
タオの不妊治療報告
捕まえられないタオ
2022年8月12日、和歌山県東牟婁郡那智勝浦町浦神の「猫楠舎」に現れたタオ、その当時推定生後3か月。
慎重な性格な上すばしっこい。
なんとか家に入れたが、その約1か月後の10/11、870キロ離れた福岡県糸島に移住。この際もキャリーケースに入れられたのが奇跡だった。
新居に移った2か月後の11月に発情。
地元の動物病院に不妊手術の予約をするが、捕まえられずに2度キャンセル。やむなく「手術は触れるようになってから」と方向転換する。
2023年2月7日に脱走、11日目(2/17)捕獲器を使って帰宅。
さいわい外で孕むことはなかった。
それ以降、少しずつ触れるようになったので、日帰り可のF動物病院に予約を入れる。
5/19の朝5時、用意したキャリーケースに自ら入っていたので、速やかにフタを閉める。
朝食前だったのはラッキー。
9時の開院までキャリーケースに閉じ込めるのは氣の毒だが仕方がない。
最初こそ騒いでいたが、すぐに観念して中で寝ていた。

診察室にて
初診でもあり、本来なら洗濯ネットに入れて連れていくべきだったタオ。
診察台でキャリーケースから出そうした瞬間、看護士さんの手を振り切って、狭い診察室内を逃げまわる。
「ケガをするので、手を出さないでください」
と獣医さん。
必死のタオ、壁を駆け上がろうとするところを、即座に皮手袋をはめた看護士さんが背後から保定し、獣医さんとふたりがかりで洗濯ネットに入れた。
「この調子だと抜糸も難しいので、溶ける糸で縫合します。日帰りの選択も正解ですね」
体重は3キロちょうど。
子宮と卵巣をとる形の不妊手術。
40年前愛猫の不妊手術で卵巣の取り残しがあり、疑似発情、再手術という苦い経験があったことを、一応獣医さんに伝えておく。
今は不妊手術の技術なども進歩したはずで、言わんでもいいことかもしれないが、いつの時代でも家族の氣持ちはそんなには変わらないものだ。
麻酔の同意書にサインをし、いったん帰宅。
お迎え
17:00にタオのお迎えに行く。
保護服を着せられて、キャリーケースの中でおとなしくしているタオに再会。
瞳に力がある、大丈夫そうだ。
「手術は11:30からで、もう麻酔も覚めていますが、今夜の食事は少量にしてください。2,3日したら服を脱がせて大丈夫です。抜糸は必要ありません」
きわめてシンプル、かつ必要なことは丁寧に行うといった印象のF動物病院である。ちなみに支払いは27500円のみ。診察券なし、初診料なし、余計な営業もなし。
院内も清潔で整理整頓が行き届き、混雑もしていない。
日帰り可で選んだ病院だったけれど、「基本病院に行くのは不妊手術のみ」の我が家の方針と合いそうな病院である。
タオ、帰りの車の中では小さく2,3度鳴いただけ。
猫たちの反応
キャリーケースから出たタオの姿にギョッとしたヤムヤム。
彼以外の猫はちょっと匂いを嗅ぐ程度。
タオは、来客が来たときと同じ行動パターンをとり、しばし脱衣室の洗濯機下に潜り込んだ。
タオにとって、ここが氣持ちを落ち着かせる場所なのだ。
ワタシは勝手に「ニュートラルスペース」と呼んでいる。
猫それぞれにニュートラルスペースがあり、かくゆうワタシ自身も散歩途中にいくつかある。

保護服は軽量で伸縮性があり、からだにフィットしたもの。
4日後に脱がせるまで、しっかり手術の傷跡を清潔に保ってくれた。
1時間後、洗濯機下から出てきたタオ。
夕食はほとんど口にせず。
痛みもなく、落ち着いて見える。
そのうちに冷蔵庫にジャンプし、換気扇フードの上に移動したのには驚いた。
ヤムヤムだけが奇異なものを見るように遠巻きにしている。
タオの変化
手術から1週間後の今、タオにどのような変化があるか?
撫でたり、触ったりしても、以前のように逃げたり、かみつくことがなくなった。
カーテン登りの回数が減った。
他の猫のごはんに首を突っ込まなくなった。
単独でワタシの膝に乗ってくるように。以前はちぃちぃといっしょでなければ乗ってこなかったのだ。
手術したときは、ちょうど発情中だった。
11月の発情から、幾度となく大小の発情の波が来ていた。
その都度、ヤムヤムがマウントして鎮める?と光景が繰り返されていた。
今後はそれがなくなるはず。
ある意味、ヤムヤムもお疲れ様でした、なのである。

キャットシッターの現場で
キャットシッティングの現場で、行くたびに乳がんを再発している雌猫がいた。
なぜ不妊手術をしないのだろう?
氣の毒だなぁ、と思うしかなかった。
また「外に出さないし、手術はかわいそう」という理由で不妊手術をしない雌猫はいつもイライラしていて、これも見ていて切ない思いがしたものだ。
本能を押さえつけるだけでは、欲求不満がたまる。
これが体内にどんどん蓄積されれば、いずれ病氣の要因になるのでは?と思った。
あいまいな存在たち
前述した不妊手術の失敗を経てもなお、ワタシはタオの不妊手術を選択した。タオの生涯に責任を持った段階で、不妊手術はしたほうがタオにも、ワタシにも「ご機嫌元氣な暮らしにプラスになる」と判断したからだ。
一方で、外を歩いている猫を全部捕まえて不妊手術をするのはちょっと違う。
物事は白か黒か、「1」か「0」か、だけでない。
野良猫のような「あいまい」な部分に生きるものをなくしてしまったら、世の中はずいぶんと味氣ないものになってしまうだろう。
ヤムヤムも、タオも、向こうからやってきた。
お金で買うのではない、こちらから求めるのでもない。
「それ」はむこうからやってくるのだ。
それこそが「カミ」ではないか。
カミが生まれなくなる社会はきわめて危うい。
あいまいな存在を尊重しながら、ほどよい距離感でつきあう「知」を持ちたいものだ。

つづく
【タイトル変更】
毎月22日に書いていた記事のタイトル「にゃんポイントアドバイス」を、今後は「ショローと猫暮らし」に改めました。そのときどきで思いついた猫暮らしに関する思いをつづっていきます。