見出し画像

グッドライアー偽りのゲームの感想(ネタバレあり)

ここ最近風邪が酷くて全く映画の感想を書ける状態じゃなかったのだけど、3日程会社休んでやっと調子が戻ってきた、という更新遅い言い訳。

MOVIX京都で鑑賞。なかなか混んでた。

ビル・コンドン監督最新作。

それまであんまり観たことなかったけど、今回と同じく主演イアン・マッケランとのコンビでの「Mr.ホームズ名探偵最後の事件」がとても好きで注目監督になった。

Mr.ホームズは原作と全く違うラストなのだけど、そこに至るまでの演出のきめ細かさがていねいでとても優しい印象の残る映画。

そしてなんといってもその次のディズニー版実写「美女と野獣」が僕はディズニー映画の中で一番好き。

アニメ版の精神は受け継ぎながら、野獣とベルの関係性の改変が見事だった。アニメ版のほぼ野人になった王子に人としての尊厳を取り戻すためベルがリードしていく関係ではなく、実写版は中立というか王子の方がインテリ位の関係性。そしてお互い読書が趣味で「物語」を通して関係性が深まっていくのがとても現代的な恋の形で素晴らしいアレンジだと思った。要は「オタク同士の恋」という話になっている。

途中ベルに本を読んでもらいながら城の庭を歩くシーンがあるんだけどここで野獣が言う「・・・景色が違って見える」というセリフがとても感動的で好き。知ってる景色、知ってる物語、なのに誰かと一緒に共有する事で「世界が変わる」という表現した素晴らしいシーン。

個人的にはビル・コンドン監督を好きなポイントとして「孤独を抱えた人に対して優しい視線」という部分がある。Mr.ホームズも美女と野獣も通じる良さだと思う。

今回も孤独な人への目線の映画だとは思うのだけど、2人の人間が孤独の末に行き着いた境地の違いを比較する様なラストでとても興味深い終わり方だと思った。

イアン・マッケラン。
他人の身分に変えた時に良い人間になるチャンスがあったとは思うのだけど、本質的に持っているクズ気質を捨てられなかった人。

僕は襲ってくる敵に一瞬で殺す判断を下す辺りで「うわ、こいつ完全にアウトな人やん」ってビックリした。それまで詐欺師ではあるけどヘレン・ミレンとのやり取りとかを見ていると多少人間性はあるのかと思ってたけど、ここで崩れる。
防犯カメラをサッと上に向ける所のやり慣れた感がヤバい。明らかに殺意を向けてくる相手だったとはいえ自分の利益の為に当たり前に「人を殺す」という選択肢がある人は怖いよ。
過去の罪に対して全て「俺は悪くない」と本心で思ってそう。いわゆるサイコパス。

そんな誰の事も大事に思えない人が迎える人生の終着駅として迎えるラストシーンが痛快だしちょっと可哀想。裏切った元相棒を睨みながらの水ジョロー笑った。

それでもヘレン・ミレンに対して恋心を抱いているのか?と思わせる瞬間が何度かあってその辺のギリギリの人間性を出す憎み切れない演技の質はさすがイアン・マッケランだと思う。

それに対し復讐に取り憑かれた人ではあるんだけど決して人間性を捨てた訳じゃなく、家族は沢山いるし助けてくれる知り合いもいるヘレン・ミレンの人物設計が面白い。

新しい人生を得た筈なのに全くそこから良い人として生きる気のないイアン・マッケランとは対照的。
おそらく彼を騙す為に演じていた人物像とそんなに遠くない人の良さなのだと思う、それ故に彼を騙し切れたのじゃないだろか。
良き人のまま彼を騙そうとしているのも復讐の一部に感じる。「お前の生き方は間違っていた」と表明してるみたい。

彼女の方もその時その時で彼に対して本当は少し愛情があるんじゃないか?と思わせる一瞬があるんだけど、考え出すとヘレン・ミレンの表情の表情の一つ一つが味わい深い。

お話的には、実はどちらが主導権を握っているのかは観ていたら分かる。
そこは折り込み済みでこの2人にはどんな過去があるのか?名優2人の貫禄たっぷりの演技でグイグイ引き込まれていく構成が見事だと思う。
バレるかバレないのかというサスペンスじゃなく登場人物の動機の方に興味を持っていかれる。僕はこういう登場人物の記憶の奥にこそ面白みがあるのがビル・コンドン監督作の魅力だと思うので今作もやっぱり好きだった。

あと今回のお話の核心を匂わす役割でイングロリアス・バスターズが出てくるのとか細かい所も良かった。
という訳でビル・コンドン監督ファンとしては大満足でした。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?