春の夜、スカートを揺らして
買ったばかりのふわふわのスカート、春色のニットに、流行りのゆったりしたブルゾンを羽織って電車に乗った。
手には小さなバッグが一つ。
財布、スマホ、ハンカチだけが入っている。
時間は夕暮れ時。
仕事や学校帰りの人が多い中、私はうきうきと誇らしげにスカートを揺らして闊歩する。
夜、飲みに出かけるなんてどれくらいぶりだろうか。
妊娠出産を経たので確実に2年は経っている。
駅に着いて、まだ時間があるので駅ビルをふらりと回る。
私は周りからどんな風に見えているだろう?
まあまあ流行りの格好をしているし、髪もこないだ染めたばかり。
メイクも丁寧にしてきた。
何より子供を連れていない。
独身の仕事帰りの女性に見えるかな。
少なくとも子連れのママには見えないはずだ。
今、私は何にもとらわれない一人の自由な女性として外を歩いている。
そのことが新鮮で嬉しくて、足取り軽く店へ向かった。
そこからはあっという間で。
かつて一緒に働いた素敵な人々
ほろ酔いになって熱くなる頬
笑い声
店を出るとわいわいと行き交う人々
春のなまぬるい風
夜のにおい
懐かしいな。
嬉しいな。
スカートを揺らして帰路につく。
手には小さなバッグと、子供たちへのお土産に買ったドーナツ。
子供はもう寝ている時間。
ただいま。
朝になったら一緒に食べようね。
何にもとらわれない自由な私と同じくらい、
母である私も誇らしいものなのだ。
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