準備するのもそうだし、閉店日に実際にラーメンを作るシーンがしっかり入ってくるのが若い娘がラーメン屋を切り盛りしているというちょっとファンタジーな設定にしっかり生身の説得力を出せている。当たり前なのだけど彼女がしっかり頑張ってきた事を肯定する様で感動した。

あと白鳥玉季先輩は毎度毎度観る度に演技の質がグングン上がっている。 永い言い訳の時から観てきたけど、もう名女優の貫禄が出てきた。

主要人物の中で唯一田中圭を巡る恋愛劇の外にいるのが彼女なので映画を観ている僕らの目線に一番近い。
恋をしている人に対して不思議そうに見てる顔がとても魅力的。
告白に失敗した女子中学生のもがきを淡々と絵に描いてるの笑う。

女子中学生2人。志田彩良さんと松木エレナさんも素晴らしい。
屋上での告白のシーンがとても優しい時間で凄く好きだ。
あと花屋で田中圭に告白しに来る所で田中圭の初恋のエピソードに合わせて折り重なる様に彼女達のそれぞれの想いが軽く語られていくのがまあ上手いよねー。

全登場人物悪い人が出てこない映画なので優しい気持ちで観れるし、悪い人が出てこないのに残念な事になってしまう恋愛の厄介さと愛おしさを美しく切りとった、今泉監督らしい傑作だと思う。

実はみんな大好きな「愛がなんだ」がそれ程ピンと来なかった人間なので「今泉作品は相性悪いのかもしれない、、、」と思ってたけど、今作は心の底から好きになれた。
今公開中のhisも観るぞ。

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