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「インサイド・ヘッド2」の感想(ネタバレあり)

ピクサー作品の中でもトップクラスの傑作だと思う「インサイド・ヘッド」の続編。

前作ライリーの頭の中では「喜び」がプラス思考で他の感情を引っ張っていき、「悲しみ」に蓋をしていく事で、「無理をして良い子を演じている」という人間を作り上げていて、その無理によって心が一度死んでしまうのだけど、「喜び」と「悲しみ」が地獄巡りの末に手を取って戻ってくる事で、ライリーの人間性を取り戻す成長に繋がっていくのが、とても感動的だった。

そんな前作から引き続き、人間の頭の中という舞台でその人の成長過程の小さな変化をとんでもないスペクタクルとして描き、観たこちらも自分という人間がここまで生きてきた変化に想いを馳せながら、極上の人間讃歌として感動的に描ききるピクサー映画のクオリティに毎度の事ながら今回も圧倒された。

面白いのがそれぞれの感情の精神的な成長があって、自分の役割、他の感情の役割をより深く理解していく事で、ライリーの成長に繋がっていく。

また母親や父親や友達等、他の脳内の様子も出てくるのが良くてライリーの様に「喜び」がリーダーのチームだけじゃなく、人によって真ん中にいるメインの感情が違うのが面白い。
例えば母親は「悲しみ」がリーダーでライリーが産まれたタイミングで変わったのか、元からなのかは分からないけど、他者への共感を大事にしているチーム編成で、それに対し父親は「怒り」がリーダーでおそらく仕事等で、その負けん気で家族の為に頑張ってきたのを想像させる。(その編成のせいでライリーと喧嘩したり、奥さんに呆れられたりしてるのが世の父親像を象徴してる感じが見ていてチクリとする)
普通に話しているだけなのに、その脳内チームの視線を介して会話を駆け引きしているのが、笑えるし、それでいてとてもスリリング。

前作では引越しによって「喜び」と「悲しみ」が不在になり「怒り」と「恐れ」と「不快」の感情のみでえらい事になっていく様子を描いていたけど、今作ではその5つ共が不在になり、新たに加わった「不安」、「羨望」、「恥じらい」、「怠惰」という感情が前面に出てくる。
この勢力図の変化によって自分自身をコントロール出来なくなる事がそのまま「思春期」としてのライリーのドラマに直結していく流れが本当に巧み。

ライリーの目線だけにフォーカスしても小さいドラマだけどめちゃくちゃ見応えがある。
個人的には「何かしたいけど何者にもなれない」という地獄の様な思春期女子を描いた「エイス・グレード 世界でいちばんクールな私へ 」とかを連想した。

そしてまた凄いのが、ほとんどの人が経験した思春期の不安定さを、脳内の動きを面白く描く事で、ライリーに感情移入するだけじゃなく「自分もあの時辛かったけど、頑張っていた」という事を思い起こさせてくれるので、後半の方はどうしたって感動してしまう。

最初はヨロコビ達が紡ぎあげてきた「人として優しくあろう、正しくあろう」とする姿勢でライリーらしさとして定義しようとしているのだけど、当然生きているとそんな綺麗に生きていける訳もなく、周りの人々との折り合いをつける為にシンパイ達思春期チームの「何としても他の人に認められたい」という気持ちから作られるライリーらしさとの対立になっていく。

物語的にはヨロコビ達はそこから以前のライリーらしさを取り戻そうと奔走していくのだけど、最終的にはそのどちらも否定する訳じゃなく、どちらをも認めて、新しい彼女らしさを作り出していくその葛藤がとても感動的だった。

嵐の様に気持ちがぐちゃぐちゃになる中、全ての感情が彼女らしさを抱き締めるラストシーンは、どんな人間でも自分の中で自分を愛している存在があって、それだけで生きていく希望になると映画の中からこちらに伝えてくれてる気がして、それが泣けてしょうがなかった。

だからその後のライリーと友達との仲直りのシーンは、自分ごとの事の様に嬉しいし、「ライリー頑張れ!俺も頑張るよ!」という気持ちで映画を観終えた。

笑える所で言うと、時々顔を出す「懐かしい」のおばあちゃんが笑えた。
「まだ出てくるな」とみんなに止められるギャグ要員たけど、歳とってくると彼女だけが頼りになるタイミングがくるし、とても味わい深いキャラだった。

というか、もう何歳のバージョンでも永遠にキリなく作れそうなので、ライリーの成長の度に続編を作り続けて欲しい。

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