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【ナニWAA! 第21回セッション】レポート

〇開催日時
2022年4月20日(水)19:30~21:30
〇テーマ
“みんなが笑顔になれる社会を目指したい!
~精神疾患を抱える本人とその家族のWell-beingを高める活動をしています~
〇登壇者
平井 登威(ひらい とおい)さん
関西大学3年生。自身の父親が精神疾患を抱え、それに伴う苦しさに悩んでいたが社会の偏見や話しづらさを感じていた原体験から、精神疾患の親をもつ25歳以下の居場所「CoCoTELI」の代表をしている。 趣味はゲームと幼稚園から高校まで続けたサッカー。

○モデレーター
山口 真寿美(やまぐち ますみ)
保険会社で営業に従事。Team WAA!セッションに参加し、Team WAA!のビジョンに感動する。関西でもTeam WAA!のビジョンを広めたいと、2018年にナニWAA!を有志メンバーで立ち上げる。多拠点生活への憧れが強く、ワーケーションへの関心が高い。

皆さま
少し時間が経ってしまいましたが、4月セッションをお届けします。
ゲストの平井さんは幼少のころからのご両親との関りについて体験してきたことや、現在活動されている支援についてお話しくださり、どんな質問にも真っすぐ答えてくださいました。平井さんの柔らかく穏やかな話し口調にどんどん引き込まれてしまいました。


【平井登威さんの自己紹介ストーリー】
現役大学3年生の平井登威さんは静岡県浜松市出身。自身のお父様が精神疾患を抱えていて、それに伴う様々な苦悩を経験。同じような境遇で悩んでいる子どもたち、その先の人生で生きづらさを抱えている子どもたちや大人になった人たちの支援をしていきたいという想いから、精神疾患の親御さんがいらっしゃる25歳以下の居場所「CoCoTELI」の代表をされています。
Webメディア https://cocoteli.com
メールアドレス cocoteli2012@gmail/com
SNS(Twitter)https://twitter.com/cocoteli
  
ヤングケアラー
ここのところ新聞やテレビでよく見聞きする“ヤングケアラー”という言葉。
※Wikipediaによると・・・病気や障害のある家族・親族の介護・面倒に忙殺されていて、本来受けるべき教育を受けられなかったり、同世代との人間関係を満足に構築出来なかった子どもたちのこと。大人が担うようなケア責任を引き受け、家族の世話全般(家事や介護、感情面のサポート)を行っている18歳未満の子どもを指す。その子どもがケアしている者は、主に障害や病気のある親や高齢の祖父母、兄弟姉妹などの親族である。

平井さんはお父さんの情緒的ケアをしていたケアラーだったそうです。平井さんが幼稚園の年長の時にお父さんが鬱になりました。病気の影響で暴言・暴力・喧嘩が増え、自分が死ぬか親を殺せば楽になるかな・・・という時もあったとか。

中学生になると周りの家庭と自分の家庭の違いに気づきます。お父さんがみんなの前で平井さんに暴力を振るったのを見た友人に「変な親だよね」と言われたり、暴れるお父さんを見ておばあ様が自分のせいだから私が死ぬ、と自殺しようとされていたり・・・。平井さんはそこで初めて自分の家は周りの友人の家と違う、と思い始めたそうです。ご両親の心のケアをしながらも、その一方でご両親が仕事をしてなかったので、経済的な不安も抱えていたそうです。当時は誰にも相談できなくて、ただただ辛く、恥ずかしいという思いを強く持っていました。

そんな平井さんの大きな支えとなっていたのは14年間続けてきたサッカーでした。高校はサッカー推薦で地元の強豪校へ入学します。平井さんがサッカーをしていることはお父さんの精神安定剤にもなっていたそうです。あと一歩でレギュラーのところで怪我に泣き、その上お父さんからも辛い言葉を投げかけられ辛い思いもしましたが、サッカーがなければもっと辛かったと今でも思っているそうです。

僕の心が楽になった瞬間
平井さんは大阪の大学に入学し、一人暮らしを始めます。そんな一年生の秋。自分と似た家庭環境の方とたまたまTwitterで知り合い、1人じゃないと気づいた時に、すごく心が楽になったそうです。

精神疾患の親を持つ子供はいろんな悩みがありますが、大きく分けて2つあると、平井さんは言います。
・親からの暴力・暴言による精神的・身体的苦痛。
・精神的・身体的・経済的ケアによるケアラーとしての苦痛。
平井さんが当時感じていたことや今、ご自身が支援団体をする中でよく聴く声は「親の病気のことを言ったら馬鹿にされそうだから、病気の事相談しずらい」ということ。そして専門機関という言葉が怖くて、支援に繫げられるんじゃないかという怖さがあったそうです。そして誰とも出会うことができす、自分は一人だという孤独感を感じていました。
また、自分の子どもや配偶者が精神的不調に陥ってしまったり、自分軸で物事を考えられない、常に周りの事を優先してしまう自分のことは後回しにしてしまったり、・・・という後遺症にも不安を感じていました。また、キャリアをうまく構築できてない人が多く、自己肯定感が低いのも後遺症にあたると感じています。

後遺症を未然に防ぎ、うまく付き合っていくためにも早くから話せる場所・支援とつながる必要があるという思いから、今の活動をされています。

子どもの課題として平井さんが問題視しているのが、子どもが悩みを吐き出す場所がない、専門家とつながるハードルが高いということ。スクールカウンセラーのところに行ったら、「あいつ病んでると思われる」と平井さん自身が感じていました。平井さんが家族会へ行った時に感じたことは現役学生が参加しているものがなく、精神疾患の親を持つ子どもの集いに行っても参加しているのが30代、40代、50代ばかりだったそうです。これでは子どもが行きづらくなってしまうのも納得できますね。

一方で、支援の課題としては、場を作っているけど子どもに届いておらず、子どもたちとの距離が年齢的なところで差があるなどで、気づかないうちに支援が必要な子どもの数が増えてしまう。一方的な支援になって届く子どもの数は増えないのではないかということ。ヤングケアラーの支援は増えているけど一方的な支援になってしまっていてギャップがあるのではと、平井さんは言います。

専門家のイメージを子供たちに聞くと、「怖い」「大人に話すと支援に繫げられるので話したくない」「どうせ向き合ってくれない」。こういったイメージを変えるのは時間がかかるので、その間に入ってハードルを下げるということを、平井さんはおこなっていて、これからもっと広げていきたいそうです。多くの子どもが求めているのは年齢が近いから話しやすい若さと、若くて話しやすいだけで終わりではもったいないので、必要としている子には専門性や支援につなげていくことが大事だと思われています。

CoCoTELIの代表になったきっかけ
初めて自身の話した相手がCoCoTELIの代表だったそうです。ただその方は自身の当事者経験をうまく消化しきれておらず、うまくメディアと付き合っていくことが出来なかったため、平井さんが代表になったそうです。平井さんも消化しきれたとは言えないながらも、特定の時以外は家族との関係性は消化できているとのことです。

平井さんは大学生になって一人暮らしをして大人と関わる機会も増えて一気に視野が広がったそうです。大阪に出てきて、ご両親との物理的・心理的距離ができたから、ご自身に余裕が出たのかもしれませんね。

※CoCoTELIの由来
CO コネクション
CO コミュニケーション
T トラスト 
E エモーショナルサポート
L ラブ
I インフィニティ 無限大
つながって会話をしながら信頼関係が生まれて心の支えとなってそれが愛となってその可能性は無限大だよね、という意味だそうです。素敵ですね。
ロゴは羽が一つひとつの頭文字の色を表していて、最後に1本の線でつながってるのは無限大という意味で、つながりを表しています。平井さんもとっても気に入っているデザインです。

CoCoTELIの活動内容
親の心の病で悩む若者と専門家の間に入るのが活動内容となります。平井さんは精神疾患の親を持つ子供には3種類いると言います。
①    何も必要としない子供
②    吐き出したい、相談したいだけの子ども
③    誰かに解決してほしいと思っているこども

②に関しては辛い時に頼れる居場所になる、③にとっては専門機関につなげるクッションのような存在になれたらいいとお考えです。③の若者については専門家につなげることになりますが、ただつなげるのではなく、自分たちが信頼できる人や組織になった時、そのまた信頼できる人に専門家になってもらうことでハードルを下げるというお考えです。

ターゲットが中・高・大生で、特に中高生はお金もないと考えられるので、オフラインにしています。交通費がかかるとなると参加のハードルが下がるし、また、オフラインは友達にばれたら「あいつそういうやつなんだ」というレッテルがつくのを防ぎます。あとは地域差がなくなるということでスラックとZOOMを使いながらオンラインで交流にしています。ZOOMで週一回なんでも雑談でもいいし、悩みを話す場でもいいし、テーマを決めてそのことについて話すということもやっているそうです。当事者同士で共感が多く生まれる場づくりに気を遣い、重い雰囲気を出し過ぎないように意識しているそうです。

今後の課題は信頼面を強くしていくこと。実際に対象となる子どものハードルをどう下げるか。また、精神疾患の親を持つ子どもはお金がないことが大半です。平井さんのご両親も仕事をなさっていませんでした。親が退職したり、休職したりしている、お金がない家庭が多いところを考えると、この先、活動を継続するには資金面をどうしていくか、頭を悩ませているところだそうです。

得たくても得られない経験が自分の強みに
当日はご自身が鬱を経験された男性も参加され、当時のことを思いながら平井さんのお話しを聞いておられました。「自己肯定感」について質問され、平井さんが意識されてるのは自分で自分のことをどんな小さくても褒める、ということでした。そして、褒めてくれる人を周りに置く。最近、行っているのは、人のいいと思ったことを素直にしっかり伝えるということだそう。前向きな発言をするというのではなく、「いいよね」「ありがとう」「ごめんね」。当たり前だけど素直に言えないことを伝えると、平井さんは楽になったそうです。

平井さんはADHDと診断され、現在薬を飲んでいます。精神疾患は特別なものではなく、風邪ひくのと同じで、誰にでも起こること。特別なものではないと言います。ご自身は自分が面白いと思っていることしかできないと言います。今、取り組んでるものは自分にとって解決したいこと、楽しいことだから続いている。だから原体験は強いと思うそうです。苦しかった過去ではありますが、平井さんにとってはすごく意味があったこと。自分のこの家庭環境も今、離れたからいえることですが、得たくても得られない経験だと思われています。強みだとも感じてらっしゃいます。 

本当に悩まれ、葛藤もあり、今回お話しくださった以上に実際はもっと壮絶だったと想像します。本当に情熱をもって自分が解決したい、そのために活動しているのが楽しいというパッションを持たれているからこそCoCoTELIで支援ができるのだと思いました。きっと皆さんも元気をもらえたと思います!これからも応援し続けたいです! 


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