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一泊二日で劇団四季ライオンキングを観に行った話

約1年前の2019年7月。
私は金曜ロードショーで『ライオンキング』を子供たちと見ていた。
ちょうど『映画・超実写版ライオンキング』が公開されるタイミングで、プロモーションのために初代のアニメーション版を放映していたのだ。
そして忘れかけていたある感情を思い出した。

劇団四季のミュージカル『ライオンキング』を観に行きたい。

これは私が劇団四季『ライオンキング』を観に行くに至るまでの記録である。​

ライオンキングと私

『ライオンキング』はディズニーアニメの中でも大好きな作品で小学生のころから繰り返し何度も見ていた。DVDも持っている。冒頭のサークルオブライフ聴くだけで泣ける。
劇団四季のミュージカル『ライオンキング』は10年のロングラン公演作品で、私は結婚前はずっと関東に住んでいたため、テレビCMも何回も見ていた。
当時公演していた東京の浜松町駅に立ち寄った際、JRの駅構内にも『劇団四季ライオンキング』のポスターや垂れ幕、「劇場はこちら!」の矢印看板などもよく見てきた。とても身近な存在だったのだ。

(いつか見たいな。いつか見てみたいな。)

そう思っていたあの日はもはや遠いものになってしまった。
結婚を機に、関東から遠く離れた九州の鹿児島に引っ越して早8年。
まず劇場までの距離は引っ越してから恐ろしく遠くなった。
8年の間に子供2人分の妊娠、出産、子育てを経験し、とてもミュージカルに行くどころではなくなっていた。

しかし上の子ももう5歳だ。下の子だって3歳を過ぎたし、別に私が付きっきりで子守しなくても大丈夫なはずだ。いつまで授乳期のおっぱい時間を気にしていたんだろう。とっくに卒乳しているから夫でも誰でも子供は見れるはずなのに。
無意識に『私が子供たちを見なきゃ!』というプレッシャーをかけ続けていたことに気付いて、自分でもちょっとびっくりした。

こうして私は、5年間子育てお疲れ私!を自分にご褒美するべく、劇団四季ミュージカル『ライオンキング』を1人で観に行くことに決めた。

『いつか観たい』の『いつか』は、自分で決めないと永遠に来ないのだ。

公演状況を調べる

まずやったことは劇団四季の公式サイトを調べてみることだった。
劇団四季のミュージカルは全国で巡回公演をしており、時期によって関西でやってたり関東でやってたりまちまちだ。
その頃、『ライオンキング』は東京と福岡(博多)での公演をしているようだった。
私は現在、九州の鹿児島県に住んでいるため、パッと見て「福岡公演の方が近いよね?」と思ったが、福岡行きの新幹線代と東京行きの飛行機代がほぼ同じお値段だった。格安航空(LCC)ってやつはすごい。
それなら実家という安心無料のお宿がついてくる関東の方がメリットがあると考え、東京公演の方に決めた。

東京公演に決めた理由は他にもあり、東京は1日あたりの公演回数も多く、昼公演の他に夜公演の回があった。
夜公演とは18:30ごろの開演で、都会のビジネスマンが仕事帰りに観劇することもできるありがたい時間帯である。

朝8時40分ごろ、子供達を保育園に送り出し→
私は車で鹿児島空港に移動し(約1時間半)→
空港には時間に余裕をもってチェックインし(約30分待機)→
飛行機に乗って羽田空港に到着し(約1時間半)→
電車で劇場最寄り駅の大井町駅まで移動する。(約30分)

という一連の流れを大急ぎでやっても、昼公演の開演時間にはとても間に合わないため、夜公演をやってる日しか選択肢はなかった。
東京で夜公演の『ライオンキング』を観て、実家に一泊して、翌日飛行機乗って鹿児島へ帰る。という、それでも割とハードなスケジュールである。

ちなみになぜ保育園がやっている平日を狙ったかというと、当時夫の仕事が土日祝日も地域イベントや所属団体の店番、スタッフ係など外せない用事がほぼ毎週入り、平日の方が休暇や早退(夕方の保育園お迎え)の融通が利きそうだったから。
また、子供たちを保育園に出せる平日の方が夫への育児的な負担が少ないだろうと考えたからである。給食があるため食事の用意のハードルも低い。

子供たちを置いて、私1人で遊びに出たことなど出産してから1度もない。
5年ぶりにリフレッシュさせて頂こう!

そうだ親も誘っちゃおう

関東の実家に一泊させてもらうことを勝手に脳内で決めた私だが、
(そうだ、お母さんも劇団四季のミュージカル割と好きだし、いっしょに行けばいいのでは?)
と閃く。母とは10年以上前に横浜公演の『キャッツ』をいっしょに観に行ったことがある。母は『マンマ・ミーア!』や『アラジン』など、実際私より劇団四季ミュージカルに足を運んでいる。

早速母へLINEを打ち、
「突然だけど、今度1人で関東行くから、劇団四季のライオンキングいっしょに観に行かない?」
と、本当に突然すぎるお誘いをぶっこんでみた。
母「ライオンキングまだ観たことないからいいよ!行こう!」
割とノリノリのお返事が返ってきた。嬉しい。
そのあとは電話で直接話をして、飛行機の時間の都合で夜公演がやってる平日がいいことなどを伝えた。
母「じゃあお母さんがチケット状況見て、よさそうな席とっとくわー!」
そう軽く言ってのける母の行動力にただただ脱帽である。チケット取り慣れてるというのもありそう。

さて狙っていた公演日は平日なので、父も母も日中は仕事がある。
18:30開始のため、残された父の夕飯はどうしようかという話になった。
「そうだ!いっそお父さんもいっしょに『ライオンキング』行く?」

ミュージカルのミュの字も、ディズニーのディの字も興味なさそうな父を誘うというのは、私としてもかなりダメ元だった。
ちょうど帰宅してきた父に、母がその場で尋ねてみたところ、
父「ナッちゃんのお誘いなら断れねぇなぁー。俺も行く。」
と、すぐに話に乗ってくれた。
私はそんな両親が大好きだ。

こうして、遠方へ嫁に行った30代ムスメ(私)と、60代両親による、久しぶりの親子3人水入らず、ミュージカル『ライオンキング』鑑賞会が決まった。
父に至っては人生初のミュージカル観劇である。
わくわくしてきた!

予約してそわそわ待つ日々

母はその翌日にはミュージカルのチケット予約を完了し、私は少し遅れて格安航空(LCC)で、鹿児島←→羽田の往復飛行機チケットを予約した。
「いい席取れたわよーっ!」と、本当にスピーディに行動に出れる母、なんとS席を3連で取ってくれた。一番良い席である。よく空いてたね!?

金曜ロードショーを見てたのが7月、
チケット予約してたのが8月、
公演日は10月2日。

そわそわ公演当日を待ちわびながら月日は流れ、9月の最終週、台風が九州に接近する天気予報を見て青ざめたりしていた。
四季のミュージカルは基本的に公演中止にならない限り返金しないスタイルだ。
開催地である東京に台風が来るならまだしも、遠く離れた九州に台風がぶち当たって「飛行機が飛ばなくて行けませんでした。」なんてことがあっても知ったこっちゃない。
台風がそれてくれるか、早く抜けてくれるか。飛行機が欠航にならないことをただただ祈った。

羽の生えたような当日

いよいよ待ちに待った公演当日。2019年10月2日。
心配していた台風はなんとか飛行機が通常運行できるぐらいの位置にあり、とくに飛行機の遅延もなく普通に飛んだ。本当に良かった。
1人で飛行機に乗るのが5年ぶりで身の軽さに思わず震えた。

カバンに紙おむつやお尻拭きを入れなくていい。
子供の着替えも入ってない。
子供がぐずったときに取り出すオヤツやおもちゃも入れなくていい。

自分の物だけが入った身軽すぎるカバンが本当に軽すぎて、なんだかそれだけで涙が出そうだった。
まるで羽が生えたよう。
一泊二日しか滞在しないので車輪のついたキャリーバッグなども持たず、リュック1つで事足りた。

利用した航空会社がスカイマークだったのだが、機内サービスでホットコーヒーとキットカット(チョコレート菓子)を無料で提供してくれる会社だ。
子連れで飛行機に搭乗する場合、万一機内が激しく揺れて熱い飲み物が子供にかかると非常に危険なため、同乗する保護者は冷たい飲み物しか選べないことになっている。(過去に利用した航空会社は皆そういう決まりだった。)
機内で温かい飲み物が飲めるのも5年ぶりだし、キットカットとホットコーヒーの組み合わせはべらぼうに美味しいし、子供たちにチョコレート菓子を奪い取られる心配もない。しみじみと味わった。

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1人東京に降り立つ

飛行機は定刻通り、羽田空港に着陸した。
ここでも自分の身軽さにめちゃくちゃ驚いた。

いつも子連れで都会に出るときはベビーカーやキャリーバッグを転がしているのでエレベーター移動必須で、駅構内では常にエレベーターへ向かう矢印を探していた。
エスカレーター乗れる!階段や段差のあるところもへっちゃら!
難易度高すぎダンジョン(段差的な意味で)だった都心の駅は、一気にイージーモードへと化し、意気揚々と駅階段を上り下りしていた。
あとトイレに好きなタイミングで行けるの、すごい楽。

東京に到着したのが14時半ぐらいだったので、両親と集合する約束をした16時半まではのんびり自由に過ごした。

いつもは羽田空港から京急に乗るのだが、この日はほぼ初めて東京モノレールに乗った。天気は快晴。空中散歩みたいで車窓の風景がとても気持ち良かった。

関東の友人にオススメされていた有楽町の黒蜜きなこソフトクリームを食べに行った。うまい。ゆっくり食べれる。涙出そう。
知人が都内でやっているイラスト原画展を見に行けた。絵をじっくり見られるなんて本当に久しぶりだった。涙出そう。

その他、特に用もなく本屋をぶらぶらする贅沢や、駅前の雑貨屋さんで目に入ったおしゃれな小物に(かわいいなぁ…)と思う贅沢や、電車に揺られながらツイッターをのんびり眺めるなどの贅沢な時間を堪能した。

ちょっとしょっぱいお醤油の味

両親との集合時間となり、劇場最寄り駅の大井町駅改札付近で待ち合わせた。
母はすぐ見つかったのだが、父は別行動であとから行くとのことだったので改札前にずっといるのも何だし、駅の目の前にあるヨーカドーに移動した。
父も母も仕事を午前勤だけにしたり、早上がり直帰にしてくれたりしたらしい。この日のためにわざわざありがとう。
ほどなくして父とも合流した。

時刻はまだ17時前でお腹はそこまで減っていないのだが、ミュージカル開演が18:30で、終演が21時を過ぎるため、早めの夜ご飯を食べておこうということになった。
「なんでも好きなもの食べていいぞ!」
そう話す父はなんだか嬉しそう。
ヨーカドーに入っているレストラン一覧を眺め、回転寿司屋さんに決めた。食べる量が自分で調節できるから、こういうとき回転寿司って便利だよね。

帰省時に、孫(うちの子たち)と親子三代で食事に行くことは何度かあっても、結婚して、子供生まれたあとに娘と親だけで食事に行くことなんてそうそうない。
この時間は貴重だな、としみじみ感じながら、とりとめない近況を話したりしつつ回転寿司を頂いた。九州の甘い醤油にすっかり慣れてしまった私には、関東の醤油は懐かしくもちょっとしょっぱい味。

劇場でガオーする

腹ごしらえを済ませた我々は、会場案内図を取り出して劇場を目指す…までもなく、駅周辺には今晩の劇団四季公演を観に行くであろう人々がぞろぞろと同じ方向に歩いていた。ここ大井町には『ライオンキング』の他に『キャッツ』の劇場もあるため客数の体感はおよそ2倍。商店街などいたるところに「劇場はこちら」の矢印看板が目に入り、ほぼ迷う要素はなかった。

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『ライオンキング』の劇場に到着し、ふと入り口のチケット売り場(空きがあれば当日券を発券している)を見ると、S席、A席、B席、C席…全ての座席が完売していた。うそ…これ10年ロングラン公演してる作品の平日公演だよね!?(私の四季ミュージカルの知識は、にわかレベルです。)

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入り口にある『ライオンキング』の大きな看板の前では記念撮影をするための行列ができていた。開始時間にもまだ余裕があったため、列に並んで写真を撮ることにした。
なぜだかみんな「ガオー!」のポーズをしていたので、いい年こいた我々3人家族も「ガオー!」のポーズを取って写真を撮ってもらった。エンジョイ!

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会場に入場し、座席をざっと見てみると、修学旅行の学生さんかな?同じ制服を着た中学生ぐらいの団体さんが多く目に入った。修学旅行で四季ミュージカル観劇とかイイっすね!普通に羨ましい。
ディズニー作品だけあって子連れの親子も多かった。子供はだいたい小学生ぐらいだろうか。いいなぁ、うちの子も小学校高学年ぐらいになったら一緒に観に行けるかなぁ。

母が取ってくれたS席の座席は本当に良い席で、真正面でメインステージから11列目。めちゃくちゃ見やすい席だった。
チケット代はもちろん払う気満々だったのだが、「あんたは飛行機代かかってるから、これはプレゼントするわよ。」と、母にふふっと笑いながら言われ、こんなところでも泣きそうになってしまった。

開演3分で泣く

劇場の照明が暗くなり、いよいよ開演となった。ドキドキは最高潮。

暗闇の中、響く演者の歌声。
アニメで何度も聞いた、あの曲。
ステージを歩く足音。布のこすれる音。

四季のミュージカルはメインステージ以外の後方や、通路でも俳優さんたちが歩いて歌ってくれるシーンが多くある。
『ライオンキング』でもそれはあって、私の座席の真横の通路で歌いながら歩いてきてくれた。
歌の声量などももちろんすごいのだが、とても距離が近いため、息継ぎの小さい呼吸音まで聞こえる。
遠方で歌っている声は遠く、近くの声は近く。
遠近感や臨場感がすごく感じられた。本物なんだ。

あぁ、私はこれが観たかったのだ。
気付けば開始3分でドン引くほど泣いていた。まだライオン一匹も出てきてないんですけど。タオルハンカチ持ってきてて良かった。

その後も要所要所で泣きまくり、終演してみると「本当に観に来れてよかったぁぁ…!!」しか感想言えない人になっていた。あー本当に良かった…。
原作のディズニーアニメ『ライオンキング』観たことない父&母も「すごかった。」「おもしろかった!」と口々に言うぐらいだったので、この経験を一緒に味わえてよかった。感極まって泣いてたのは多分私だけなのだが。

それと同時に、5歳、3歳の子連れではとても実現できなかっただろうな、ということも深く感じた。休憩含めてトータル3時間以上あるのでとても耐えられなかっただろう。

ネタバレなしミュージカルの感想

ネタバレにならない程度にミュージカル『ライオンキング』の感想を書いていく。
各曲の終わりに観客たちが一斉に拍手をするのだが、初見の我々は曲終わりのタイミングを知らなかったので、「あっ!ここ拍手するところ!?」と、ちょっと出遅れてパチパチ拍手を送っていた。好きな人は何度も観に行ってるんだろうな、と感じた瞬間のひとつだった。

アニメだと簡単に見える表現でも、ミュージカルでは難しい表現というのは結構あるようで、小道具、大道具、衣装などに様々な工夫が見られてとても楽しかった。人は、草にも木にも岩にも動物にもなれる!

スカーおじさんかっこいい。ムファサお父さんかっこいい。むしろ主役はこの2人かと思うほど。
ハイエナたちが予想外のカッコよさで心を奪われた。
青年シンバの「心配ないさー!」を芸人の大西ライオン以外で初めて本物を聞けた。
シンバ、ナラの子役の子たちもすごく上手だった。きっとゆくゆくは大役に羽ばたいていくのだろう。
ザズー、ティモン、プンバァなど、表現が超難しいだろうなと思っていた役柄の方たちがとても表情豊かでめちゃくちゃかっこよかった。
俳優さんたちは舞台上で歌いながら激しい動きをされているので皆さん汗だくだった。それがリアルですごく良かった。

物語のセリフなどはアニメ版の日本語吹き替えと、英語版字幕を足して二で割ったようなイメージだった。吹き替えだと原語(英語)版から少し離れた解釈の部分が結構あるので、より原語版のイメージに近づいた気がする。だからアニメで聞いたことがある曲も、細かいセリフが結構違っていてなかなか興味深かった。
あんまり書いていくと長くなりすぎるのでこの辺にしておく。(十分長い。)

行けて、本当に良かった

行こう、と思ってよかった。
このミュージカルを観れて本当に良かった。

おかげで私の活力ゲージは驚くほど回復したので、今回一歩踏み出してみて本当に良かったと思っている。
子供を産んでから『お母さん業』は絶対に休んじゃいけない、と勝手に自分に課していたのだけれど、『お母さん業』だってたまには休んでいいのだ、ということ。
見失ってた自分を、少しだけ取り戻せた気がする。(あっこれ、偶然ながら『ライオンキング』の本題みたい。)

いつか成長した子供たちとミュージカル『ライオンキング』を観るという野望もできた。
私もまた息抜きに他の劇団四季ミュージカル観に行くぞ!

今回つきあってくれた両親、鹿児島で子供たちを見てくれていた夫、待っててくれた子供達に感謝。

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